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NBS日本舞台芸術振興会
Photo: 御堂義乗

2020/10/07(水)Vol.407

美輪明宏さんに聞く三島由紀夫とベジャールの『M』
2020/10/07(水)
2020年10月07日号
バレエ
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東京バレエ団

Photo: 御堂義乗

美輪明宏さんに聞く三島由紀夫とベジャールの『M』

高校生の頃に三島由紀夫と出会ったという美輪明宏さん。三島由紀夫の素顔を知るからこその、ベジャールの『M』の魅力をご紹介いただきました。

『M』という作品には、三島さんの純粋さが、端から端まで漂っていますね。

ーー美輪さんと三島さんとの交流は、まだ新進作家だった頃の三島さんが、美輪さんと出会ったことから始まったそうですね。

美輪:昭和27年でしたか、最初にお会いしたのは銀座ですね。私は国立音大附属高校に通っている頃に、銀座4丁目の喫茶店でウェイターのアルバイトをしていたんです。もう今はないその店は、一階が喫茶店で二階がバー。芸術家がたくさんお見えになっていて、三島さんも、雑誌社の方たちといらしたのが最初でした。その後、私は銀座7丁目の(後にシャンソン喫茶として有名になる)銀巴里のオーディションに受かり、店の専属歌手になっていたところへ、また三島さんが見えたんです。当時の銀巴里には、江戸川乱歩さん、川端康成さん、遠藤周作さん、吉行淳之介さん、安岡章太郎さん、野坂昭如さんなど、枚挙に暇がないほど大勢の大御所や新人作家の方たちがいらしていました。その中での三島さんは、そうですね、とてもおしゃれな会話をなさるかたでした。ああ言えばこう言うという感じで、エスプリの利いた、ユーモアのあるお話ぶりでした。

ーー三島さんの作品について、お二人で話されることは。

美輪:作品に関しては、口出ししてはいけないと思いましたので、私からは伺いませんでしたが、話の端々で、だいたい想像がつきました。三島さんは、海がとても好きでした。海=日本ととらえていらしたのでしょう。よその大陸の国とは異なり、日本は四方を海に囲まれていますからね。よくご家族で、伊豆の海へもいらしていました。ですから、今回『M』を映像で拝見して、冒頭から「さすがベジャール!」と思いましたね。幕あきと同時に、葛飾北斎の波の絵を彷彿させるような海の様子を、バレエで表現していますでしょう。『潮騒』から始まって最後の『豊饒の海』に至るまで、随所で海が感じられ、どの場面も「これが三島だ」と観客に突きつけているかのよう。ほんとうにベジャールは天才だと思いました。

ベジャール振付「M」のプロモーション動画はこちらから

ーー美輪さんから見て、三島由紀夫はどんな人だったのでしょう。

美輪:純粋なかたでした。まあびっくりしたことがあったんですが、私は昭和31年に『メケメケ』というシャンソンでデビューしまして、男でも女でもない、世界で初めてのような中性的なファッションで歌ったことで、当時はもてはやされたのですが、一方ではバケモノ扱いされ、人気が落ちると、弟たちを養うのにも大変な時期がありました。その時のことを『紫の履歴書』という自叙伝に書き、三島さんに序文をお願いしたんです。「できたから取りにおいで」と言われて原稿をいただきに伺うと、「君はずいぶんお金に困っていたんだね。どうして俺のところに借りに来なかったんだ」とおっしゃるので、「私は作家としては、三島さんとの間にはとんでもない距離がありますけれど、アーティストとしては、三島さんと同じ列に並びたいと思いました。貸し借りができると負い目を持つことになり、肩を並べることは許されなくなるでしょう。ですから、三島さんのところには、絶対にお借りしに行くのはよそうと思っていました」と申し上げたんです。 そうしたら三島さん、スッと椅子を立たれましてね、小学生みたいに真っ直ぐに、私に向かってお辞儀をされたんです。どうしたのかと思ったら、「そんなに僕のことを買いかぶってくれて、どうもありがとう」とおっしゃったんです。びっくりしました。そして、なんて純粋な人だろうと思ったんです。 これと似たようなことが、たくさんありました。『M』という作品には、そんな三島さんの純粋さが、端から端まで漂っていますね。これは三島さん、きっとご満足だろうなあと思います。三島さんは美しいものは何でも好きで、バレエもご覧になっていました。きっと今度の『M』も、どこかからご覧になると思いますよ(笑)

インタビュー・文 伊達なつめ

このインタビューは「婦人画報」2020年10月号(9/1発売 ハースト婦人画報社)の取材の際に収録されたものです。
https://www.fujingaho.jp/culture/interview-celebrity/a33600146/mimwaakihiro-tukamotodann-mishimayukio-200903/

美輪明宏(みわ あきひろ)


小学校の頃から声楽を習い、国立音大附属高校を中退し16歳にしてプロの歌手として活動を始めた。クラシック・シャンソン・タンゴ・ラテン・ジャズを歌い、「銀巴里」やテレビに出演、次第に人気を博し、三島由紀夫、吉行淳之介、野坂昭如、大江健三郎、中原淳一、遠藤周作、寺山修司、なかにし礼等、文化人の支持を得る。ファッション革命と美貌でも衝撃を与えた。日本におけるシンガーソングライターの元祖として「ヨイトマケの唄」ほか多数の唄を作っているほか、俳優、タレントとしても活動。演出・美術・照明・衣裳・音楽などを手がける総合舞台人として、また現代日本のオピニオンリーダーとして、その活動は常に耳目を集めている。

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三島由紀夫没後50周年記念公演
東京バレエ団

モーリス・ベジャール振付「M」

公演日

10月24日(土)14:00
10月25日(日)14:00

会場:東京文化会館

予定される配役

Ⅰ- イチ…柄本 弾
Ⅱ- ニ…宮川新大
Ⅲ- サン…秋元康臣
Ⅳ- シ(死)…池本祥真
聖セバスチャン…樋口祐輝
女…上野水香
海上の月…金子仁美
オレンジ…沖香菜子
ローズ…政本絵美
ヴァイオレット…伝田陽美

入場料[税込]

S=¥11,000 A=¥9,000 B=¥7,000 C=¥5,000 D=¥4,000 E=¥3,000
※ペア割引[S、A、B席]あり

U25シート ¥1,000
※NBS WEBチケットのみで9/17(木)20:00から引換券を発売。