シュツットガルト・バレエ団 2015年日本公演 20世紀屈指の天才振付家ジョン・クランコの伝統を受け継ぎ21世紀に輝きを放つダンサーたち アンナ・オサチェンコ&ジェイソン・レイリー Photo:Roman Novitzky

 舞台上の出来事は、“今、まさにここで起こっている”ーシュツットガルト・バレエ団の公演の臨場感には、ただただ圧倒されるものがある。「コール・ド・バレエにいたるまで一人ひとりにリアルなドラマがあるからこそ、舞台全体に活気が生まれ、観客は何が起こっているのかを瞬時に理解できる。それが、“シュツットガルトの奇跡”の秘密」と語るリード・アンダーソン芸術監督。マリシア・ハイデをはじめ、クランコの元で踊った人々が直々にダンサーを指導するシュツットガルトには今も、そんなクランコのスピリットが息づいている。
 アンダーソン芸術監督が「今絶好調のペア」と評するアンナ・オサチェンコとジェイソン・レイリーは、そうした伝統に支えられたシュツットガルト・バレエ団の中でも、アリシア・アマトリアンとフリーデマン・フォーゲルのペアとともに、今やリーダー的な存在だ。

Photo:Stuttgart Ballet

 オサチェンコは、故郷カザフスタンでロシア式の厳格なバレエ教育を受けたのち、ジョン・クランコ・バレエ学校に入学、より自由な解釈ができるヨーロッパ・スタイルのバレエに魅せられ、ドラマティック・バレリーナとしてその才能を開花させた。
 中でもクランコ作品を踊ることは、自らの経験、自分らしさを役に昇華できる自由があるからこそ、毎回が鳥肌が立つほどに心揺さぶられる体験になるという。「特にジュリエット役は、年を重ねれば重ねるほど、踊る喜びを感じるようになりました。31歳になった今も、踊るたびに自分自身の初恋や、ファーストキスの思い出が鮮やかに蘇ってきます。ふつうは一度しかない初恋を、何度も体験してときめくことが出来るなんて、とっても素敵なことでしょう? だから役を作り込まなくても、感情が自然にわき上がってくるんです」
 一方「オネーギン」のタチヤーナ役は、2014/15シーズンにロールデビューしたばかり。「初めてこの作品を観た瞬間から、タチヤーナ役は私の夢でした。入団以来、この役がもらえるまで待ちに待ったのですが、踊ってみて気づいたんです ー14年待った今の私だからこそ、この役が踊れるようになったんだって。実際に辛い恋の終わりも経験して、オネーギンに恋し拒絶された時のタチヤーナの哀しみや、成長して、彼はもう自分に必要ないと気づいた彼女の大人の女としての強さが、手に取るようにわかるようになったからです」
 そんなオサチェンコと婚約したばかりだというカナダ出身のジェイソン・レイリーは、やんちゃすぎて初めてのバレエレッスンから追い出されたという破天荒なエピソードの持ち主。ベテランとなった今も、圧倒的な存在感を放つ妖艶な魔女カラボス役からノーブルな王子役までこなす変幻自在ぶりの向こうに、子どものような遊び心が垣間見える。

Photo:Stuttgart Ballet

 「ロミオ役の醍醐味は、恋の何たるかも知らない少年が、大人の恋愛のジレンマを経験するまでに成長する、その過程を演じきること。今は年相応にそれなりに経験もあってーとはいえ好きな女性のために毒を飲んだことはないけれどー気持ちはよくわかる(笑)。だからそれをより自然な形で表現できるようになってきたと思う」
 「ロミオが成長過程なら、オネーギンはその真逆の、堕落の過程。傲慢な自惚れ男が、人生最大の過ちを犯したことに気づいて、最後には誰もが哀れむぶざまな男に成り果てる。タチヤーナとオネーギンの力関係も180度入れ替わるから、この変化を丁寧に描き出すのはとても難しいよ」。感情的に消耗する役だけに、公演の後はいつも役から抜けきるのに時間がかかるという。
 「アンナと一緒に踊るようになったのは最近だけれど、本当に楽しくて、やっぱり恋人同士役を演じやすいね。ただし『オネーギン』だけは別で、毎回家に帰ると“ひどいことしてごめん”って謝ってるんだ(笑)」
 クランコの伝統に支えられた才能の宝庫・シュツットガルトで、クランコ作品のみならず、ジョン・ノイマイヤー、マルコ・ゲッケ等幅広いレパートリーに挑戦できることは、アーティストとして成長するのに理想的な環境だという二人。自らの内からわき上がる表現を大切にし、どんなスタイルにも多様に対応できるシュツットガルトのダンサーたちが、日本の観客の前でどんな“奇跡”を見せてくれるのか、ますます期待が高まるばかりだ。

アリシア・アマトリアンとフリーデマン・フォーゲルの
ビデオ・インタビュー

シュツットガルト・バレエ団の看板コンビ、アリシア・アマトリアンとフリーデマン・フォーゲルから、ビデオ・インタビューが届きました。「ロミオとジュリエット」と「オネーギン」の舞台映像付きです!

https://youtu.be/bsZ6gq9hcP8


ジュリエットで日本主役デビュー
無限の期待を備えた若き新鋭
エリサ・バデネス

 まだ弱冠23歳ながら最も勢いのあるプリンシパルの一人、スペイン出身のエリサ・バデネス。日本での主演は今回が初となるが、既に数多くの作品で主演し今やシュツットガルトで絶大な人気を誇る若きスターだ。ユース・アメリカ・グランプリ金賞をはじめ数々の受賞歴を誇るバデネスは、確固たる技術と英国ロイヤル・バレエ学校仕込みの卓越した演技力を備えた新星として注目を浴び、2010年コール・ド・バレエとして入団後わずか3年でプリンシパルの座に上り詰めた。
 アンダーソン芸術監督も、「彼女の才能はとどまるところがありません。喜劇に悲劇、古典もモダンも何でも出来てしまう。『じゃじゃ馬馴らし』でのコメディエンヌぶりなんて、想像以上の面白さでした」と絶賛する。
 素顔のバデネスはとても小柄で、少女のようにはにかんだ笑顔が初々しく、まさにジュリエットそのもの。「パリスに紹介される場面は、それぞれのキャラクターに対して、ジュリエットとの関係性がわかるように違う反応をしなければならならないので難しいですね。でも、いつロミオにキスしようとか、そういうことは細かく決めていません。その日その時の自分の感情に導かれるままに踊れることがとにかく楽しいです」

“ロミオ”そのもののルックスと踊りで
観客の目を釘付け!
ダニエル・カマルゴ

 ロミオのイメージがあまりにも似合う、長身で端正な顔立ちのダニエル・カマルゴは、パートナーのバデネスとともに注目されているブラジル出身の若手プリンシパルだ。13歳の時にシュツットガルトに渡ってジョン・クランコ・バレエ学校で学び、多様なスタイルのダンスを変幻自在に踊れるバランスのとれたダンサーへと成長した。
 長い四肢を存分に活かした優雅なライン、ダイナミックでありながら重力を感じさせないしなやかなジャンプなど、舞台にカマルゴが登場するだけで観客の目を釘付けにしてしまう絶対的なスター・クオリティは、入団直後から注目の的。同い年のバデネスとは、観客を熱狂の渦に包んだという「ドン・キホーテ」デビュー以来数々の舞台で共演し、今や数多くの振付家から引っ張りだこのペアとなった。バデネスと並ぶと、衣裳なしでもロミオとジュリエットのような清々しい雰囲気が漂い、「皆が舞台上での僕らのケミストリーを褒めてくれる」という。
 「『ロミオとジュリエット』は、ロミオのキャラクターも音楽も全部好きです。男性ダンサー同士がとても仲がいいので、ロミオ、マキューシオ、ベンヴォーリオの3人がユニゾンで踊るシーンは特に楽しいですね。観客の皆さんにもそれが伝わるといいのですが」


「タチヤーナを踊る私は演技しているのではなく、
その瞬間を生きているんです」
ヒョ・ジョン・カン

 ソウル出身のヒョ・ジョン・カンは、普段の控えめな物腰の奥に、人一倍の強さと情熱を秘めたダンサーだ。2002年ローザンヌ国際バレエコンクールで入賞後ジョン・クランコ・バレエ学校に学び、そのままシュツットガルト・バレエ団に入団したものの、最初の数年間はずっとソロを踊る機会は皆無だったという。「ここでは全員が素晴らしいダンサーなので気後れしてしまい、ますますシャイになっていたんです」と振り返る。ところが主演ダンサーが次々に怪我をし、代役主演した「眠れる森の美女」がブレイクスルーとなり、2011年、初の正式主演となった「ロミオとジュリエット」の終演直後に舞台上でアンダーソン芸術監督にプリンシパルに任命され、その丁寧で詩情溢れる踊りで一躍シュツットガルトの華となった。
 日本公演で演じる「オネーギン」のタチヤーナ役は、踊るたびに深みが増していくという。「コール・ド・バレエ時代、『オネーギン』を舞台袖から観ては、溢れる涙を抑えることができませんでした。憧れてきた役をこうして踊れることが本当に幸せです。中でも素晴らしいのは3幕の最後のパ・ド・ドゥ。最も美しく、同時に感情的にはズタズタに引き裂かれるので、最も苦しい場面とも言えますね。舞台上の私は演技しているのではなく、その瞬間を生きているんです」

「オネーギンは彼のためにあるような役」と、
アンダーソン芸術監督お墨付き
ロマン・ノヴィツキー

 今季プリンシパルに昇進したばかりのロマン・ノヴィツキーは、クリエイティブな才能に溢れるダンサー。絶妙な演技には団員の誰もが一目置くばかりか、2012年には初の振付作品を発表し、バレエ団の公式フォトグラファーとしても活躍する真のアーティストだ。故郷のスロバキア国立バレエ団で既に成功していたものの、更なる飛躍を求めて6年前にシュツットガルトへやって来た。「素晴らしいダンサーとコーチから多くの刺激を受け、想定していた自分の限界をはるかに超えて、身体的にも精神的にも大きく成長できました。振付や写真という新たな表現方法にも挑戦できたのも、インスピレーションに満ちたこの環境のおかげです。ガラで上演予定の第2作目となる「同じ大きさ?」も、ダンサーたちがより上を目指し日々切磋琢磨する様子からヒントを得て振付けたという。
 今回の来日公演では、念願の「オネーギン」全幕初主演を果たすノヴィツキー。19世紀の青年貴族にぴったりの風貌と優雅な佇まい、芸術への情熱と複雑な心の襞を巧みに描き出せる演技力から、アンダーソン芸術監督も「オネーギンは彼のためにあるような役」と期待を寄せる。「究極の夢だった役を踊れることになって、言葉では言い尽くせないほど興奮しています。日本での舞台に自分の全てをぶつけたい」と意気込んでいる。

2015年日本公演
シュツットガルト・バレエ団
「ロミオとジュリエット」全3幕

【公演日】

2015年
11月13日(金)6:30p.m.
11月14日(土)2:00p.m.
11月15日(日)2:00p.m.

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

ジュリエット:
アリシア・アマトリアン(11/13)、アンナ・オサチェンコ(11/14)、エリサ・バデネス(11/15) 
ロミオ:
フリーデマン・フォーゲル(11/13)、ジェイソン・レイリー(11/14)、ダニエル・カマルゴ(11/15)

【入場料[税込]】

S=¥19,000 A=¥17,000 B=¥15,000 C=¥12,000 D=¥9,000 E=¥6,000
エコノミー券=¥4,000 学生券=¥3,000

◆ペア割引[S, A, B席]あり
◆親子ペア割引[S, A, B席]あり
※エコノミー券はイープラスのみで、学生券はNBS WEBチケットのみで10/9(金)より発売。

2015年日本公演
シュツットガルト・バレエ団
「オネーギン」全3幕

【公演日】

2015年
11月21日(土)2:00p.m.
11月22日(日)2:00p.m.
11月23日(月・祝)2:00p.m.

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

タチヤーナ:
アリシア・アマトリアン(11/21)、ヒョ・ジョン・カン(11/22)、アンナ・オサチェンコ(11/23)
オネーギン:
フリーデマン・フォーゲル(11/21)、ロマン・ノヴィツキー(11/22)※、ジェイソン・レイリー(11/23)

※シュツットガルト・バレエ団日本公演の「オネーギン」の配役につきまして、一部配布済みの公演チラシ、「NBSニュース」の記載から上記のように変更が生じております。なにとぞご了承いただきますようお願い申し上げます。

【入場料[税込]】

S=¥19,000 A=¥17,000 B=¥15,000 C=¥12,000 D=¥9,000 E=¥6,000
エコノミー券=¥4,000 学生券=¥3,000

◆ペア割引[S, A, B席]あり
◆親子ペア割引[S, A, B席]あり
※エコノミー券はイープラスのみで、学生券はNBS WEBチケットのみで10/9(金)より発売。

2015年日本公演
シュツットガルト・バレエ団
ガラ公演〈シュツットガルトの奇跡〉

【公演日】

2015年
11月18日(水)6:30p.m.

会場:東京文化会館

演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

【入場料[税込]】

S=¥19,000 A=¥17,000 B=¥15,000 C=¥12,000 D=¥9,000 E=¥6,000
エコノミー券 ¥4,000 学生券 ¥3,000

◆ペア割引[S, A, B席]あり
◆親子ペア割引[S, A, B席]あり
※エコノミー券はイープラスのみで、学生券はNBS WEBチケットのみで10/9(金)より発売。

その他の都市

【札幌】「ロミオとジュリエット」 11/25(水)ニトリ文化ホール TEL:011-241-3871
【西宮】「オネーギン」 11/28(土)兵庫県立芸術文化センター TEL:0798-68-0255