アレクサンドル・プーシキン原作による全3幕のバレエ

「オネーギン」

振付・演出:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
編曲:クルト=ハインツ・シュトルツェ
装置・衣裳:ユルゲン・ローゼ

photos: Roman Novitzky / Stuttgart Ballet, Stuttgart Ballet

熱い思いと拒絶の間で揺れ動く男女の逡巡の物語

 天才振付家ジョン・クランコがプーシキン原作の格調高いすれ違い物語「オネーギン」を題材に生み出した奇跡のドラマティック・バレエは、世界屈指の名門バレエ団がこぞって上演し、世界中のダンサーが踊ることを切望してやまない傑作です。

 1820年代のロシア。素朴な人々が暮らす田舎と華やかな帝都ペテルブルクを舞台に、ロシアの理想の女性と称えられる誠実なタチヤーナと憂鬱の貴公子オネーギンの悲劇的な恋の行方がチャイコフスキーの同名オペラとは別の叙情豊かな音楽にのせて描かれます。タチヤーナとオネーギンをめぐる出来事がまるで映画が進むように流暢に進んでいく中、現れるのは全編の白眉ともいえる二つの鮮烈な場面。オネーギンを慕うタチヤーナの初恋の高まりを描く第1幕最後の“鏡のパ・ド・ドゥ”と、すれ違ってしまった二人の恋の葛藤を表現する最終場の“手紙のパ・ド・ドゥ”は、観客の胸に迫るドラマティック・バレエを代表する名シーンであり、ガラ公演でも頻繁に披露されます。

 シュツットガルト・バレエ団は1973年の日本での初演以降幾度となく本作を披露してきましたが、踊りを通して物語を展開しながら流麗にことばなきことばを語る振付と演出が、演じるダンサーごとに異なる恋模様を表出させ、上演のたびに新鮮さをもって観客を魅了してきました。2018年以来6年ぶりの上演となる本公演では、前回公演で厭世的な観念を持つオネーギンを魅惑的に演じたフリーデマン・フォーゲルが、歳を重ねさらに成熟した色気をもって再び演じるほか、今のシュツットガ ルト・バレエ団をけん引する演技巧者な実力派ダンサーたちが、狂おしくも美しい物語を詩情豊かに綴ります。ぜひ見比べてご堪能ください!

photo: Hannes Kilian

ジョン・クランコ (1927 ~ 1973)John Cranko

英国ロイヤル・バレエ団の若き振付家だった彼は1961年シュツットガルト・バレエ団の芸術監督として招かれる。機智に富んだ多彩な作品が人気を博し、マリシア・ハイデを始め広く優秀なダンサーを集め、新作を精力的に創造する。若い恋人たちの物語を生き生きと描く「ロミオとジュリエット」、古典に新しい解釈を加えた「白鳥の湖」、プーシキンの文学をもとにした傑作「オネーギン」、シェイクスピアの喜劇を大胆なイマジネーションと雄弁な語彙で創作した「じゃじゃ馬馴らし」など、登場人物の性格や心理、彼らの会話までをも生き生きと表現するクランコの舞台は、大きな共感と感動をもたらした。1969年カンパニーがニューヨークで行った3週間にわたる初のツアーの歴史的な成功は “シュツットガルトの奇跡”と称えられた。

田舎の地主の娘タチヤーナは、帝都育ちの洗練された青年オネーギンに憧れ、恋文をしたためる。いっぽう若くして人生に飽いたオネーギンは一途なタチヤーナの愛を疎んじ、友人レンスキーをつまらぬ諍いから決闘で殺して失意のうちに去る。
数年後、将軍の妻となったタチヤーナとオネーギンが再会。オネーギンはタチヤーナの気高い美しさに心を打たれ、熱烈に求愛。しかし胸に恋心を残しながらも人妻としての矜持を失わないタチヤーナは、これを拒絶する。

photos: Stuttgart Ballet

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(月-金 10:00~16:00 土日祝・休)

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