音楽:AM.シャブリエ
振付:ローラン・プティ
アレクシ=エマニュエル・シャブリエは19世紀末にパリで活躍、狂詩曲「スペイン」でよく知られる作曲家。1981年、ローラン・プティは自らが芸術監督を務めるマルセイユ・バレエ団で、シャブリエの楽曲の魅力を最大限に活かしたバレエ、『6つのダンス』を発表した。初演はジャン=シャルル・ジル、ソランジュ・マイヤール、ジル・コシュネールら。今回上演されるのは、シャブリエ1885年の作「ハバネラ」に振り付けられたパ・ド・ドゥ。キューバ起源の独特のリズムが印象的な音楽とともに、レオタードとタイツというシンプルな衣裳で伸びやかに踊るダンサーが、プティ独特の味わいがふんだんに散りばめられたダンスを展開、観る者の目をひきつける。
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
1890年1月、最盛期にあったマリインスキー劇場で初演された『眠れる森の美女』は、チャイコフスキー自身、自分の作品の中で最もよいものではないかと言っている。
今回上演するグラン・パ・ド・ドゥは、終幕、100年の眠りから醒めたオーロラ姫とデジレ王子の結婚式の場で踊られるもので、古典バレエの大団円にふさわしく、華麗を極め、気品にあふれたものになっている。
音楽:モーリス・ラヴェル
振付:モーリス・ベジャール
装飾的な要素をいっさい排除し、赤い円卓の上の“メロディー”と周囲をとりかこむ“リズム”とがラヴェルの音楽を大胆に象徴するこの作品は、その簡潔さゆえに、踊り手によって作品自体が形を変える。あるときは美の女神とその媚態に惑わされる男たちの繰り広げる“欲望の物語”、あるときは異教の神の司る“儀式”......。聖と俗の間を自在に往き来し、踊り手の本質をさらけだすこの作品は、初演以来半世紀の間に、多様な姿を見せてきた。
演出もさまざまであり、初演の際は、“メロディー”の女性を取り巻いて“リズム”の男性たちが配された。やがて男性の“メロディー”と女性の“リズム”、そして“メロディー”“リズム”ともに男性が踊る演出が生まれている。
「このあまりにもよく知られた曲が、いつも新鮮に聞こえるのは、その単純さゆえである。スペインというよりむしろ東洋にその源をもつメロディーは、メロディーそのものの上にさらに渦を巻いてゆく。しなやかで女性的、かつ情熱的なものを象徴する。このメロディーは、必然的に単調なものとなっている。男性的なリズムは、つねに一定のものを保ちつつ、その量と勢いを増すことによって、音の空間をむさぼり、ついにはメロディーをも呑み込んでしまうのである。」
— モーリス・ベジャール
音楽:リッカルド・ドリゴ
振付:マリウス・プティパ
詩人バイロンの物語詩に想を得た壮大なグランド・バレエ「海賊」は、クラシックの中でも楽しさと見どころが詰まった作品。多様な文化が混ざり合うバザール(市場)、海賊たちの根城である島、パーシャ(太守)のハーレムを舞台に、海賊の首領コンラッドと美女メドーラを中心とした愛と冒険の物語が展開していく。
今回上演するパ・ド・トロワは、第2幕、“海賊が潜む洞窟”で繰り広げられる宴のなかで、コンラッド、メドーラ、コンラッドの奴隷アリの3人によって踊られる。
音楽:リッカルド・ドリゴ
振付:マリウス・プティパ
天界から降りてきた娘と貴族の青年との恋物語からとられたパ・ド・ドゥ。1889年1月、マリインスキー劇場で初演された。舞台は古代インド。天界の女王チターニヤは、娘のエッラを風の神ヴァイユとともに下界に送り出す際、星をタリスマン(お守り)として持たせた。万が一これをなくした時は、見つけた者本人から返してもらわないと、永遠の命を約束するタリスマンの効力は消えるというが、下界で貴族ヌレディンと出会ったエッラは、そこで星を落としてしまう。エッラを愛するようになったヌレディンは、間近に迫る王の娘との結婚をとりやめ、ついにはエッラに星を差し出し、下界にとどまってくれるよう懇願する。不憫に思ったエッラは、星を手放し、ヌレディンの胸にとび込む。
音楽:エクトル・ベルリオーズ
振付:モーリス・ベジャール
シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を劇中劇の手法で展開するベジャールの代表作のひとつ。何もない舞台の上で、ダンサーたちが練習をはじめる。喧嘩が始まり、バレエの指揮者がそれを鎮める。そして彼らに愛と憎しみという題で『ロミオとジュリエット』を聞かせ、それが劇中劇の形で展開される。エピローグでは何もない舞台の上に、ダンサーたちが練習のために入ってくる。そして声。「若者よ、恋をしよう。そして、争いはやめよう」。今回上演するのは全編の中から、ロミオとジュリエットによる“パ・ド・ドゥ”である。