〈マラーホフの贈り物〉ファイナルへの想い ウラジーミル・マラーホフ インタビュー

稀代のダンスール・ノーブル、ウラジーミル・マラーホフが厳選したプログラムとキャストで構成した〈マラーホフの贈り物〉。1996年以来、ほぼ隔年で開催されてきたこの公演を通して、日本の観客は、若きプリンス・チャーミングがアーティストとして成熟していく過程をつぶさに見る幸運に恵まれた。この〈マラーホフの贈り物〉も、来年でいよいよファイナルを迎える。公演への熱い思いと近況を彼に語ってもらった。

――1996年に始まった〈マラーホフの贈り物〉も回を重ねて、次回で第8回。この公演に対するご自身の思いをお聞かせください。

マラーホフ:ササキさん(日本舞台芸術振興会専務理事、佐々木忠次)と一緒に練り上げた、とても大切な公演です。東京だけでなく、北海道から九州まで様々な都市を訪れ、異なる季節に公演を持ちました。続けたからこそ、日本各地でバレエを愛する皆さんに出会い、日本の豊かな四季に触れることができました。世界バレエフェスティバルやベルリン国立バレエ団の演目とはまた違う現代作品や小品を踊れたことも、印象深いです。毎回、日本のファンが心の底から感動できるパフォーマンスを切望していることを、ひしひしと感じました。優れた鑑識眼を持った日本の観客の前で踊ることは、私にとって特別な喜びです。

――もっとも上演回数が多い作品が、マラーホフさんの代名詞でもある、レナート・ツァネラ振付「ヴォヤージュ」です。

マラーホフ:私の何気ないひと言から生まれた作品なんですよ。ある時、レナートが私に訊きました。何か困っていることはないか、と。つねにツアーに出なくてはならないことだ、と私は答えました。ダンサーに旅(ヴォヤージュ)はつきもので、現役を続ける限り、一カ所でのんびりすることはできません。

――ダイナミックでロマンチック。陽気で哀し気。「ヴォヤージュ」はマラーホフさんの様々な表情を映し出します。踊る毎に変化し、深みを増しているようにも感じられます。

マラーホフ:もちろんです。ロボットのように、同じパフォーマンスを繰り返すことはできません。年齢を重ねる。新たな友人に出会う。ライフスタイルが変わる……。一人の人間、そしてダンサーとしての成長が刻印されています。つまり、この作品は私自身なのです。どう変化したのかは、とても言葉では言い尽くせません。舞台を見た方が、何かを受け止めてくだされば嬉しいです。

――このシリーズのもう一つの特徴は、東京バレエ団の共演を得て、古典のひと幕を抜粋上演してきたことです。稀代の貴公子であるマラーホフさんにとって、古典バレエの王子役とは?

マラーホフ:古典作品の主役は、かけがえのない宝物です。観客の誰もが見たいと思う。ダンサーの誰もが踊りたいと思う。でも、正確無比なテクニックと相応しい身体条件がなくては、王子役を踊ることは許されません。舞台でミスをすることすら許されない。誰もがその場面でそのダンサーが踊るステップを熟知していますから。完璧さを具現すること。それが古典バレエの王子の役割なのです。

――マラーホフさんは、誰もが認める王子の素質を備えたダンサーです。その一方で、ステレオタイプにはまることなく、幅広い作品を持ち役にされています。

マラーホフ:古典バレエは大好きですし、レッスンを欠かさず受けています。だからといって、古典の世界に閉じこもるつもりはありません。今後も、今の自分に合った様々な作品を踊っていきたいですね。

――マラーホフさんは踊るかたわら、古典作品の演出を手がけ、2004年にはベルリン国立バレエ団芸術監督に就任。デビュー以前、これほど多彩なキャリアを歩むだろう、と予想していましたか?

マラーホフ:思いもしませんでした。現状に満足せず、歩み続けた結果なのだと思います。現在も客演やツアーをする機会はありますが、ベルリンでの仕事を最優先しています。芸術監督の仕事は山ほどあります。レパートリーを決める、配役を決める、会議に出る、レッスンとリハーサルと公演で団員の仕事ぶりに目を光らせる。ダンサーとバレエ団を成長させる重責を担っていますから、時には厳しいことを言わなくてはなりません。短いバケーションを除くと、24時間、休みなしの毎日です。来年はワーグナーの生誕200周年なので、「ニーベルングの指環」を上演します。私達は、ベジャールのこの作品を上演する、世界で唯一のバレエ団なのです。このシーズンを成功させることが、私の目下の目標です。

――シーズン終盤に、日本で〈マラーホフの贈り物〉が行われます。公演への抱負をお願いします。

マラーホフ:私がベストだと思う作品を、ベストだと思うダンサー達と踊ります。観客の皆さんにとって馴染み深い作品だけでなく、サプライズも準備中です。舞台の幕が上がった時、皆さんの、そして私自身の胸がときめく集大成にしたいと思っています。


マラーホフの贈り物 ファイナル!

会場:東京文化会館

Aプロ
5月21日(火) 6:30p.m.
5月22日(水) 6:30p.m.
Bプロ
5月25日(土) 3:00p.m.
5月26日(日) 3:00p.m.

入場料[税込]

S=¥16,000 A=¥14,000 B=¥12,000
C=¥9,000  D=¥7,000  E=¥5,000 

*エコノミー券はイープラスのみで、学生券はNBS WEBチケットのみで2013年4月19日(金)より受付
エコノミー券=¥3,000  
学生券=¥2,000
★ペア割引券あり

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