ベートーヴェン 「第九交響曲」


 「ただ一つの名曲が、その生まれた時代だけでなく、はるかのちの時代まで、100年以上にわたって全世界を興奮状態においた例は『第九』しかない」
 これは高名なベートーヴェン学者として知られるヴァルター・リーツラーが残している言葉です。ベートーヴェンの「第九」が初演されたのは1824年、たしかに、100年以上にわたり、世界中で「第九」は多くの人々に興奮、あるいは感動をを与えてきました。
 日本人にとって、最も印象に新しい「第九」の感動といえば、2011年4月のズービン・メータ指揮による「第九」が挙げられるでしょう。東日本大震災の被災者のために行われたチャリティコンサートは、まさにすべての人々の祈りであり、魂を揺さぶる感動をもたらしました。
 ベートーヴェンの「第九」は、周知の通り、第4楽章にシラーの詩が用いられています。1875年、ゲーテと並び称されるドイツの詩人シラーは、人類愛と人間解放をうたった長編詩を書きました。シラーははじめ〈自由に寄す〉と題目をつけようとしていましたが、当時の官憲の弾圧を避けて〈よろこびに寄す〉と変えたといわれています。ここにうたわれているテーマである人類愛や人間の自由、そして平和への思いは、メータとイスラエル・フィルの間に結ばれた絆そのものといえるかもしれません。そして、このテーマは、20世紀最大の振付家と謳われたモーリス・ベジャールにとっても、生涯を通して探求したものであったことから、バレエ「第九」が生まれたのでしょう。
 バレエ作品としてなら、第4楽章だけでも作れそうなものですが、ベジャールは全楽章を用いた大作を振付けました。それはおそらく、偉大な芸術家への敬意、ベートーヴェンが考えた全曲を通しての“あるべき姿”を重んじてのことだったでしょう。ベジャールのこの思いを共有し、誰よりも強いメッセージを込めて演奏できるのはメータ&イスラエル・フィルといえるのではないでしょうか。数多く演奏される機会のある「第九」ですが、ここでの演奏には、ベートーヴェンが「第九」に込めたテーマそのものが現されることになるのです。
 第1楽章では、神秘的な導入部で始まる音楽のなかで身を丸めたダンサー一人ひとりが目を覚ましていきます。ダンサーの生命の要求は劇的な音楽の躍動感とともに広がります。
 第2楽章、炎の色である赤はダンスの本能的な喜びを表すもの。生き生きとしたスケルツォ楽章が繰り広げられます。
 第3楽章は、天上の清らかさを感じさせる美しい音楽のなかで、白い衣裳をまとった愛の表現が踊られます。瞑想のようなゆったりとした時間が流れます。
 第4楽章のフィナーレでは、宇宙全体の喜びをうたいあげます。太陽や光への讃歌と80人にもおよぶダンサーが複雑に渦巻くように動き、情熱的な高まりがクライマックスへと続きます。


東京バレエ団創立50周年記念シリーズ第7弾
モーリス・ベジャール振付 「第九交響曲」

会場: NHKホール

【公演日】
2014年
11月8日(土)7:00p.m.
11月9日(日)2:00p.m.
11月9日(日)6:00p.m.

出演:東京バレエ団/モーリス・ベジャール・バレエ団
指揮:ズービン・メータ
演奏:イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
独唱:クリスティン・ルイス(ソプラノ)/ 藤村実穂子(メソ・ソプラノ)/
ペーター・スヴェンソン(テノール)/アレクサンダー・ヴィノグラードフ(バス)/
合唱:栗友会合唱団 [合唱指揮:栗山文昭]

【入場料(税込み)】
S席=¥39,000 A席=¥34,000 B席=¥29,000 C席=¥22,000 
D席=¥15,000 E席=¥8,000
エコノミー券=¥6,000 学生券=¥4,000

*エコノミー券はイープラスのみで、学生券はNBS WEBチケットのみで 10月10日(金)より発売

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