ジャコモ・プッチーニ作曲『トスカ』(全3幕)
【上演時間3時間10分(休憩2回含む)】
指揮:ズービン・メータ 演出:マリオ・ポンティッジャ 美術・衣裳:フランチェスコ・ジート
作品解説
『トスカ』が世界中で愛されている理由といえば、劇的な緊張感をもったストーリーと、次々とくり出される珠玉のアリア。歌姫トスカが歌う「歌に生き、恋に生き」をはじめ、恋人カヴァラドッシの「妙なる調和」と「星は光りぬ」。さらに、邪悪なスカルピアの「行け、トスカ!」など、始まりから終わりまで、聴きどころのオン・パレードだ。こうした作品の魅力を味わうには、奇をてらった演出や過度な読み替えは不要。マリオ・ポンティッジャ演出による『トスカ』がフィレンツェで初演されたとき、「フィレンツェに『トスカ』が戻ってきた!」と興奮の声が上がったという。台本に忠実な演出に加え、フランチェスコ・ジートによる伝統的な美しさを湛えた舞台美術が人々の心を捉えたのだ。フィレンツェに伝わる職人芸をもって生み出されたこれらの舞台美術は、もはや舞台美術を超えた芸術品といえるだろう。 日本公演には、ズービン・メータによって選りすぐりの歌手が揃えられている。トスカ役のアディーナ・ニテスクは、美しくドラマティックな声と容姿を備えた実力派。まさに歌姫トスカそのものといったニテスク演じるトスカは、2009年春、パリのバスティーユ・オペラでも絶賛された。カヴァラドッシには、このプロダクションの初演でも喝采を浴びたマルコ・ベルティが登場。優れた発声法による安定した高音とパワー、完璧なイタリアン・テノールが毅然としたカヴァラドッシを演じる。スカルピアは、ルッジェーロ・ライモンディとジョルジョ・スリアンの豪華なダブル・キャスト。いずれもこの役を当たり役としてもつベテラン。ドラマの緊張感を高める「邪悪さ」も楽しみだ。 フィレンツェ歌劇場が誇るこの舞台は、オペラ・ファンにとって、「『トスカ』はこうあって欲しい」という、いわばイタリア・オペラの王道を行くもの。また、オペラ初心者にとっては、映画を見るようなわかりやすさと、宝石のような輝かしい名曲の数々によって、新たな官能の世界を体験することになるだろう。