作品紹介

「ギリシャの踊り」 DANSES GRECQUES

Photo:Kiyonori Hasegawa
振付:  モーリス・ベジャール
音楽:  ミキス・テオドラキス
東京バレエ団初演:  2003年1月16日 東京文化会館
   
◇主な配役◇
ソロ:  後藤晴雄(5/10)、中島周(5/11)
二人の若者:  長瀬直義-横内国広(5/10)
高橋竜太−小笠原亮(5/11)
パ・ド・ドゥ:  小出領子−松下裕次(5/10)
吉岡美佳−平野玲(5/11)
ハサピコ:  上野水香−高岸直樹(5/10,11)

地中海に面した港町、マルセイユに生まれたモーリス・ベジャールは、古代より幾多の文明を育んできたこの母なる海に魅せられ、自らを“地中海人”と捉えると同時に、自作の中でもたびたびテーマとして取り上げている。そのベジャールが地中海への憧憬ともいえる思いをストレートに託したのが、1982年にフランスのアルル闘技場で初演した「タラサ、われらの海(ギリシャの踊り)」である。

万物を生み出した生命の源としての海の、ふくよかな存在を表わすような女性たちの群舞。その上に広がる青い空ときらめく陽光、吹き渡る風を感じさせる、躍動的な裸体の若者たちの踊り。つぎつぎに繰り広げられるダンスは、古代からそこに営まれてきた人間の生そのものをも高らかに謳う。

「テオドラキスがこの曲をもってきてくれたとき、私はちょうど、「タラサ」と名づけた地中海もののシリーズに取り組んでいた。すっかり感激して曲を受け取った私は、これを最後の部分に使うことに決めた。
つづいて踊りの数を九個から七つに減らし、振付の方も、数学的な厳しさで(いくつかの踊りは、バッハのフーガのように構成されている)検討し直した。その結果、このバレエ作品は、——ギリシャ人のいうところによると——ギリシャ色が濃くなったのである。民族音楽からの借用を最小限にとどめ、簡素な衣裳もダンサーたちがスタジオで着用するようなもので、実際のギリシャのどこにも存在していないものを使ったのが、却ってこういう効果をもたらすことになったのであろう」(モーリス・ベジャール)

「ギリシャの踊り」 DANSES GRECQUES

Photo:Kiyonori Hasegawa
振付:  モーリス・ベジャール
音楽:  イーゴリ・ストラヴィンスキー
衣裳:  ジョエル・ルスタン、
ロジャー・ベルナール
東京バレエ団初演:  1989年7月21日 東京文化会館
   
◇主な配役◇
火の鳥:  木村和夫(5/10,11)
フェニックス:  高岸直樹(5/10)、後藤晴雄(5/11)

今世紀初頭、ディアギレフのロシア・バレエ団がフォーキン振付によって初演した「火の鳥」は、ロシア民話をもとにしたものであった。ストラヴィンスキーの色彩豊かな音楽によって、豪華な絵本をめくるような幻想的な舞台が創られた。内容は王子が火の鳥の助けを得て魔王を滅ぼし、美しい王女と結ばれるというものである。

以来、バランシーン版、ノイマイヤー版も誕生。ベジャールは1970年に独自の発想による「火の鳥」を発表した。

——ストラヴィンスキーが、ロシア人作曲家であるということ。

——ストラヴィンスキーが、革命的な作曲家であるということ。

ベジャールは、音楽の中に存在するこの二つの要素に注目し、これをバレエによって抽象的に表現することを試みた。まずは、ロシアの深遠な感情を、そして伝統的な音楽との訣別を……。

設定はパルチザンの闘争。曲はバレエ用全曲でなく、組曲を用いている。ブルージーンの作業服に身をかためた革命軍のグループの踊り。その中のひとりが作業服を脱いで赤いタイツ姿になってリーダー、火の鳥になる。闘いの果てにリーダーは倒れるが、不死鳥が現れて彼を蘇らせる。

「ギリシャの踊り」 DANSES GRECQUES

Photo:Kiyonori Hasegawa
振付:  モーリス・ベジャール
音楽:  イーゴリ・ストラヴィンスキー
東京バレエ団初演:  1993年4月9日 東京文化会館
   
◇主な配役◇
生贄:  吉岡美佳 - 中島周(5/10)
井脇幸江 - 長瀬直義(5/11)

ストラヴィンスキーの最高傑作であり、現代音楽史上もっとも重要な作品のひとつである「春の祭典」は、太陽神への礼賛と生贄として選ばれる乙女を描いたもので、1913年ニジンスキーの振付によりバレエ・リュスによってシャンゼリゼ劇場で初演され、劇場中が騒然とするほどの賛否両論の激しい反響を呼び起こした。

ベジャールの「春の祭典」は、1959年にブリュッセルで初演されている。彼はストラヴィンスキーの台本を離れ、野性的で官能的な若者たちの肉体と躍動美の“祭典”を創り上げた。この創作にあたっては、発情期の鹿、交尾する鹿を描いた映画からインスピレーションを得たという。その鹿の動きがストラヴィンスキーのリズムにピッタリだったのだ。

ベジャールは人間の欲望、獣性、生きるための闘いを描くことによって、ストラヴィンスキーの音楽を鮮烈に視覚化することに成功した。この作品は年配の観客の眉をひそめさせ、人々はスキャンダルを話題にしようとしたが、男性舞踊手の活躍、シンプルこのうえないボディタイツのみの衣裳、ホリゾントだけの舞台等、さまざまな革新的な試みは、若い観客を中心に圧倒的な支持を得た。これを契機に20世紀バレエ団が生まれ、バレエは古い殻を破って新しい時代へと突入した。

「春とは一体何であろうか? それは冬のマントの下で長い間眠っていた巨大で原始的な力にほかならないそう春は突如として湧き起こり、植物、動物、人間それぞれの世界を、燃え立たせるのである。

人間の愛というものは、その肉体面において、宇宙を創造した神の愛の行為、そして神がそこから得る悦びを象徴している。人間の精神に関する逸話の国境が少しずつ消えてゆき、世界の分化について語り始めることができるときには、普遍性のない民族的情趣はことごとく捨て去り、人間の本質的な力を取り戻すことにしよう。いかなる大陸にあっても、どんな風土であろうと、あらゆる時代に共通の力を。

どうかこのバレエが、あらゆる絵画的な技巧から解き放たれ、肉体の深淵における男と女の結合、天と地の融合、春のように永遠に続く生と死の讃歌とならんことを!」(モーリス・ベジャール)

*2007年11月20日現在の予定です。出演者の怪我等の理由により変更になる可能性があります。正式な配役は公演当日に発表します。