パリ・オペラ座バレエ団 2014年日本公演




 昨年11月16日から12月31日までの年末に、バスチーユ・オペラ座で合計26公演が行われた「ドン・キホーテ」。 当初発表された配役は怪我人続出で二転三転し、10回もバジル役を踊るという大任がファーストキャストのカール・パケットに課される結果となった。ブロンドヘアにブルーアイズという絵にかいたような西洋のハンサム男カール。その彼が演じるバルセロナの若き床屋バジルは、ユーモアあふれる気のいい色男だ。
 彼の定評ある包容力あふれるサポートを日本で享受することになったのは、リュドミラ・パリエロである。彼女はオペラ座でドロテ・ジルベールと共に彼のパートナーを初役で踊り、またマチュー・ガニオのパートナーを相手にも舞台を務めた。リュドミラ演じるキトリは、ラテン気質のちゃきちゃき娘。ガニオを相手にするとほんのりスイート、カールが相手の時はより勝ち気に…と、パートナーに合わせて舞台を盛り上げる役作りを心得てるダンサーである。エトワール歴が短いので他のエトワールに比べると、彼女の日本での知名度はまだ低いのかもしれない。しかし、舞台で彼女を見た人々の誰もが、その確実なテクニックと巧みな演技力、そして美脚と美足にひきつけられてしまう。年末の公演では、舞台上手から赤い炎がいきなり飛んできた!といった鮮烈な登場で、観客の目と心を引きつけたのが印象的だった。華奢な体ながら、実にダイナミックに踊る彼女。この作品の見せ場 の1つである第3幕のグラン・パ・ド・ドゥで軸足のブレもなく楽々とやってのけた32回グラン・フェッテは、日本公演でも話題を呼ぶ事だろう。
 持久力という点でも優れたカールとリュドミラが織りなす「ドン・キホーテ」。ヌレエフ作品の醍醐味を最後まで味わうことが期待でき、今からとても楽しみである。





 手術の後の長いリハビリ期間を終え、3月6日にガルニエ宮で開催されたヌレエフ・ガラで復帰したマチアス・エイマン。「マンフレッド」のソロを踊り終えた後、観客の拍手にこたえる彼の目に光る涙は実に感動的だった。休養中だった昨年末の「ドン・キホーテ」での舞台復帰はかなわなかったわけで、来春、彼のバジルをみることができる日本の観客は幸運といえよう。オレリー・デュポンを相手にバジルを彼が初役で踊ったのは2007年の春。当時スジェだった彼だが、見事なテクニックで劇場を湧かせた。猫科の動物を思わせる、しなやかで力強い動き。「ドン・キホーテ」の振付は、こんな彼の魅力を全開させる。定評のある高く、大きなジャンプ。怪我をバネに前進を続けていることを証明するように、6~7月のオペラ座公演「ラ・シルフィード」では、ジャンプの着地音は無音という素晴らしさが加わっていた。
 マチアス演じる少々ひょうきんなバジルのパートナーは、ミリアム・ウルド=ブラーム。ヌレエフ作品についていえば、難しいステップが山盛りされた振付の「眠れる森の美女」のオーロラ姫、「くるみ割り人形」のクララをすでに経験ずみだ。 そしてエマニュエル・ティボー相手に、キトリ・デビューも果たしている。フランス人形のように愛らしく、プリンセスのイメージが強い彼女なので、バルセロナの宿屋の娘と重ね合わせるのが難しい人もいるかもしれない。でも、彼女が昨年6月にフレデリック・アシュトン振付の「リーズの結婚」でエトワールに任命された時のことを思い出してみよう。背景こそ英国の田舎という違いはあるが、キトリのように明るく健康的な恋する村娘という役柄をミリアムは愛らしく演じ踊ってみせたのだ。オペラ座のダンサーの中でもとりわけ美しい、と言われる足の持ち主。そして身体はしなやかそのもの。美貌とテクニックが織りなす魅力あふれるキトリが見られるに違いない。そうそう、彼女のアラベスクはダンサー仲間も評価する素晴らしさ。これは見逃さないように!





 マクレガーの「感覚の解剖学」でオペラ座の舞台を共にしたジョシュア・オファルトアリス・ルナヴァン。ユーモア溢れ、コミカルで楽しいパ・ド・ドゥを踊った二人は、初めての「ドン・キホーテ」ではヒョウヒョウとした青年と威勢の良いラテン娘というカップルを見せてくれるのではないだろうか。
 アリスは2011年のコンクールで自由曲にキトリのカスタネットのヴァリアシオンを踊り、プルミエール・ダンスーズの1席を獲得している。コンテンポラリーに強い!というイメージの彼女がクラシック、それもヌレエフ作品という意表をつく作戦も効果的だったといえよう。「メディアの夢」のイアソンの恋人グラウケ、「マノン」のレスコーの情婦といった、一筋縄ではゆかぬタイプの女を踊らせると小憎らしいほど上手いダンサーである。昨年末の「ドン・キホーテ」では、その役柄を掘り下げる才能を生かし、陽気で生き生きとしたキトリを作り上げていた。コンテンポラリー作品で鍛えたダンスの力強さ、センシュアルな彼女の持ち味もスペインの村娘役に一役買っているようだ。こんなキトリと組むジョシュアは、今回がバジル初役。エトワールに任命された「ラ・バヤデール」のソロル役も似合う一方、「天井桟敷の人々」のフレデリック・ルメートルや「椿姫」のガストンといった女好きの男たちの役も、さわやかで嫌みなしに踊る演技派ダンサーである。
 ダンスの魅力はもちろん、バルセロナにはこんなカップルがいるのかもしれないと思わせる二人の息のあった舞台が見られそうだ。キュートなカップルの恋の行方、観客も隣組の気分で応援したくなるに違いない。


2014年日本公演
パリ・オペラ座バレエ団

「 ドン・キホーテ」

会場:東京文化会館

2014年
3月13日(木)6:30p.m. / 3月14日(金)6:30p.m. / 3月15日(土)1:30p.m. /
3月15日(土)6:30p.m. / 3月16日(日)3:00p.m.

【予定される主な配役】
キトリ:
リュドミラ・パリエロ(3/13、3/15夜)
ミリアム・ウルド=ブラーム(3/14、3/16)
アリス・ルナヴァン(3/15昼)
バジル:
カール・パケット(3/13、3/15夜)
マチアス・エイマン(3/14、3/16
ジョシュア・オファルト(3/15昼)


「 椿 姫 」

会場:東京文化会館

2014年
3月20日(木)6:30p.m. / 3月21日(金・祝)1:30p.m. / 3月22日(土)1:30p.m. /
3月22日(土)6:30p.m. / 3月23日(日)3:00p.m.

【予定される主な配役】
マルグリット:
オレリー・デュポン(3/20、3/22昼)
イザベル・シアラヴォラ(3/21、3/22夜)
アニエス・ルテステュ(3/23)
アルマン:
エルヴェ・モロー(3/20、3/22昼)
マチュー・ガニオ(3/21、3/22夜)
ステファン・ビュリョン(3/23)

演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

※記載の配役は2013年9月17日現在の予定です。 カンパニーの都合等で変更になる場合があります。正式な配役は公演当日に発表いたします。


入場料[税込]
S=¥25,000 A=¥22,000 B=¥19,000 C=¥15,000 D=¥11,000 E=¥7,000

*エコノミー券、学生券は2014年2月7日(金)より受付
 エコノミー券=¥6,000(イープラスのみ)
 学生券=¥3,000(NBS WEBチケットのみ)
★ペア割引券(S, A, B席)あり
★3月15日(土)1:30p.m.公演限定! 親子ペア券(S, A, B席)あり

<チケット発売日>
一斉前売開始 11月2日(土)10:00a.m.より

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