

2011年の春は、花の都のオペラとともにやってくる!
いまなおダ・ヴィンチやミケランジェロの息づかいが聞こえるようなルネサンスの街フィレンツェ。芸術作品がぎっしり詰まった宝石箱のようなこの街は、オペラ発祥の地でもあります。フィレンツェの地名は、ラテン語で花の女神フローラの街を意味するフロレンティアに由来します。春のフィレンツェはルネサンス絵画の代表作ボッティチェリの「プリマヴェーラ」の世界そのままに、ゼフュロスの風に乗って、美しい花の女神フローラがこの地に花びらを撒き散らしているような、まさにこの世の楽園です。
フィレンツェの音楽活動の拠点がフィレンツェ歌劇場であり、ここを中心にくり広げられる「フィレンツェ五月音楽祭」は、68年前に始められたもので、バイロイト音楽祭、ザルツブルク音楽祭と並ぶヨーロッパの三大音楽祭として有名です。 4度目を数えるフィレンツェ歌劇場の来日公演は、イタリア統一150周年を記念し、イタリア・オペラの二大作曲家、ヴェルディとプッチーニの代表作『運命の力』と『トスカ』の2本を携えての5年ぶりの実現となります。桜の開花に先がけてフィレンツェの春を撒き散らし、オペラ・ファンを夢見心地にさせてくれます。 オペラ上演の出来は指揮者の力量で決まるといって過言ではありません。オーケストラやコーラスを統率するのはもちろんのこと、出演歌手を決めるのも指揮者ですから、ズービン・メータの眼鏡にかなった歌手は、折り紙つきの実力者なのです。メータとフィレンツェとの結びつきは、40年以上前にさかのぼります。誰からも「マエストロ」と呼ばれて尊敬され、愛されている存在です。一方、メータは世界中を飛び回って活動していますが、フィレンツェの郊外、トスカーナの景観を一望できる丘に居を構えています。このことからも、いかにメータがこよなくフィレンツェを愛しているかがわかります。 2011年はイタリア統一150周年の記念の年。それに合わせて、フィレンツェ歌劇場は新たに38歳のフランチェスカ・コロンボ女史を総裁に迎え、新しいオペラハウスを建設中です。今後ますますフィレンツェはオペラの生地として、イタリア・オペラの発展に重要な役割を担っていくことになるでしょう。今回の日本公演期間中、3月17日の『トスカ』東京公演初日がイタリア統一が宣言された日にあたります。フィレンツェ歌劇場はオペラを生んだ芸術の都の誇りと威信をかけて、日本の観客にイタリア・オペラの究極の醍醐味を届けてくれます。