ジル・ロマン インタビュー

巨匠ベジャール亡き後、芸術監督としてモーリス・ベジャール・バレエ団を率いるジル・ロマン。
ベジャール没後5年を迎える日本公演には、ベジャールが遺した傑作とともに、自身が振付けた作品をプログラムしました。
公演への思い、作品の魅力などを、佐藤友紀さんにインタビューしてもらいました。

「『ライト』を再演することを誰が決めたかって? それは僕に決まっているだろう(笑)」

ベジャール・ファンだけでなく、すべてのバレエ・ファンにとって待望久しかった幻の作品『ライト』について聞かれるのがよほど誇らしいのか。ジル・ロマンはちょっとおどけた様子で語り始めた。

「もちろん僕らのカンパニーには、日本の方にお見せしたいベジャール作品がまだまだいっぱいある。でも、だからといってやみくもに選ぶのではなく、モーリス自身がそうだったように、それにふさわしいタイミングというのを見極めるのが大切だと思う。『ライト』に関して言えば、他のモーリスの作品とは全然違う、いわゆる未知の局面が見せられるし、ダンサーたちにとっても、そうした古典バレエの要素を重視した振付に取り組むことで、また新しいモーリスの世界を発見できるというギフトがある。まあ、カンパニーの中にこの作品を踊れるダンサーがいるというのが、一つの大きな理由でもあるんだけどね(笑)」

『ライト』では、ヴィヴァルディの音楽が中心に使用されているが、ヴィヴァルディはジルの初期の振付作品でも使われ、ベジャール本人から「いい音楽を選んだね」とほめられた、とジルがうれしそうに語ってくれた縁のある作曲家だ。

「今でこそヴィヴァルディはいろんな側面から聴かれているけど、モーリスが『ライト』を創り始めた頃は『四季』ばかりしか知られてなくて、それもあってモーリスは突っ込んだ研究をするようになったんだよ。他にはどんな音楽を創っているか、と。面白いのは、『ライト』を発表した後、他の音楽研究者たちもヴィヴァルディ再発見に努め、彼の様々な歌曲などが注目されるようになったことだ。ただし、モーリスは最初からヴィヴァルディありきではなく、18世紀のヴェネチアに非常に興味を持っていろいろ調べていくうちにヴィヴァルディに行きついたというのかな。そういう意味では、カウンター・テノールのジェームス・ボーバンや、ソプラノのチェチーリア・バルトリが行った研究と似ているかもしれない。こうして音楽も様々な感覚から探求すると面白いのと同じように、ダンスも異なる方向から探求していくとよりエキサイティングだということを、当時20歳そこそこだった僕は身をもって教わったというわけさ(笑)」

一方、『ディオニソス組曲』は日本でも上演されたフル・ヴァージョンのものを、「ギリシャの酒場での踊りと男たちのディテュランボス(バッカス賛歌)に特化させるなど、モーリスの精神は保ち続けたまま、現代に合った見せ方にしているよ」という。

「本来はワーグナー一家とニーチェの話など哲学的な部分もあるが、それだと数人のダンサーの踊りしか見せられない。やっぱり男性ダンサーが踊りたがるのはディテュランボスの群舞だから(笑)。それを強調したこの作品は自信を持っておすすめできるよ」

男性群舞が際立つと言えば、やはり『ボレロ』は欠かせない。以前、ジルに「あなたも"リズム"を踊ったことがあるの?」と尋ねたら、「若いころにはね」との答えだったが、ダンサーが少数精鋭になった分、以前観たときには、ふだんは主役級のジュリアン・ファヴローが円台の下で普通にリズムを踊っていたりするぜいたくさ! これまた必見と言えるだろう。

「その他、僕の振付作品『シンコペ』もぜひ、観てほしい。これは医学的な心臓の停止を意味していて、その5〜10秒間、脳はどんな旅をしているかに思いを至らせたんだ。と言っても前作『アリア』が衝突や闘争がテーマだったのに比べると今回はわりと軽やかで、ユーモラスですらあったりする。音楽も新しい感覚だし。今やモーリス・ベジャール・バレエ団のダンサーたちは自分の子どもといっていい年格好だが、大好きなんだよ。彼らの熱心さが。僕は人が成長するのはとても美しいと思うし、それを見てるのが楽しいんだけど、きっとモーリスもそう思っていたんだろうな」

<モーリス・ベジャール没後5年 記念シリーズ3>
モーリス・ベジャール・バレエ団 2013年日本公演

受け継いだ巨匠の魂を次代へ!
<Aプロ>「ボレロ」「ディオニソス組曲」「シンコペ」
<Bプロ>「ライト」全幕

10月27日(土)10:00a.m. 一斉発売開始

会場:東京文化会館

<Aプロ>
2013年
3月1日(金) 7:00p.m.
3月2日(土) 3:00p.m.
3月3日(日) 3:00p.m.
3月4日(月) 7:00p.m.
3月5日(火) 7:00p.m.

<Bプロ>
2013年
3月8日(金) 7:00p.m.
3月9日(土) 3:00p.m.
3月10日(日) 3:00p.m.

入場料[税込]

S=¥16,000 A=¥14,000 B=¥12,000
C=¥9,000 D=¥7,000 E=¥5,000

◆Aプロ、Bプロ2演目セット券(S,A,B席)あり
★ペア割引券(S,A,B席)あり
*エコノミー券/学生券は2013年2月1日(金)より受付
エコノミー券=¥3,000(イープラスのみ)
学生券=¥2,000(NBS WEBチケットのみ)


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