英国ロイヤル・バレエ団 2008年日本公演 最新情報

Home > ArchiveList | インタビュー | 岩城京子ロンドン取材 > マリアネラ・ヌニェス(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル) インタビュー

マリアネラ・ヌニェス(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル) インタビュー

演劇・舞踊ライター、岩城京子さんによる、インタビュー第2弾はマリアネラ・ヌニェス。今回の日本公演で、『シルヴィア』『眠れる森の美女』の両作品に主演するヌニェスの魅力に迫ります


マリアネラ・ヌニェス インタビュー
岩城京子(演劇・舞踊ライター)

彼女が舞台に登場したとたん、花咲き匂うような春がその場に訪れる。現ロイヤル・バレエ団の最年少プリンシパルであるマリアネラ・ヌニェスは、瑞々しく愛くるしくエネルギーに満ちた表現をその強靭な技術力によって視覚化し、劇場中の観客を瞬時に恋に落とすことができる。彼女が『シルヴィア』の最終幕でアミンタとの愛に満ちたパ・ド・ドゥを踊るのを目の当たりにし、知らずのうちに暖かな笑顔がこぼれてしまわない観客はいないだろう。アルゼンチンのコロン劇場バレエに弱冠14歳で入団して以来「ずっとバレエに恋し続けているの!」と目を輝かすマリアネラ。今回の来日公演で日本の観客は、そんなチャーミングな彼女の全幕物をはじめて目にする機会を得る。

Sylvia 5.jpg
『シルヴィア』 シルヴィア

---あなたはアルゼンチンでバレエを習い始め14歳のときにプロの道を歩み始めました。その早熟なキャリアの経緯をまず簡単に教えてください。

自分でもこれは驚きなんですが、私は6歳のときにすでに「プロのダンサーになる」と母親に宣言していたんですね(笑)。だから8歳でコロン劇場バレエ学校に入学して、5年間スクールに通って、14歳のときにカンパニーに入団したわけですけど。自分としては「着実に自分の目標に近づいているな」と思うだけで、特に早熟であるという意識を持つことはありませんでした。ちなみに私は在学中からカンパニーのリードダンサーであるマキシミリアーノ・グエラと踊らせてもらう機会に恵まれていたんですけど。一度、彼とは日本の『世界バレエフェスティバル』(97)にも参加したことがあるんですよ。あのとき私はまだ...、15歳だった! で、話を戻すなら、そのあと私は年間27公演しか踊れないアルゼンチンのカンパニー状況に少し不満を抱くようになって。シルヴィ(ギエム)やダーシー(バッセル)やヴィヴィアナ(デュランテ)といった私の大好きなダンサーたちがみな在籍していたロイヤル・バレエを目指すことにした。ただ(アンソニー)ダウエルに入団許可をもらったとき、私はまだ15歳だったから。年齢制限から1年間、ロイヤル・バレエ・スクールに通う必要があった。『世界バレエフェスティバル』に出演した2ヶ月後にスクールでバーレッスンを受けている、というのは当時の私にとってはかなり飲み下しがたい現状だったけれど。今となっては逆にとても良い経験をさせてもらったと思っている。もし仮にあのまま何の疑問も持たずにトントン拍子にキャリアを積んでいたら、私はいまある自分の成功をそれほど感謝できていなかったと思う。

Sylvia 9.jpg
『シルヴィア』 シルヴィアとアミンタ(ルパート・ペネファーザー)

----19歳でプリンシパルに任命されて以後、数々の主要演目を踊られてきました。特にあなたの場合はキトリ、スワニルダ、オーロラ、リーズなど、どちらかというと悲劇よりもハッピーな演目を踊ることが多いですね。

そうなの! というのも私はいつでも舞台に立つと自然と笑顔になってしまう。バレリーナとしてそこに立てていることが嬉しくて嬉しくてしょうがなくて、ハッピーな笑みがこぼれてきてしまう。だから今回日本で踊る『シルヴィア』も、体力的には本当に過酷でズタボロに死にそうな状況になるのだけど。私にとっては舞台にいるときが人生最高の瞬間だから。そのまま本当に疲れ果ててステージ上で死んでしまっても......本望かもしれない(笑)。まあそれは冗談だけど、でも本当にアシュトンの振付は観客が思う以上に技術・体力ともに大変。彼の振付はあまりにも音楽性が美しく、あまりに上半身の使い方が優雅だから、人はどれだけ難しいステップを下半身でしているかを意識することがないんです。けど実は...、特に1幕などは、とんでもなく高度な技術を求められる。つまりアシュトン作品というのは、私の分析では、高難度なテクニックを優雅さの後ろに「隠す」ことであの独自の美しさを生み出しているんです。

(c)BC20060525200.jpg
『眠れる森の美女』オーロラ

----日本では『シルヴィア』のほかに『眠れる森の美女』でも主演されます。あなたのオーロラは数年前に劇評で「1946年の初演以後、ロイヤル・バレエ史上最高のオーロラ」と讃えられましたね。

あれは今までのバレエ人生で最高の賛辞でした! でも本当に私はオーロラを踊るのが大好きなんです。とくに技術面や身体面でピークを迎えている25歳の今だからこそ、こうした古典演目には全力で挑みたいと思う。もう少し歳を重ねたら、こうした純度の高いクラシックを踊るのは難しくなってしまうかもしれませんからね。7月の日本公演は本当に楽しみ。私の踊りを観てひとりでも多くの方がいつもより幸せな気持ちになって劇場を後にしてくれたら、これほど嬉しいことはないです。

Home > ArchiveList | インタビュー | 岩城京子ロンドン取材 > マリアネラ・ヌニェス(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル) インタビュー

Feeds

Return to page top