躍進する東京バレエ団 vol.7 The Tokyo Ballet

 昨年末ベジャールの『くるみ割り人形』ビムで一躍注目された。巨匠みずからの少年時代を回想した名作の主人公である。幕開け、早世した母親を思いクリスマス・ツリーのそばにひとり寂しくたたずむ様子からして心惹かれる。純情な心根を巧まず伝え秀逸だ。夢で母親と再会し踊るパ・ド・ドゥは哀切極まりない。
 2008年入団。翌々年のパトリック・ド・バナ新作『ホワイト・シャドウ』世界初演に際しソリストに抜擢されるなど着実にキャリアを積む。『ギリシャの踊り』(ベジャール振付)では、パ・ド・ドゥ(二人の若者)を力強く爽やかに踊って鮮烈だった。
 持ち味はビム役で示したように若さに似あわぬ表現力だろう。新春に挑んだ子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』の語り部カタラビュット(式典長)でも大活躍! 当意即妙のアドリブも織りまぜ会場を沸かせ、おとぎ話の世界へと誘いこんでいく。
 踊り・演じ・魅せる本格派。さらなる躍進が望めそうな有望株だ。

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