ウィーン室内合奏団 Wiener Kammerensemble

 世界に冠たるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、そのなかから宝石のようなエッセンスを取り出して聴かせてくれるのが“ウィーン室内合奏団”だ。  2014年4月に2年半ぶりの来日が実現する機会に、代表のタマーシュ・ヴァルガ氏にグループの現状などを聞いた。ウィーン・フィルの首席チェリストとして同楽団を代表する存在であり、独奏、室内楽の他に近年はバイロイト祝祭管弦楽団からも招待を受けるほど、実力と人気を兼ね備えた名手だ。

――来日メンバーが変更され、ウィーン室内合奏団第1ヴァイオリンとしての初来日が期待されていたアルベナ・ダナイローヴァが不参加になりましたが。

「この件は私たちにとっても痛恨の極みで、当初、彼女は積極的にプログラム作りを提案して、いっしょに日本公演の準備をしてきたのに、突然不参加を表明したのです。福島原発の汚染水処理問題により、小さい子供を持つ母親として将来への不安を抱いたことが今回の断念の理由と説明がありました」

――私はヨーロッパと日本における本件での報道の違いを比較することができますが、確かにドイツ・オーストリアでの論調は極端に厳しいものもありますね。

「受け取り方の個人的違いもあるわけで、説得に努めましたが成功しなかったわけです。第2ヴァイオリンのアンドレアス・グロスバウアーは、はじめての子供が生まれることになって、出産に立ち会ってくれるよう夫人から懇願されたのです」

――急遽、代わりの演奏家を立てるのは大変だったでしょうね。

「さいわい素晴らしい二人の演奏家が参加してくれることになったことを、ここで自信を持ってお知らせできます。
 第1ヴァイオリンのヴィリー・ビュッヒラーはウィーンのもうひとつの世界的オーケストラ、ウィーン交響楽団のコンサートマスターであり、日本でもお馴染みのシュトラウス・フェスティヴァル・オーケストラで、ヨハン・シュトラウスのようにヴァイオリンを弾きながら指揮をすることで高い人気を誇っています。室内楽のキャリアも豊富なビュッヒラーこそ、我々のグループのトップに打ってつけの音楽家に違いありません。
 第2ヴァイオリンのギュンター・ザイフェルトは、もう40年以上ウィーン国立歌劇場、およびウィーン・フィルに在籍し、我々とは毎日のようにいっしょに演奏していますから、彼の卓越した音楽性、さらに人格者である面も周知の事実です。アンサンブルの達人としても著名ですよ。
 ウィーンの音楽家は同一の教育を受けているので、所属団体が異なっても音楽の方向性が共通していて、奏法などの技術面のみならず精神的にも息が合います。これは合奏する際の決定的なアドヴァンテージ(有利)ですよ」

――東京で演奏されるプログラムについて。

「Aプロ(4月4日)ですが、我々グループの基本的な楽器編成がシューベルトの「八重奏曲」を演奏するための組み合わせであって、1970年のアンサンブル結成以来、継続的に演奏しています。弾き込めば弾き込むほど味わい深い、本当の名作だと思います。休憩前に演奏する大人のテイスト、ブラームスの「クラリネット五重奏曲」は名手パッヒンガーのクラリネットを堪能するプログラムで、“ウィーンのメランコリー”に浸っていただける一晩になります。
 Bプロ(4月5日)は対照的に溌剌とした“生きる歓び”を前面に出した選曲になっています。「セレナード」、「ディヴェルティメント」は陽気なモーツァルトで、演奏する側も客席も、いっしょに楽しくなること請け合いですね。後半は言わずと知れたウィーンの名物で、ワルツとポルカを交互に組んでコントラストを付けたほか、「くるみ割り人形」ではちょっとエキゾチックにロシア色を加えました。このうち「愛の使者」と「ジョッキー(騎士)ポルカ」は私の編曲ですので(笑)。
 ウィーンの音楽家にとって名刺代わりであるシュトラウスのレパートリーを、とびっきりのエキスパートであるビュッヒラーのリードでお聴かせする“最強”プログラムですから、安心してお任せください(笑)」

――期待がおおいに高まりますね(笑)。




ウィーン室内合奏団 2014年日本公演

東京オペラシティ

2014年
4月4日(金)7:00p.m.(Aプロ)
4月5日(土)1:00p.m.(Bプロ)

入場料[税込]
S=¥8,000 A=¥7,000 B=¥6,000

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