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Photo: Nobuhiko Hikiji

2020/11/04(水)Vol.409

初演180年を機に、
斎藤友佳理が次世代に託す、名作『ジゼル』の魅力
2020/11/04(水)
2020年11月04日号
バレエ
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インタビュー
東京バレエ団

Photo: Nobuhiko Hikiji

初演180年を機に、
斎藤友佳理が次世代に託す、名作『ジゼル』の魅力

ラヴロフスキー版の魅力を堪能していただける舞台を目指します

ーー『ジゼル』は5年ぶりの上演となりますね。

斎藤友佳理:2021年は『ジゼル』の初演180周年という節目の年です。この機会に、私が学んできた『ジゼル』を皆にしっかり伝えたいと思っています。ダンサーたちにはいつも、舞台上で"役者"でいてほしい、テクニックはあくまでも表現のための土台なのだと言っていますが、言葉のかわりにパで表現するからこそ、バレエは芸術といえるのです。とくに『ジゼル』は、古典の中でもっとも演劇的要素の強い作品といえます。ヒロインのジゼルは、第1幕は現実の世界の村娘、第2幕は森の中の亡霊、異次元の世界の存在です。一人の人間がこの二つを演じ分けることは極めて難しいことだけれど、生と死の二つの世界を描き出すことは、典型的なクラシック・バレエのテーマでもあるのです。

ーー『ジゼル』の魅力は、まさにそこにあるのですね。

斎藤:『ジゼル』第2幕のウィリたちは、妖精というよりむしろ亡霊といったほうがふさわしいかと思います。夜中の森に、結婚前に亡くなった女性の霊が世界中から集まって、迷い込んできた男性を捕らえて死ぬまで踊らせるのですから。それはまるで吸血鬼のようで、ゴーティエが『ジゼル』の想を得たというハイネの「精霊物語」に詳しく記されているのを、興味深く、夢中になって読みました。ジゼルは心臓の弱い女性として描かれますが、それは彼女の精神的なデリケートさと繋がっていると考えられ、だからこそ、第1幕終盤で、アルブレヒトの裏切りを知っての狂乱の場があるわけです。糸のように細くデリケート、であるのに、実は鉄のように強い、折れない愛に裏付けられた存在で、第2幕ではウィリたちからアルブレヒトを全力で守ろうとする。亡霊でありながら美しく、謎めいた存在として、見る人を魅了するのです。

東京バレエ団「ジゼル」第 2 幕より
Photo: Kiyonori Hasegawa

ーーご自身にとっては、ダンサー時代にもっとも多く踊った作品の一つですね。

斎藤:リトアニアやセルビア、チェリャビンスクをはじめとするロシアの劇場、もちろん東京バレエ団でも何度も踊っています。まだ東京バレエ団に入る前の10代の頃、初めてジゼルを踊った相手がニコライ・フョードロフ(ボリショイ・バレエ元プリンシパル)で、その時指導してくれたのが、彼とマリーナ・セミョーノワ先生でした。『ジゼル』についてはその後、エカテリーナ・マクシーモワ先生に教えてもらうことになりますが、二人はすでに他界しているので、彼女たちに習ったことを、今度は私がダンサーたちに伝えなければと思っています。

ーー今回はフョードロフ氏も指導に加わるそうですね。

斎藤:彼は、ニコライ・ファジェーチェフからアルブレヒト役の指導を受け、長年にわたってこの役を踊っていました。また、ウラジーミル・ワシーリエフ、ミハイル・ラヴロフスキーといった、ボリショイ・バレエ黄金時代の男性ダンサーの、本当にノーブルなアルブレヒトを受け継いでいます。それをダンサーたちに伝えてもらいたい。
東京バレエ団の『ジゼル』初演は1966年のことでしたが、15年ほど上演が途絶えた時期があり、その復活公演──アレッサンドラ・フェリとマニュエル・ルグリが客演した際(1996年)に、当時のバレエ団代表の佐々木忠次さんに請われて、ダンサーたちの指導を手掛けたのがフョードロフでした。その後数々のダンサーが客演し、上演を重ねていくうちに、一部演出が変化していったこともあり、今回は、当初のラヴロフスキー版に還るべく、彼に協力してもらいながら指導していきたいと考えています。私たちがずっと取り組んできたことを次の世代に伝えることはすごく楽しみですし、彼らにはまた次の世代にそれを伝えていってもらいたいのです。

ーー2組の主演キャストが予定されています。

斎藤:沖香菜子と柄本弾、秋山瑛と秋元康臣という2組のペアです。彼らはそれぞれ、アピールしたいことも持っているものも異なります。私は彼らを尊重しながら、それぞれの良さを引き出したいと考えています。石の塊からピエタ像を彫り出すかのように、どんどん削っていって完成形を目指す、その過程を大切にしながら進めていきたい。皆さまにラヴロフスキー版の魅力を堪能していただける舞台を目指します。

沖香菜子、柄本 弾
Photo: Shoko Matsuhashi

取材・文 加藤智子 フリーライター

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東京バレエ団『ジゼル』

公演日

2月26日(金)19:00
2月27日(土)14:00
2月28日(日)14:00

会場:東京文化会館

予定される配役

ジゼル:
沖 香菜子(2/26,2/28)
秋山 瑛(2/27)

アルブレヒト:
柄本 弾(2/26,2/28)
秋元 康臣(2/27)

演奏:東京交響楽団

入場料[税込]

S=¥11,000 A=¥9,000 B=¥7,000 C=¥5,000 D=¥4,000 E=¥3,000
※ペア割引[S、A、B席]あり
※親子割引[S、A、B席]あり

都フェスシート ¥2,000
※NBS WEBチケットまたはNBSチケットセンター(電話)にて11/27(金)10:00より枚数限定販売。

U25シート ¥1,000
※NBS WEBチケットのみで2021/1/22(金)20:00から引換券を発売。