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 天性のプリマ、そう呼ぶにふさわしい気品とオーラ——吉岡美佳は、多くの古典全幕に主演するトップ・バレリーナである。今春、バレエ界の貴公子ウラジーミル・マラーホフと共演した『眠れる森の美女』のオーロラ役では、その“お姫様オーラ”が最高の輝きを放っていた。吉岡の魅力は、繊細さと大胆さをあわせ持つ表現力。『ドン・キホーテ』では、主役・キトリと、ジプシーの女が持ち役。前者では、街娘役を軽妙に演じつつ、グラン・パ・ド・ドゥでは比類ない品格を漂わせる。一転、後者では、熱情の発散が凄まじい。『ラ・シルフィード』などロマンティック・バレエもよく似合う。そんな彼女の持ち役のなかでも、『白鳥の湖』のオデット/オディールは、極めつけ、といってよいだろう。オデットの悲哀を細やかに、情感をもって伝えるアダージオ、オディールでの、長身の肢体を活かした艶やかな踊り。両者の演じわけを、今回も鮮やかにみせてくれるに違いない。

 
 
 “端正”とは、この人のためにあるかのような言葉だ。踊りの、たたずまいの、どこをとっても、いささかの過剰も不足もない。しかし、その表現には、一本芯が通っている。木村和夫は、しなやかな身体のラインと、豊かな音楽性の持ち主。『火の鳥』(ベジャール振付)、『タムタム』(ブラスカ振付)などでは、柔軟な肉体がうねり、脈打ち、音楽と一体となった踊りの妙を味わえる。海外からゲストを迎え『ジゼル』を上演する際、ヒラリオン役を踊ることが多く、その渋みある演技をご記憶のバレエ・ファンもいらっしゃるかと思う。いぶし銀の魅力が光る踊り手だが、『ドン・キホーテ』バジル役での、底抜けの明るさ、『エチュード』(ランダー振付)エトワールでの、晴れやかな舞台姿などにみられるように、華もあわせ持つ。今回踊る『白鳥の湖』の王子役では、ともに経験豊富な吉岡美佳と組んで、ノーブルな演技、なめらかなテクニックに裏打ちされた踊りをみせてくれるだろう。
 
 
 長い手脚と高い身体能力、つぶらな瞳がチャーミングな顔立ち——上野水香は、日本のバレリーナのなかでも、スター性において抜群の存在。彼女が登場するだけで、舞台が銀の粉をまぶしたかのように華やかになる。2004年に東京バレエ団入団後、一層の飛躍を遂げた。ウラジーミル・マラーホフ、マチュー・ガニオら海外の一流スターとも共演。ベジャールの傑作『ボレロ』の“メロディ”に挑むなど、踊るたびに新鮮な舞台を生み出している。『M』(ベジャール振付)のローズ、マラーホフ版『眠れる森の美女』のリラなど、アンサンブルの一員として舞台に息づき、作品にアクセントを加える存在としても魅力的だ。近年、マスコミへ登場する機会も多いが、その発言からは、バレエへの真摯な想いを深めているのがうかがえる。類まれな才能と技量をもつ大器が、自身の可能性を限りなく広げていくさまを見守るのは、観客冥利に尽きる。上野の舞台からますます目が離せない。
 
 
 豪快だ。そして、いつまでも若々しさを失わない。高岸直樹は、古典全幕からベジャール作品まで多彩に活躍、バレエ団を牽引する大黒柱である。『ラ・シルフィード』では、長身かつ逞しい体躯の高岸が、難しい足技を軽やかに決めるたびに、ジェームズ役に相応しい“若さ”が発散される。内外で80回以上も踊り、彼の代名詞ともなった『ザ・カブキ』(ベジャール振付)の由良之助では、全編を貫く緊張感に満ちた演技が、常に熱狂と感動を呼ぶ。『ボレロ』の剛にして肉感的な“メロディ”は彼ならでは。『カルメン』の雄々しいエスカミリオも捨て難い。大型の魅力に富むが、ノーブルな一面もあわせもつ。『ジゼル』のアルブレヒトや、今回踊る『白鳥の湖』のジークフリートでは、穏やかに情熱を秘めつつ、バレリーナの輝きを引き立てる。上野水香とは、『ドン・キホーテ』『くるみ割り人形』ほかで共演し、息もぴったり。大型コンビによる、ダイナミックな舞台に期待したい。
 
 
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