「春の祭典」

振付:モーリス・ベジャール
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

20世紀初頭、バレエ・リュスの伝説の渦中で誕生した「春の祭典」は、“現代音楽史上もっとも重要な作品の一つ”と言われるストラヴィンスキーの音楽により、さまざまな振付家によって幾度も蘇りました。なかでも人間の欲望、獣性、闘争を描くことでストラヴィンスキーの音楽を鮮烈に視覚化した、傑作中の傑作と称されるのが、モーリス・ベジャール振付の「春の祭典」です。

photos: Marco Ciampelli, Shoko Matsuhashi
Photos: Yoshihiro Kawaguchi

モーリス・ベジャール

 哲学者の父のもとマルセイユに生まれる。パリで自らの カンパニーを立ち上げ、振付家として活動を始めた。1959年ブリュッセルのモネ王立劇場で『春の祭典』の衝撃的な成功をきっかけに、翌年「20世紀バレエ団」を設立。87年に本拠地をスイスのローザンヌに移して名称を現在のものに改めた。死の直前まで精力的に取り組んだ創作の数は300をゆうに超す。

「月に寄せる七つの俳句」

振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:アルヴォ・ベルト、ヨハン・セバスティアン・バッハ

ジョン・ノイマイヤーが東京バレエ団創立25周年記念公演のために創作した作品。大学で文学を修めたノイマイヤーは、東京バレエ団初のオリジナル作品を手がけるにあたり、“俳句”をテーマとして選択。松尾芭蕉、小林一茶、与謝蕪村、正岡子規、山口素堂らの数編にもとづき、装置、衣裳、照明のすべてに至るまでノイマイヤーの秀徹した美意識が染み込んだ、美しい「目で見る俳句」の世界を創り上げた。その年の第11次海外公演でも上演し、西洋と東洋が見事に融合された作品は高い評価を受けた。

Photos: Kiyonori Hasegawa, Arnold Groeschel
Photo: Kiran West

ジョン・ノイマイヤー

 1939年、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー生まれ。コペンハーゲン、ロンドンの英国ロイヤル・バレエ学校でバレエを学び、1963年にシュツットガルト・バレエ団に入団。ソリストとして活躍するとともに、振付を手がけた。1969年、フランクフルト・バレエ団芸術監督に就任し、間もなく『くるみ割人形』、『ロミオとジュリエット』などを発表し、センセーションを巻き起こす。1973年、ハンブルク・バレエ団芸術監督、振付家に就任し、同団をドイツをリードするカンパニーにまで成長させ、国際的な評価を獲得した。
 振付家としては、現代的でドラマティックな作品を追求するいっぽうで、バレエの伝統を守り続けている。物語バレエの新たなヴァージョンとともに、シンフォニック・バレエ、とくにグスタフ・マーラーの音楽や宗教曲にいたるまで幅広く手がけている。近年のハンブルク・バレエ団での初演作品に『タチヤーナ』(2014)、『ドゥーゼ』(2015)、『アンナ・カレーニナ』(2016)などがある。
 ドイツ連邦共和国功労勲章、フランス芸術文化勲章を受章。2006年にはニジンスキー賞、2008年にドイツ記念ダンス賞(ドイツダンス職業協会25周年記念特別賞)を受賞。2015年、稲盛財団より京都賞(思想・芸術部門)を授与された。

「小さな死」

振付:イリ・キリアン
音楽:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

モーツァルトの没後200年にあたる1991年、ザルツブルク音楽祭のために創作された。モーツァルトが作曲したこのうえなく美しく有名な二つのピアノ協奏曲(第23番、第21番)から、ゆったりとした楽章が選ばれた。キリアンは選曲についてこう語っている。「熟考の末に選り抜いた音楽で、何かを挑発したり、意味深長な動機を示そうとしたりしているのではない。神聖なるものが存在しない、残酷さや横柄さをいたるところで目にするこの世界で、私たちが生活を営み、仕事をしているということを、私なりのやり方で示そうとした。舞台で用いられる古代の彫像のようなトルソーには、頭部と四肢がない。それらは故意に切り落とされたものだが、けっして彫像本来の美が損なわれることはなく、創造者の力強い才能が保たれている」舞台には、6人の男性と6人の女性、6本の剣が登場する。剣はダンサーたちのパートナーのように動いたかと思うと、生身のダンサーよりもはるかに気難しく、融通がきかない一面も見せる。剣は、物語のプロットよりも存在感を放つシンボルなのだ。攻撃性、性的能力、エネルギー、沈黙、洗練された無分別、傷つきやすさ。どれもが、この作品で重要な役割を担っている。現代の「Petite Mort」は直訳すれば「小さな死」だが、フランス語とアラビア語ではオルガスムスを示唆する言葉である。

Photos: Marco Ciampelli, Shoko Matsuhashi
Photo: Anton Corbijn

イリ・キリアン

1947年、チェコスロヴァキア生まれ。9歳でダンスを始め、プラハ国立バレエ学校で学ぶ。1962年よりプラハ・コンセルヴァトワールで学ぶ。 1967年に奨学金を得て英国ロイヤル・バレエ学校に入学した。翌1968年、ジョン・クランコのすすめでシュツットガルト・バレエ団に入団。ソリストとして活躍しながら、振付の才能を認められ、7年間の在団中に、初の振付作品『パラドックス』をはじめ、いくつもの作品を発表し、成功を収めた。その後、ネザーランド・ダンス・シアター(NDT)のために『見る人々』『スツールゲーム』『沈める寺』を創作。1975年にはNDT 副芸術監督に就任した。
 1978年には『シンフォニエッタ』を発表、NDTを国際的な舞台へと導いた。同年、NDT II を創設し、若手ダンサーに活躍の機会を与え、技術の向上とその才能を伸ばすことを促した。1991年には40歳以上のダンサーによるNDTIIIを創設し、3つのカンパニーを擁する世界でもユニークな団体となった。
 1999年にNDTの芸術監督の職を退き、アーティスティック・アドバイザーおよび常任振付家として活躍、2010年にカンパニーから離れるまで、数多くの作品を創作。キリアンはNDTに在籍した30年以上にわたって70以上もの作品を創作、このカンパニーに世界的名声をもたらした。
 日本でも、初期の代表作『シンフォニエッタ』をはじめ、『シンフォニー・イン・D』『回帰』『ヌアージュ』『失われた土地』『詩篇交響曲』などが紹介された。1994年には、東京バレエ団に『パーフェクト・コンセプション』を振付けた。これはNDTとシュツットガルト・バレエ団以外のカンパニーに振付けた初めての作品である。
 フランス政府より芸術文化勲章コマンドゥール、オランダ王国オレンジ・ナッソウ勲章オフィサーを受章、ヴェネツィア・ビエンナーレ金獅子賞、ニジンスキー賞、ブノワ賞など数々の受賞歴がある。

NBSチケットセンター 
(月-金 10:00~16:00 土日祝・休)

03-3791-8888

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