英国ロイヤル・オペラ 2015年日本公演 来日直前 彼らが語る注目ポイント!  英国ロイヤル・オペラ日本公演開幕まであとわずか。 今号では、音楽監督アントニオ・パッパーノをはじめ、主要キャストたちの言葉や 最新情報などを交えて、作品の魅力、注目ポイントなどをご紹介します。

指揮

アントニオ・パッパーノ

Photo:Clive Barda

 「『マクベス』は、わたしが愛して止まないオペラです」と語るアントニオ・パッパーノ。ヴェルディが見事に描き出したシェイクスピアの世界は、マジックのように世界が拡大していくことが目に見えるようで、これこそがオペラ『マクベス』の魅力だと語ります。そして、オーケストラに与えられた音楽の革新性についても、豊かな色合いをもつとともに、効果的な無音の使い方が不気味さを醸し出すことがあるのだと。この上なく暴力的で、過激で、ドラマティック。そこに、ヴェルディのトレードマークであるメロディの豊かさが全編に溢れている。鋭い歯をむき出しにして、聴衆に食らいつくのです!」


マクベス

サイモン・キーンリサイド

Photo:ROH / Clive Barda, 2011

 「『マクベス』は、容赦ない深い闇の世界。登場人物は激流のような感情に押し流されます。激情の根底にあるのは、人間の根源的な感情、そして原初の力。シェイクスピアの台詞は、最初の一語からさまざまな情感を吐露させるのです」と、マクベス役で絶大な賞賛を得ているサイモン・キーンリサイドは語ります。英国ロイヤル・オペラのほか、ウィーン、ベルリン、ミュンヘンの舞台でもマクベス役で絶大な賞賛を得ているキーンリサイドですが、なかでも英国ロイヤル・オペラのプロダクションの素晴らしさを認めています。「優れた舞台美術は、私たちの声が表現するドラマの、明暗どちら側にも力を与え、色彩豊かなものにしてくれます。フィリダ・ロイド演出、アンソニー・ワード美術によるこのプロダクションは、そうした意味でとても効果的なのです」


マクベス夫人

リュドミラ・モナスティルスカ

Photo:ROH / Clive Barda, 2011

 ヴェルディの初期の作品に登場するソプラノには、ドラマティックな重い声で敏捷なコロラトゥーラを駆使して歌うことが要求されることが多くあります。『ナブッコ』のアビガイッレ、『アッティラ』のオダベッラ、そしてマクベス夫人役も。これらの難役において、目下第一人者と高い評価を得ているのがリュドミラ・モナスティルスカです。彼女自身、「マクベス夫人役には、技術、音楽、演技の難しい要素が絡み合っています。彼女のキャラクターを捉えるという点でも、強くもあり、また同時に弱くもある人間であることが難しさとなります」と言うマクベス夫人は、“ただものではない!”存在として世界の注目を集めています。


演出

カスパー・ホルテン

 カスパー・ホルテンの演出は、ドン・ジョヴァンニの独創性、危険なまでに破壊的なエネルギーに焦点が当てられています。ホルテンの考えるドン・ジョヴァンニは「彼は知り合った女性が心の中で望んでいること、夢や欲望を読み取ることができ、一瞬だけその夢をかなえてあげることができる。でもそれは幻想で、女性たちは彼が創り出した世界を信じて、後で傷つくのです」。プロジェクション・マッピングによって、さまざまな場面を次々と描き出すのも、現実と非現実の世界を彼の突き進むエネルギーとしてスピーディに描くために最適という考えからです。
 去る6月のロンドン公演では、2014年の初演とは異なり、フィナーレのアンサンブルをすべてカットしたことが話題を呼びました。日本公演では、「指揮者、出演者とともに検討する」とのこと。乞うご期待!


ドン・ジョヴァンニ

イルデブランド・ダルカンジェロ

 「ドン・ジョヴァンニ役の難しさは、声そのものに官能性をもたせなければならないこと」と言うイルデブランド・ダルカンジェロ。まるでダルカンジェロのためにあるような役! と思うファンは少なくありません。さらに、演じることについては、「ドン・ジョヴァンニは刹那に生きているのだと思う。何が起こったとか、何かを計画するとか、未来も過去も考えたりしない。その瞬間瞬間が、まるで生涯の最期の瞬間であるように」と語ります。客席の女性たち、ダルカンジェロの官能的なドン・ジョヴァンニにご用心!


ドンナ・エルヴィーラ

ジョイス・ディドナート

 「ドンナ・エルヴィーラは、登場人物のなかで最も正直でしょう」と言うジョイス・ディドナート。モーツァルトと台本作家ダ・ポンテによって、ドンナ・エルヴィーラには大きなヒューマニティが与えられているのだとも言う。「ドンナ・エルヴィーラはとてもスペイン的な激しい気性の持ち主だから、彼女のありのままを思いっきり出せればよいのだと思います。声楽的には大変ですが、リアルで正直で情熱的になれます」。


ドン・オッターヴィオ

ローランド・ヴィラゾン

Photo:ROH / Bill Cooper

 去る6月、ロンドンでの『ドン・ジョヴァンニ』で、演出付き上演では初めてとなるドン・オッターヴィオ役を演じたローランド・ヴィラゾンは、その甘い歌声と深い表現力で大絶賛を獲得しました。自身が演出を手がけることもあるヴィラゾンは、「カスパー・ホルテン演出の『ドン・ジョヴァンニ』は、知的で、強烈で、そして美しい!」と、このプロダクションを熱烈にアピールしています! オペラを愛し、モーツァルトを愛するヴィラゾンは、「私たちは美しい音楽宇宙を創り上げています。それはモーツァルトが私たちに求めたことであり、みなさんもまた、その宇宙の一部になるのです」と、熱いメッセージを寄せてくれました。


ドンナ・アンナ

アルビナ・シャギムラトヴァ

Photo:Bill Cooper

 6月、ロンドン公演『ドン・ジョヴァンニ』で、アルビナ・シャギムラトヴァ演じるドンナ・アンナは、豊かな声、気高さと情熱によって、これぞ適役と絶賛されました。カスパー・ホルテンの演出を「美しくエネルギッシュで緊張感あふれるドラマティックなプロダクション」と紹介し、日本で実現するアントニオ・パッパーノとの初共演を楽しみにしているとのことです。


ツェルリーナ

ユリア・レージネヴァ

Photo:Bill Cooper

 「ツェルリーナは、若くて、かわいくて、ハッピーで、人生の幸せを謳歌している。いまの私の背丈にぴったりあった役で嬉しく思っています」と語ったユリア・レージネヴァ。英国ロイヤル・オペラへのデビューでもあった6月のロンドン公演『ドン・ジョヴァンニ』では、自身の言葉通り、ハッピーで愛らしいツェルリーナを演じ、喝采を浴びました。「若さと喜びを満喫している、でも、その裏側に危険が孕んでいるというムードも作りたい」と考えていたことが、見事に実現していることを、日本公演の舞台でも証明してくれることでょう。


2015年日本公演
英国ロイヤル・オペラ
ヴェルディ作曲『マクベス』


指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:フィリダ・ロイド

【公演日】

2015年
9月12日(土)3:00p.m
9月15日(火)3:00p.m
9月18日(金)6:30p.m.
9月21日(月・祝)1:30p.m.

会場:東京文化会館

【予定される主な配役】

マクベス : サイモン・キーンリサイド
マクベス夫人 : リュドミラ・モナスティルスカ
バンクォー : ライモンド・アチェト
マクダフ : テオドール・イリンカイ

【入場料[税込]】

S=¥55,000 A=¥48,000 B=¥41,000 C=¥33,000  D=¥26,000 
エコノミー券=¥10,000 学生券=¥8,000

*エコノミー席はイープラスのみで、学生席はNBS WEBチケットのみで8月7日(金)より受付。

2015年日本公演
英国ロイヤル・オペラ
モーツァルト作曲『ドン・ジョヴァンニ』


指揮:アントニオ・パッパーノ
演出:カスパー・ホルテン

【公演日】

2015年
9月13日(日)3:00p.m
9月17日(木)6:30p.m.
9月20日(日)1:30p.m.

会場:NHKホール

【予定される主な配役】

ドン・ジョヴァンニ : イルデブランド・ダルカンジェロ
レポレロ : アレックス・エスポージト
ドン・オッターヴィオ : ローランド・ヴィラゾン
ドンナ・エルヴィーラ : ジョイス・ディドナート
ドンナ・アンナ : アルビナ・シャギムラトヴァ
ツェルリーナ : ユリア・レージネヴァ
マゼット : マシュー・ローズ
騎士長 : ライモンド・アチェト

【入場料[税込]】

S=¥55,000 A=¥48,000 B=¥41,000 C=¥33,000  D=¥26,000 
エコノミー券=¥10,000 学生券=¥8,000

*エコノミー席はイープラスのみで、学生席はNBS WEBチケットのみで8月7日(金)より受付。