20世紀後半、バレエに愛と変革をもたらしたカリスマ振付家モーリス・ベジャール。
今年はそのベジャール没後10年と同時に、ベジャール率いる20世紀バレエ団(のちにモーリス・ベジャール・バレエ団と改称)が1967年に初来日を果たしてから50年目を迎えます。この記念すべき年に、モーリス・ベジャール・バレエ団と、ベジャールが「第二の自分のバレエ団」と呼んだ東京バレエ団が協力して、11月22日のベジャールの命日を含む2日間にわたって特別合同ガラ〈ベジャール・セレブレーション〉を開催します。
ダンスは、たんなる娯楽や美の昇華ではなく、人々が生を確認するための芸術。ダンスによって人間は、本来の生きる力を取り戻すことができる。そう強く意識していたベジャールは、多様な文化や題材からインスピレーションを得るとともに、衝撃と陶酔、そして大きな愛に満ちた数多くの作品を創作し、全世界の観客を感動させました。
またアジアやアフリカの文化に強い関心を抱いていたベジャールは、とりわけ日本を愛しました。自身のバレエ団とともに来日するだけでなく、東京バレエ団とともに多くの仕事を行い、仮名手本忠臣蔵を題材とした「ザ・カブキ」や、三島由紀夫を題材とした「M」といった名作を生み出して、日本と深く結ばれたのです。
モーリス・ベジャール・バレエ団は今年、没後10年記念公演を世界各地で行っていますが、東京バレエ団の参加を得て、東京で行われる今回の合同ガラは、そのハイライトとなります。どうぞこの〈ベジャール・セレブレーション〉に参加して、舞台上に転生するベジャールとの再会を果たしてください!
モーリス・ベジャール・バレエ団と東京バレエ団
モーリス・ベジャール・バレエ団(BBL)と東京バレエ団は、ベジャール作品で結ばれた兄弟カンパニーとして、これまでたびたび合同ガラを上演してきました。
初の試みとなったのは1988年の〈パリ-東京〉。ゲストとして歌舞伎の坂東玉三郎とパリ・オペラ座バレエ団のパトリック・デュポンが参加。ベジャールと玉三郎がが「パリのよろこび」を、玉三郎とデュポンが歌舞伎に想を得たベジャール振付の「黒塚」を、そしてBBLのスターだったジョルジュ・ドンと玉三郎が「道成寺」で共演するという、豪華な顔合わせと凝った趣向が話題になりました。このとき東京バレエ団の斎藤友佳理と高岸直樹がBBLのダンサーとともに「舞楽」を初演。最後は勇壮な「ザ・カブキ」の討ち入りで締めくくられました。
2度目の合同ガラの機会は、2011年の〈奇跡の饗演〉。巨匠ズービン・メータが指揮する名門イスラエル・フィルがオーケストラ・ピットに入っての、「ペトルーシュカ」「愛が私に語りかけるもの」(マーラー交響曲第3番)、「春の祭典」という圧巻のストラヴィンスキー=マーラー・プログラムでした。ここでは「春の祭典」をBBLと東京バレエ団がソリストも含めて半分ずつ受け持ち、あたかも一つのカンパニーのような息の合ったパフォーマンスが繰り広げられました。
そして2014年の大作「第九交響曲」。東京での初演はやはりズービン・メータ指揮イスラエル・フィルの演奏に、歌唱ソリスト、合唱つきで、BBLと東京バレエ団が共演する夢のようなステージに。「第九交響曲」はその後、上海、ローザンヌ、モナコ、ブリュッセルでも上演され、各地で一大イベントとして話題をさらいました。