東敦子演じる“世界一の蝶々さん”
DVDリリース

　東敦子は、1961年にイタリアに留学、イタリア歌劇の歌唱と演技をきわめ、20余の国、90におよぶ歌劇場でプリマドンナとして活動した日本を代表するソプラノ。現在では、海外で活躍するアーティストも珍しくありませんが、世界の一流歌劇場に日本人歌手が主演で出演することはかなり稀少です。東敦子は、1971年ウィーン国立歌劇場、1978年ボリショイ劇場に、日本人として初めての出演を果たしました。そればかりか、世界二十数カ国でおよそ500回の主演を果たした蝶々さんは、世界一と賞賛されました。
　1978年以降、東敦子は日本を拠点としてオペラの舞台にも立ちましたが、彼女の素晴らしさを一早く日本の舞台に！と考えたのは佐々木忠次でした。1973年４月、佐々木忠次制作による公演が東京文化会館で実現したのです。
　このときの収録映像が奇跡的に発見されたことから、DVDの制作が実現しました。オペラを歌う、演じるということはどういうことか…‥東敦子が生涯をかけて追究したその舞台が放つ迫力と魅力には、あらためて圧倒されます。スター歌手への注目や奇をてらった演出などへの話題が盛り上がることが多い現在、作品や芸術への愛情と献身によってつくりあげられるものの価値をあらためて感じさせられます。