2017年日本公演 パリ・オペラ座バレエ団 Grand Gala バランシンからロビンズ、そしてミルピエまで、オペラ座におけるアメリカン・バレエの系譜を魅せる絶妙さ!〈グラン・ガラ〉

今回の日本公演では、パリ・オペラ座バレエ団の伝統と革新の両面を見せる2つのプログラムが用意されました。
今号では、20世紀の二人の巨匠バランシンとロビンズ、そして21世紀に初演されたミルピエ作品が並ぶ〈グラン・ガラ〉について、
それぞれの作品の魅力を舞踊評論家の渡辺真弓さんにご紹介いただきます。

 この作品では、ダンスと音楽に加え、2007年世界文化賞受賞のダニエル・ビュレンの美術との最新のコラボレーションが大きな呼び物となりそうだ。ニューヨーク・シティ・バレエ出身で、バランシンとロビンズの影響を受けたミルピエの野心作でもある。というのも、この作品のライヴ・ビューイングで、ミルピエ自身が創作の意図についてこう語っているのだ。「ギリシャ神話の『ダフニスとクロエ』の恋物語の筋にとらわれず、ラヴェルの音楽に導かれて、舞台を別世界のパレットのようにしたかった」。
 美術は極めてシンプルで、円形や四角形のオブジェが、青、赤、緑、黄色など海や太陽などの色彩を帯びながら、地中海の雰囲気を醸成。4色の衣裳をまとったダンサーたちが、最後に舞台で躍動する様は壮観である。実は、2014年オペラ・バスティーユでの初演の際、『ダフニスとクロエ』に先立って上演されたのが『水晶宮』。この作品でも最後の楽章で赤、青、緑、白の4色の衣裳を着けたダンサーが一堂に会すので、そのコンセプトを受け継いだものと思われる。今回は初演にキャスティングされたデュポンとモローをはじめ成長著しいボラックやルーヴェら新鋭たちが登場するので、オペラ座の現在の活況を展望するには最適の演目と言ってよいだろう。

 『アザー・ダンス』は、ショパンのマズルカとワルツに乗せて繰り広げられる軽快なパ・ド・ドゥで、この作品でもダンスと音楽の幸福な結合を体験することができる。ガラ・コンサートなどで踊られることが多いが、もともとはナタリア・マカロワとミハイル・バリシニコフの伝説のカップルのために振付けられたものである。『ダンシズ・アット・ア・ギャザリング』と『イン・ザ・ナイト』と並ぶ、ロビンズのショパン・シリーズの名作の一つで、舞台上のピアノ演奏とのパ・ド・トロワと言ってもいいかもしれない。超絶技巧こそ披露されないが、さりげない振付の中に、奥深い詩情が漂う現代バレエの傑作である。この辺りがエトワール・カップルの技量の見せどころとなろうが、リュドミラ・パリエロとマチアス・エイマン、ドロテ・ジルベールとジョシュア・オファルトという気鋭の2組が、この珠玉のパ・ド・ドゥでいかにスリリングな対話を繰り広げてくれるのか興味は尽きない。

 『テーマとヴァリエーション』は、バランシンが、1947年にバレエ・シアター(現在のABT)のために振付けた作品。パリ・オペラ座にビゼーの音楽で『水晶宮』を振付けた直後のことで、奇しくも2017年はそれからちょうど70年という節目の年に当たっている。〈グラン・ガラ〉は、バランシンからロビンズ、前芸術監督ミルピエに至るオペラ座におけるアメリカン・バレエの系譜を見通せる絶妙のプログラムなのである。
 音楽は、チャイコフスキーの『管弦楽組曲第3番』の最終楽章。バレエ音楽として作曲されたわけではないが、非常に舞踊的で、バレエはまさに「見る音楽」と形容するにふさわしい。この作品の特徴は、抽象的振付の中にも、プティパの名作『眠れる森の美女』を想起させる情景が随所に散りばめられていることだ。これは依頼側の希望でもあったそうだが、主役のエトワール・カップルはオーロラ姫と王子、コール・ド・バレエは妖精とカヴァリエというように、洗練された動きの奥に、プティパのバレエのイメージが透けて見えるのが非常に面白い。
 今年は、11月の進級試験と同時期に、〈ジョージ・バランシン・プロ〉が上演されていたが、デュポンとミルピエ新旧監督に引き上げられた精鋭たちが美技を競って、きらきらと輝きを放っていた。定評のバランシン・バレエで、オペラ座の本領発揮となることまちがいない。

2017年日本公演
パリ・オペラ座バレエ団

「ラ・シルフィード」

【公演日】

2017年
3月2日(木)6:30p.m.
3月3日(金)6:30p.m.
3月4日(土)1:30p.m.
3月4日(土)6:30p.m.
3月5日(日)3:00p.m.

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

  • シルフィード
  • :ミリアム・ウルド=ブラーム(3/2, 3/4夜)
    :アマンディーヌ・アルビッソン(3/3, 3/5)
    :リュドミラ・パリエロ(3/4昼)
  • ジェイムズ
  • :マチアス・エイマン(3/2, 3/4夜)
    :マチュー・ガニオ(3/3, 3/5)
    :ジョシュア・オファルト(3/4昼)

〈グラン・ガラ〉

【公演日】

2017年
3月9日(木)6:30p.m.
3月10日(金)6:30p.m.
3月11日(土)1:30p.m.
3月11日(土)6:30p.m.
3月12日(日)3:00p.m.

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

  • 「テーマとヴァリエーション」
  • ローラ・エッケ、マチュー・ガニオ(3/9, 3/11夜)
    ミリアム・ウルド=ブラーム、マチアス・エイマン(3/10, 3/12)
    ドロテ・ジルベール、ジョシュア・オファルト(3/11昼)
  • 「ダフニスとクロエ」
  • ダフニス:
    エルヴェ・モロー(3/9, 3/11昼、夜)
    ジェルマン・ルーヴェ(3/10, 3/12)
    クロエ:
    オレリー・デュポン(3/9, 3/11昼、夜)
    アマンディーヌ・アルビッソン(3/10, 3/12)
  • 「アザー・ダンス」
  • リュドミラ・パリエロ、マチアス・エイマン(3/9, 3/11昼、夜)
    ドロテ・ジルベール、ジョシュア・オファルト(3/10, 3/12)

【入場料[税込]】

S=¥27,000 A=¥24,000 B=¥21,000 C=¥17,000 D=¥13,000 E=¥9,000
エコノミー券=¥4,000 学生券=¥4,000

★ペア割引(S,A,B席) ★親子ペア券(S,A,B席)
*エコノミー券はイープラスのみで、学生券はNBS WEBチケットのみで、2017年2月3日(金)より発売。
*表記の出演者は2016年9月23日現在の予定です。オペラ座バレエ団の都合、出演者の怪我等の理由により変更になる場合があります。