東京バレエ団「ラ・シルフィード」 全2幕

Story

 物語はスコットランドのある農村での出来事。ジェイムズとエフィーの結婚式の当日。舞台の右側には高いステンドグラスの窓、左側には大きな暖炉、正面奥には、家族の住む二階に通じる階段が見える。正面中央にはアームチェアがあり、タータンチェックのキルト姿の若い農夫ジェイムズが、椅子に座ってまどろんでいる。その傍らには、背中に孔雀の羽をもち、頭に花飾りの冠をつけたシルフィードがひざまずいている。

 シルフィードが立ち上がる。そのひそやかな動きは、この世のものではないことを示している。ジェイムズの周りをすうっと飛び回るとアームチェアの後ろへ周り、優しさとわずかに悪戯心のまざった眼差しで若者をみつめているが、ついにジェイムズの顔に口づけをする。シルフィードはジェイムズに恋をしてしまったのだ。ジェイムズが目覚めて周りを見回すが、すでにシルフィードは暖炉に消えている。

 そのとき、ジェイムズの母親に腕をとられて、エフィーが友人たちと部屋に入ってくる。ジェイムズの友人ガーンもひそかにエフィーに思いを寄せている。ガーンはエフィーに駆け寄りぎこちなく挨拶するが、エフィーの眼にはジェイムズしか映らない。エフィーの友人が婚礼の贈り物をもってくる。エフィーが友人からの贈り物を身につけたにもかかわらず、ジェイムズの眼はシルフィードが消えた暖炉に注がれている。そこに現われたのはシルフィードならぬ醜い魔法使いのマッジである。ジェイムズはマッジを怪しんで追い出そうとするが、友人たちは手相をみてもらうためマッジの周りを取り囲む。エフィーはジェイムズと幸せになれることを期待し、マッジに手相をみてもらうが「ジェイムズとは決して幸せにはなれない」と宣言され、哀しみにくれる。ジェイムズは「そんなインチキな占いを信じるな」とエフィーを慰める。自分もみて欲しいと言い出したガーンの手相をみて、マッジは「お前こそエフィーを幸せにできるだろう」と言う。ジェイムズは怒り、マッジを家から追い出す。ガーンだけがマッジの予言に期待をかける。

 結婚式の準備のため、友人たちが部屋から出て行き、ジェイムズがひとりきりになる。そこで不意に窓が開き、シルフィードが悲しげに入ってくる。ジェイムズとエフィーの結婚のことを知ったのだ。シルフィードは床に倒れて泣く。何気なく入ってきたガーンは、ジェイムズがシルフィードにやさしく口づけするのを見て、大声で友人たちを呼び寄せる。ジェイムズはあわててシルフィードをアームチェアにのせ、毛布で隠す。皆が集まってきたところで、ガーンは得意になって毛布をはぎ取る。しかし、そこには誰もいない。エフィーはガーンを怒り、若い娘たちはガーンがジェイムズに嫉妬しているからだと大笑いする。

 やがて、広間では大勢の客たちによって祝宴が繰り広げられる。ダンスの間もシルフィードは何回となくジェイムズのそばを飛び回り、ジェイムズはエフィーのことが眼に入らない。やがて、結婚指環をエフィーに渡そうとするジェイムズから、シルフィードは指環をかすめ取って姿を消す。ジェイムズはその後を追う。悲嘆にくれるエフィーの前に、愛を誓うガーンが現れる。

 ジェイムズはシルフィードの後を追って、彼女の住処である森に来る。シルフィードとその友達は、不思議な世界に気を呑まれているジェイムズの周りを飛び回る。シルフィードに夢中になっているジェイムズは彼女を懸命に捕まえようとするが、逃げられてしまう。シルフィードは爪先で軽やかに動き、指を唇にあてて空気のように静かに飛び回り、梢の間をすり抜けて茂みの上を飛び、姿を消す。そこにマッジが現れて「あの女を捕らえたいのなら、このベールで包んでおしまい。そうすれば羽が抜け落ち、女は永遠にお前のもの」と魔法のベールを渡すと姿を消す。

 ベールに魅せられたシルフィードは、それを取ろうとジェイムズを追いかける。ジェイムズはそれをかわして逃げ回る。シルフィードは、ベールをくれたら茂みの枝にある鳥の巣をとってくるからと、ジェイムズに迫る。ジェイムズはこれを断り、隙をみてシルフィードをベールで包んでしまう。シルフィードはベールから逃れるためにもがき、放して欲しいと乞うが、やがて力尽き、羽が地面に落ちる。

 ジェイムズを心から愛していたシルフィードは、指環を返し、エフィーのもとに帰るように告げると、ジェイムズの腕の中で息絶える。シルフィードは仲間たちの手で空高く運ばれていく。突如、マッジが現れ、ジェイムズに森のかなたを指さす。そこにはエフィーがガーンと腕を組み、友人たちに祝福されながら旅に出る光景が見える。全てを失ったジェイムズは、気を失い、その場に倒れる。



Photo:Kiyonori Hasegawa

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