天性のプリマ、そう呼ぶにふさわしい気品とオーラ——吉岡美佳は、多くの古典全幕に主演するトップ・バレリーナである。今春、バレエ界の貴公子ウラジーミル・マラーホフと共演した『眠れる森の美女』のオーロラ役では、その“お姫様オーラ”が最高の輝きを放っていた。吉岡の魅力は、繊細さと大胆さをあわせ持つ表現力。『ドン・キホーテ』では、主役・キトリと、ジプシーの女が持ち役。前者では、街娘役を軽妙に演じつつ、グラン・パ・ド・ドゥでは比類ない品格を漂わせる。一転、後者では、熱情の発散が凄まじい。『ラ・シルフィード』などロマンティック・バレエもよく似合う。そんな彼女の持ち役のなかでも、『白鳥の湖』のオデット/オディールは、極めつけ、といってよいだろう。オデットの悲哀を細やかに、情感をもって伝えるアダージオ、オディールでの、長身の肢体を活かした艶やかな踊り。両者の演じわけを、今回も鮮やかにみせてくれるに違いない。 |