2022年に没後30年を迎え、その優れた創作の魅力が改めて認識されたケネス・マクミラン。なかでも「ロミオとジュリエット」は、シェイクスピアの国のバレエとして金看板ともいえる作品です。ルネサンス期イタリアの2大名門家の抗争を背景にした、その息子と娘であるまだ10代のロミオとジュリエットの、出会いから死までの1週間足らずの物語。マクミランはこれを、「宿命の恋」というテーマに焦点を当てながら現代的に描き、その魅力はいまなお色あせることがありません。 舞踏会で、そこだけ時が止まったようなロミオとジュリエットの出会い。スピード感溢れるバルコニーの踊りで、ロミオに掲げられたジュリエットが弧を描くように背中をしならせる美しさ。寝室での別れから、墓室で互いの死に絶望する最終場まで、無垢で激しい情熱にかられた恋人たちの、歓喜から死に至る疾走が大きな感動を呼びます。また重厚な舞台美術とドラマティックな照明、オーケストラの生演奏とともに、壮麗なキャピュレット家の舞踏会や広場での若者たちの躍動感あふれるシーン、脇の登場人物に至るまでのこだわりの演技など、ステージには見るべきものが満載です。主役ペアに旬のスターたちがそろい踏みとなった今回の来日公演は、まさに豪華競演。どうぞいくつものペアを、いくつもの配役を見比べ味わってください。
「ロミオとジュリエット」で一躍台頭し、18世紀の文学をもとにした「マノン」、オーストリア皇太子のスキャンダラスな死を題材とした「マイヤリング(うたかたの恋)」ほか、現代の観客を惹きつける多くの作品を創作した。
敵対するモンタギュー家のロミオとキャピュレット家のジュリエットは、舞踏会で出会って運命的な恋に落ちる。二人は密かに結婚式を挙げるが、親友マキューシオをジュリエットの従兄弟ティボルトに殺されたロミオは、その仇を討ち、追放処分となる。ロミオの出立前夜を共に過ごし、彼を送り出して悲嘆にくれるジュリエット。そこへ両親から婚約者パリスとの結婚を強要された彼女は、僧ロレンスに救いを求め、死を装う薬を飲む。しかし真相を知らないまま街に戻ったロミオは、地下墓室に横たわるジュリエットを見て絶望し、毒を飲み干す。目覚めたジュリエットは恋人の死を知り、彼女もまた剣で自らの命を絶つ。