解説 STORY・聴きどころ 指揮者・キャスト

序曲

 パリ初演に際して加えられた。ラルゲットの序奏から始まり、〈God save the queen〉のメロディが奏される。

第1幕

第1場

●エリザベッタのカヴァティーナ<彼の愛が私を幸せにしてくれた>(L’amour suo mi fe beata)

 サラと侍女たちがいる広間にエリザベッタが登場する。エリザベッタはサラが恋敵であるとも知らず、「ロベルトは反逆の罪よりも、自分の愛への裏切りの方が罪は重い。彼への愛は王座よりも大切なもの」と告白する。穏やかでやさしさに満ち溢れた歌で、威厳ある女王ではなく、一人の恋する女性としてのエリザベッタの純粋な思いが伝わってくる。

●エリザベッタとロベルトの二重唱<優しい心~恐るべき雷光が>(Un tenero core...Un lampo, un lampo orribile)

 謁見を許されたロベルトの手にエリザベッタは自分が与えた指輪を見つけ、それがあればいつでも身の安全を保証することを告げる。そしてエリザベッタは幸せだった日々を思い起こすが、ロベルトが自分とサラとの仲を女王が知っていると勘違いして発言したことで、エリザベッタがロベルトの裏切りに気づいてしまい激怒する。前半の穏やかな部分と後半の速度を速めた激しく劇的な部分が対照的。激怒してロベルトの激しく責めるエリザベッタの技巧を駆使した歌が聴きどころ。

第2場

●サラとロベルトの二重唱<あなたが帰って来られてから~この別れは永遠のもの>(Dacche tornasti...Questo addio, fatale, estremo))

 ノッティンガム公爵邸の居間。ロベルトがやってきてノッティンガム公爵と結婚したサラを責める。サラは父親が亡くなり、エリザベッタに薦められやむなく結婚したことを話す。逆にサラはロベルトが女王からもらった指輪をしていることを責めると、ロベルトは指輪をはずして投げ出す。ロベルトは女王からもらった指輪を、サラは自らが刺繍した青いショールを交換し、ふたりは別れる。前半はそれぞれの思いを切々と歌い、後半の部分では湧き上がる思いが熱い二重唱となって展開する。

第2幕

●エリザベッタ、ロベルト、ノッティンガムの三重唱(第2幕幕切れ)<ならず者! 行け!お前には死がふさわしい>(Scellerato!...Va’!Va’, la morte sul capo ti pende)

 ロベルトは捕まったときに刺繍のある青いショールを持っていた。エリザベッタはショールを手に誰のものかと激しく問い詰めるがロベルトは名前を明かさない。しかしノッティンガム公爵はそれが妻サラのものであることに気づき愕然とする。ついにエリザベッタはロベルトの裏切りに激怒し死刑の判決に署名する。嫉妬に狂ったエリザベッタ、追い詰められたロベルト、妻の不貞におののくノッティンガム公爵、と三者三様の激しい思いが劇的な歌となって展開している。

第3幕

第2場

●ロベルト・デヴェリューのシェーナとアリア<恐ろしき扉はまだ開かない~天使のような純粋な心>(Ed ancor la tremenda porta...Come uno spirto angelico)

 ロベルト・デヴェリューは逮捕されロンドン塔の中で処刑を待つ身。愛するサラの身の潔白の申し開きをしたいと願っている。そして処刑ではなくノッティンガム公爵の剣での死を望んでいるのだ。サラへの純粋な思いがこめられた大変美しい旋律を持った悲痛な歌。

第3場

●エリザベッタのカヴァティーナ~フィナーレ<裏切り者よ、彼女のそばで生きればよいのです(女王の涙)>~<あの流された血は>(Vivi, ingrate, a lei d’accanto…Quel sangue versato)

 ロベルトの思いが他の誰かに向けられていることを知りロベルトの処刑を決断するが、エリザベッタは苦悩する。しかしエリザベッタの彼への思いは変わらない。そこへサラが輪を持って駆けつけるが、ロベルトの処刑は執行されてしまう。絶望に打ちひしがれてエリザベッタは倒れてしまう。オペラ全曲中最高の聴きどころがこの場面。劇的緊迫度を増していく中でエリザベッタの苦悩と絶望が深い表現力と技巧を駆使して歌われており、合唱を伴った歌が頂点に達したところで幕となる。グルベローヴァの極めつけの歌唱が期待できる。