W.A.モーツァルト作曲

『魔笛』全2幕
DIE ZAUBERFLÖTE

バイエルンの伝家の宝刀、一閃
伝説の『魔笛』ベスト・プロダクション出現!

『魔笛』は、モーツァルトのオペラのなかでも世界中で、子どもから大人まで絶大な人気を博している作品。王子が捕らえられた娘を助けに行くと、そこには“正義”があり、王子と娘は試練を乗り越えて太陽の神殿に迎えられます。冒険譚やスペクタクル、コミカルなシーンなどが取り混ぜられているのは、この作品は庶民が楽しむためにつくられたものだから。モーツァルトが書いた美しい音楽やファンタスティックな物語は、天上の出来事のようです。

バイエルン国立歌劇場は、モーツァルト、ワーグナー、R. シュトラウスを上演の3本柱としていて、モーツァルト作品の多くも、次々と新制作が行われています。しかし、今回上演されるアウグスト・エヴァーディングの演出による『魔笛』は例外です。あまりにも観客に愛されているため変えられないとのこと。エヴァーディングは、1977 年から82 年までバイエルン国立歌劇場の総裁を務めた人。物語がもつメルヘン性とファンタジー性を、子どもだましでなくしっかりと描きだし、天才ユルゲン・ローゼの美術と相まって、幻想的な美しさをたたえ、天上の夢を見させてくれます。

指揮を執るアッシャー・フィッシュは、バレンボイムの愛弟子で、優れたピアニストでもある俊英。世界中のオペラハウスで実力を発揮しています。バイエルン国立歌劇場の伝統を受け継ぎ、モーツァルトへの敬愛に満ちた珠玉の一作と言うべき舞台を任されるのは、オーケストラや歌手たちからの厚い信頼を寄せられているからにほかなりません。長い年月、磨き抜かれてきたこの『魔笛』は、まさにバイエルン国立歌劇場の宝です。その「伝家の宝刀」が初めて海をわたり日本で抜かれようとしています。

予定される主な配役

ザラストロ:
マッティ・サルミネン

フィンランド出身のマッティ・サルミネンは、現在最も優れたバス歌手として認められている。生地のトゥルク、ヘルシンキのシベリウス音楽院で学び、さらにイタリア、ドイツで研鑽を重ねた。

1972年から1980年にケルン・オペラのアンサンブルを経て、1984にチューリッヒ歌劇場と契約した。これまでに、ベルリン、ミュンヘン、ウィーン、ヘルシンキ、バルセロナの歌劇場、パリ・オペラ座、メトロポリタン歌劇場など、世界の著名なオペラで活躍している。また、1990年代後半までの30年以上にわたって、サヴォリンナ音楽祭には毎夏出演するほか、バイロイト音楽祭にも1976年から1988年には常連として登場した。 代表的なレパートリーとしては、『魔弾の射手』のカスパール、『さまよえるオランダ人』のダーラント、『ラインの黄金』のファーゾルト、『トリスタンとイゾルデ』のマルケ王、『パルシファル』のグルネマンツ、『ニュルンベルクのマイスタージンガー』などが挙げられる。

2003年にバイエルン国立歌劇場宮廷歌手の称号を与えられている。

タミーノ:
ダニエル・ベーレ:

Photo:Marco Borggreve

ハンブルク生まれのダニエル・ベーレは、最も多彩なドイツのテノールの一人として成功をおさめている。ハンブルク音楽大学で作曲とトロンボーン、声楽を学んだ。卒業後、ウィーン・フォルクスオーパー、フランクフルト歌劇場のメンバーとして活躍。

世界的に注目されるようになったのは『魔笛』のタミーノ役。そのほかのレパートリーはバロックから21世紀の作品まで幅広く、『ドン・ジョヴァンニ』のドン・オッターヴィオ、『後宮からの逃走』のベルモンテ、『ダフネ』のレウキッポス、『アラベラ』のマッテオなどでの成功が挙げられる。

これまでに、ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場、英国ロイヤル・オペラおよびザルツブルク復活祭音楽祭、エクサン・プロヴァンス音楽祭など、ヨーロッパの著名な歌劇場や音楽祭に招かれている。2017年にはバイロイト音楽祭に『ニュルンベルクのマイスタージンガー』ダ―ヴィッド役でのデビューも予定されている。

2012年のウィーン・フォルクスオーパー日本公演で、『ウィンザーの陽気な女房たち』のフェントン役で美声を聴かせた。

夜の女王:
ブレンダ・ラエ

Photo:Kristin Hoebermann

アメリカ出身のブレンダ・ラエは、 “疲れを知らない黄金のソプラノ”(タイムズ紙)、“驚異的、正確なコロラトゥーラ!”(オペラ・ニュース誌)などの評価を獲得しているソプラノ。ウィスコンシン大学マディソン校とニューヨークのジュリアード音楽院で学んだ後、2008年からフランクフルト歌劇場のメンバーとして活躍している。すでにベルリン、ウィーン、ハンブルク、パリ、ボルドーで成功をおさめているが、さらに今後はメトロポリタン歌劇場、シカゴ・リリック・オペラ、チューリッヒ歌劇場へのデビューもスケジュールされている。

レパートリーには、『魔笛』のパミーナ、『椿姫』のヴィオレッタ、『コシ・ファン・トゥッテ』のフィオルディリージ、『ナクソス島のアリアドネ』のツェルビネッタ、『ボエーム』のムゼッタ、『ドン・ジョヴァンニ』のドンナ・アンナ、『ホフマン物語』のオランピアとジュリエッタ、そして『ランメルモールのルチア』と『マリア・ストゥアルダ』のタイトルロールなど、コロラトゥーラの優れた技量なくしては歌えない役柄が並ぶ。『魔笛』の夜の女王は、まさに本領を発揮する当たり役の一つ。

パミーナ:
ハンナ=エリザベス・ミュラー

Photo:Chris Gonz

マンハイム生まれのハンナ=エリザベス・ミュラーが、世界的な注目を集めたのは2014年ザルツブルク復活祭音楽祭『アラベラ』のズデンカ役。ルネ・フレミング、トーマス・ハンプソンとの共演、クリスティアン・ティーレマン指揮によるこの公演によって、彼女はオペレルン・ヴェルト誌の2014年の最優秀若手歌手に選ばれた。

バイエルン国立歌劇場には、2010年に同オペラ・スタジオに入り、2012年から2016年までアンサンブル・メンバーとして活躍。この間の2013年にはミュンヘン・オペラ・フェスティバル賞を受賞している。ミラノ・スカラ座をはじめ、ドレスデン国立歌劇場やローマ歌劇場などの歌劇場ほかへの客演も数多い。

レパートリーには、『フィガロの結婚』のスザンナ、『ラインの黄金』および『神々の黄昏』のヴォークリンデ、『ばらの騎士』のゾフィー、『ウェルテル』のソフィー、『フィデリオ』のマルツェリーネ、『ヘンゼルとグレーテル』のグレーテルなどがある。

2017年3月にはメトロポリタン歌劇場へのデビュー、5月にはミラノ・スカラ座で『ドン・ジョヴァンニ』のドンナ・アンナのロールデビューが予定されている。

パパゲーノ:
ミヒャエル・ナジ

Photo:David Maurer

ハンガリーにルーツを持つバリトン、ミヒャエル・ナジは、ベルリン・コーミッシェオーパーを経て、2006年にフランクフルト歌劇場に活動の拠点を移した。この間に歌った『魔笛』のパパゲーノ、『コシ・ファン・トゥッテ』のグリエルモ、『フィガロの結婚』の伯爵、『タンホイザー』のウォルフラム、『ファウスト』のヴァレンティン、『ボエーム』のマルチェッロなどは、現在に至るまで、彼にとって重要かつ代表的なレパートリーとなっている。

なかでもパパゲーノ役は、2013年のサイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルとのバーデン・バーデンでの演奏に対し“魅力的で最高のパパゲーノが登場した”(ニューヨーク・タイムズ)と評されている。

バイエルン国立歌劇場では、『魔笛』のパパゲーノのほか、『エフゲニー・オネーギン』のタイトルロール、『パレストリーナ』のルナ伯爵ほか、2014年の年間作品賞を受賞したペトレンコ指揮ツィンマーマン作曲『軍人たち』のシュトルツィウスを歌っている。

これまでに、オスロ・オペラ、ベルリン・ドイツ・オペラ、アン・デア・ウィーン劇場、チューリッヒ歌劇場、バイロイト音楽祭などオペラのほか、オーケストラとの共演、歌曲リサイタルなど、広範な活動で成功をおさめている。

パパゲーナ:
エルザ・ベノワ

Photo:Wilfried Hösl

フランスのソプラノ、エルザ・ベノワは、現在最も魅力的な若手の一人として注目されている。

2011年にアムステルダム音楽院を卒業後、数々のコンクールで優秀な成績を獲得。2013年にバイエルン国立歌劇場オペラ・スタジオに入り、2015/2016年シーズンはクラーゲンフルトの歌劇場メンバーとして活躍。2016/17年シーズンより、バイエルン国立歌劇場メンバーとなった。オペラ・スタジオ在籍中には、キュビリエ劇場での『オリー伯爵』の伯爵夫人アデル、プリンツレゲンテン劇場での『オルフェオ』のエウリディーチェ、そして『魔笛』のパミーナや『フィガロの結婚』のバルバリーナなどで、すでに優れた才能を発揮した。

バイエルン国立歌劇場のメンバーとしての初シーズンは、3つの新演出作品『ラ・ファヴォリータ』のイネス、『セミラーミデ』のアゼーマ、『タンホイザー』の羊飼いが予定されているほか、『ヘンゼルとグレーテル』のグレーテル、『仮面舞踏会』のオスカル、『カルメン』のフラスキータ、『ナクソス島のアリアドネ』のナヤーデ、『ドン・カルロ』のテバルド、『ナブッコ』のアンナを歌う。


バイエルン国立歌劇場合唱団
バイエルン国立管弦楽団

※表記の出演者は2017年1月20日現在の予定です。病気や怪我などのやむを得ない事情により出演者が変更になる場合があります。その場合、指揮者、主役の歌手であっても代役を立てて上演することになっておりますので、あらかじめご了承ください。出演者変更にともなうチケットの払い戻し、公演日・券種の変更はお受けできません。最終出演者は当日発表とさせていただきます。