情熱的で厳格なムーティと
ヴィルトゥオーゾ・オーケストラによる至芸を聴け!

リッカルド・ムーティは、2005年にミラノ・スカラ座の音楽監督を離任してからは、自分の時間を持つため、特定の歌劇場やオーケストラのシェフになるつもりはなかった。しかし、シカゴ交響楽団からの熱心な招きに応じ、2007年9月に32年ぶりに同響を指揮。早くも翌2008年5月に、2010年秋に第10代シカゴ響音楽監督に就任することが発表された。情熱的かつ厳格なムーティと全米トップのヴィルトゥオジティと規律を誇るシカゴ響との相性がよほど良かったのであろう。就任前の2009年1月にムーティは、十八番であるヴェルディの「レクイエム」を取り上げる。そのライブ録音はグラミー賞を獲得した。

そして、ムーティ&シカゴ響が満を持して日本にやってくる。ベートーヴェン、チャイコフスキーなど、このコンビの魅力が満喫できるプログラム。ムーティの円熟を聴くにはベートーヴェンが最適であろう。昨年9月、ムーティはシカゴ響のシーズン・オープニングでベートーヴェンの交響曲第9番を指揮。その演奏はインターネットを通じて全世界に配信された。ゆったりとしたテンポによるスケールの大きな堂々たる「第九」は圧倒的だった。交響曲第5番「運命」でも、まさに巨匠の風格の感じられる演奏を披露してくれることだろう。チャイコフスキーはムーティにとって最も重要な作曲家の一人である。1970年代後半にフィルハーモニア管弦楽団と交響曲全集を録音。2014/2015シーズンにシカゴ響とチャイコフスキー交響曲全曲演奏に取り組んだばかり。今回の交響曲第4番ではそのツィクルスの成果というべき新たな解釈が聴けるだろう。マーラーは、シカゴ響が最も得意とするレパートリー。交響曲第1番「巨人」ではシカゴ響の華麗なブラスの活躍が楽しみだ。ヒンデミットの「弦楽と金管のための協奏音楽」でも弦楽パートの鉄壁なアンサンブルと金管パートの名人芸が堪能できるだろう。

相思相愛の最強コンビの初来日が本当に待ち遠しい。