2014年2月に東京バレエ団での初演を迎える「ロミオとジュリエット」。
ジョン・ノイマイヤーが20代の若さで振付けた長編バレエは、
どんな想いのもとに誕生し、どのように新しいダンサーたちに引き継がれるのか。
8月、キャスト・オーディションのために来日したノイマイヤーが、
作品や配役のポイントについて語ってくれた。

――1971年初演の「ロミオとジュリエット」は、あなたの初めての長編物語バレエですね。振付にあたって何を重視されたのでしょう。

ノイマイヤー:まず心がけたのは、白紙の状態から始めるということでした。ラヴロフスキーやクランコの作品がすでにありましたが、バレエとして作られたものはすべて忘れ、シェイクスピアの書いた「ロミオとジュリエット」に立ち戻ることを意識しました。

――日本では2009年にデンマーク・ロイヤル・バレエ団が初演していますが、ジュリエットが裸足で登場するなど、主人公たちの若々しさが新鮮でした。

ノイマイヤー:当時は初めて自分のバレエ団を持った(2年前に27歳でフランクフルト・バレエ団の芸術監督に就任)こともあり、振付も登場人物も、まっさらなところから再発見してゆきたかったのです。当時、主役ジュリエットは年齢に関係なく、そのカンパニーのトップ・ダンサーが踊るものと決まっていました。でも、原作のジュリエットは14歳前の少女です。私は幼いジュリエットがロミオへの愛によって変容する姿を描きたかった。最初はまったく踊れない彼女が、愛の力で素晴らしいダンサーへと変貌を遂げる。けれどもロミオが死ぬと、もはや踊る必要がなくなってしまう。愛という原動力を失ったからです。そうした変化を描くためには、14歳のジュリエットを演じられるダンサーを選ぶことが重要でした。

――若いダンサーが演じる僧ローレンスや、芝居気のあるマキューシオも印象的です。

ノイマイヤー:私はローレンスを大人たちの一人ではなく、ロミオたち若者の仲間として描きました。ロミオとは幼なじみのような間柄ですが、常に恋を追いかけているロミオに対し、平和主義者で、草花や薬草など自然の中に癒しを求める人物。マキューシオには、人間性や芸術を愛したルネッサンス初期という時代を重ね合わせています。彼は感性も年齢も旅芸人たちに近いけれど、ただの道化ではありません。第2幕で芸人たちが演じる、ロミオとジュリエットの行く末を予感させる芝居。これも実はマキューシオのアイデアだという前提で振付けています。“大人”である彼は、一歩引いた視点ですべてを見ている。ロミオたちのメンター的な存在であると同時に、人生の儚さも理解しているのです。

――旅芸人や使用人の一人一人に名前を与えたのは?

ノイマイヤー:舞台に出ている全員が重要だという思いの現れです。作品全体をモザイクとすれば、そのピースである一人一人が、自分は何者でどういう役割をバレエの中で担っているのか考えてもらいたかった。物語バレエの作り手としての私の原則や指針、その出発点がここにあるといえます。

――派手な演出ではなく、小さな場面の積み重ねで進むロミオとジュリエットの恋には現実味を感じます。

ノイマイヤー:登場人物を立体的に肉付けし、リアリティを持たせることが私の哲学です。聖ゼーノの祝祭日前日という設定を加え、街のにぎわいの理由をはっきりさせたことも、物語に現実味を与えているはず。シェイクスピアは舞踏会で出会った2人が手と手を触れ合わせる場面を書いていますが、私もバレエの振付で同じことをしています。触れているのは手という小さな部分だけなのに、そこからどんどん官能的なイメージが広がっていくという……。そして、ジュリエットの母親の造形も重要です。彼女はまだ若い。ジュリエットの歳を考えれば、せいぜい30歳くらいでしょう。子どもの部分を残したまま形式的な結婚をして母になった彼女は、ジュリエットがもしパリスと結婚していればこうなっただろうという見本です。愛を知らない彼女には満たされない部分があって、そこにティボルトという存在が関わってくる。

――東京バレエ団は、あなたの長編物語バレエに今回初めて挑戦することになりますが、改めて求めるものは何でしょう?

ノイマイヤー:まず、私の舞踊哲学を理解してほしいということ。すべての動きには理由があります。自分の演じるキャラクターが何を思っているのか、なぜそういう動きをするのか、きちんと考えてほしいのです。そして自分にも役にも、とにかく素直になること。

――これから主要キャストを選ばれるのですね。

ノイマイヤー:ダンサーたちを先入観にとらわれずに見てみたいと思います。とはいえ、私がこの作品を作った時のコンセプトには忠実でありたい。プリンシパルを中心に、ふつうのバレエのように踊るのではないということです。さまざまな立場やストーリーを持った登場人物を、各ダンサーが踊りを通して表現することが大切なのです。


東京バレエ団50周年記念シリーズ 2
ジョン・ノイマイヤー振付 「ロミオとジュリエット」全3幕

会場:東京文化会館

2014年
2月6日(木)6:30p.m. / 2月7日(金)6:30p.m.
2月8日(土)2:00p.m. / 2月9日(日)2:00p.m.

【予定される出演】
ジュリエット:河谷まりあ(2/6、2/9)、エレーヌ・ブシェ(2/7)、沖香菜子(2/8)
ロミオ:後藤晴雄(2/6、2/9)、ティアゴ・ボァディン(2/7)、柄本弾(2/8)

指揮:ベンジャミン・ポープ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

【入場料(税込み)】
S=¥11,000 A=¥9,000 B=¥7,000 C=¥5,000  D=¥4,000  E=¥3,000

*エコノミー券、学生券は2014年1月10日(金)より受付
 エコノミー券=¥2,000(イープラスのみ)
 学生券=¥1,000(NBS WEBチケットのみ)
★ペア割引券(S,A,B席)あり
★親子ペア割引券(S,A,B席)あり

<チケット発売日>
一斉前売開始 11月9日(土)10:00a.m.より

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