英国ロイヤル・オペラ 2015年日本公演

 近年、イギリスを代表するバリトン、サイモン・キーンリサイドはヴェルディ作品へとレパートリーの重心を移し、素晴らしい成功をおさめている。特に『ドン・カルロ』のロドリーゴ、『椿姫』のジョルジョ・ジェルモン、『ファルスタッフ』のフォード、『リゴレット』と『マクベス』のタイトルロールでは絶大な賞賛を得ている。『マクベス』は、ウィーンで初めて歌った(2009年)後、ベルリン(2013年)、ミュンヘン(2014年)の舞台にも立った。英国ロイヤル・オペラのフィリダ・ロイド演出には2011年のロンドンに続き、日本公演にも出演することとなった。
 批評家はもとより、熱狂的な聴衆からの賞賛を獲得していることからも、マクベスは、キーンリサイドにとって当たり役であることがわかる。もっとも、彼のマクベスに対する見方は複雑である。
 「初めてマクベス役を演じたとき、私は誰かが“マクベスはそれほど特別な役ではないでしょう”と言ったことを覚えています。でも、私はそうは思いません。『マクベス』が上演される際、多くの注目がマクベス夫人に向くということはあります。しかし、ドラマは一貫してこの夫と妻を並列して描いているのです。マクベスはある意味で弱い人間です。彼は長年兵士として生きてきたし、その功績によって出世もしました。けれども、それこそが、彼は政治家または偉大な思想家ではないということでもあるのです。その点、マクベス夫人は全く異なります。彼女には大いなる野心があります。この対照がドラマの面白さとなっているのです」
 キーンリサイドは、ヴェルディのオペラを演じるためには歌唱力やスコアの深い読み込みだけでなく、“優れた指揮者との絆を結ぶこと”が必要だと考えている。その点、ロイヤル・オペラ音楽監督のアントニオ・パッパーノは申し分ない。
 「強い信頼関係による絆を結べる優れた指揮者が必要です。トニー(パッパーノ)は素晴らしい音楽家で、また『マクベス』は彼にとっても特別な作品であることはたしかです」
 パッパーノ監督の長所は?という質問には「細部にまで注意を払うこと。準備が全てですから!」と即答した。
 キーンリサイドは、今回のプロダクションで、1847年版(フィレンツェ初演版)にある最後のアリアを歌えることをとても喜んでいる。これは、ヴェルディ自身によって1865年の改訂で外されてしまったものだ。
 「私はこのアリアが無駄なものだとは思いません。音楽の美しさもさることながら、たとえば『オテロ』の幕切れを彷彿とさせるようなところだけをとっても、非常に魅力的で興味深い曲です」
 彼はまた、フィリダ・ロイドの演出、特にアンソニー・ワードの舞台美術についても賞賛する。
 「フィリダの演出は本当に素晴らしいものです。優れた舞台美術は、私たちの声が表現するドラマの、明暗のどちら側にも力を与え、色彩豊かなものにしてくれます。この舞台はそうした意味でとても効果的なのです。私はこの舞台に立てることをとても嬉しく思っています」
 キーンリサイドは、これまでに度々来日している。
 「日本の聴衆は侮れません。というのも、すでに多くの優れた歌手が日本を訪れているので、彼らはその素晴らしさを覚えているからです。私は日本にいる間はいつも、歌うこと、演じることに全力を注いできたので、他のことを楽しむ時間なんてありませんでした」
 しかしキーンリサイドは、シェイクスピアを題材とした日本映画、特に、黒澤明が「リア王」にもとづいてつくった映画「乱」はお気に入りとのこと。
 「シェイクスピア作品をよく理解し、そして音楽についてもよく知っている日本の聴衆の前でマクベスを演じることをとても嬉しく思っています。日本の皆さんは、劇と音楽の両方の知識を備えた、理想的な聴衆だと思っています」

          

2015年3月下旬 一斉前売開始予定
英国ロイヤル・オペラ 2015年日本公演
ヴェルディ作曲『マクベス』

指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:フィリダ・ロイド

【公演日】
2015年
9月12日(土) 昼
9月15日(火) 昼
9月18日(金) 夜
9月21日(祝・月)昼

会場:後日発表

【予定される主な配役】
マクベス : サイモン・キーンリサイド
マクベス夫人 : リュドミラ・モナスティルスカ
バンクォー : ライモンド・アチェト
マクダフ : ディミトリ・ピッタス



2015年3月下旬 一斉前売開始予定
英国ロイヤル・オペラ 2015年日本公演
モーツァルト作曲『ドン・ジョヴァンニ』

指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:カスパー・ホルテン

【公演日】
2015年
9月13日(日)昼
9月17日(木)夜
9月20日(日)昼

会場:後日発表

【予定される主な配役】
ドン・ジョヴァンニ : イルデブランド・ダルカンジェロ
レポレロ : アレックス・エスポージト
ドン・オッターヴィオ : ローランド・ヴィラゾン
ドンナ・エルヴィーラ : ジョイス・ディドナート
ドンナ・アンナ : アルビナ・シャギムラトヴァ
ツェルリーナ : ユリア・レージネヴァ
マゼット : マシュー・ローズ

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