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 Photo: Ayano Tomozawa

2021/06/02(水)Vol.423

東京バレエ団〈HOPE JAPAN 2021〉
柄本弾インタビュー
2021/06/02(水)
2021年06月02日号
バレエ
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インタビュー
東京バレエ団

Photo: Ayano Tomozawa

東京バレエ団〈HOPE JAPAN 2021〉
柄本弾インタビュー

東日本大震災があった2011年、シルヴィ・ギエムからの「日本を応援し元気づけたい」との呼びかけに応え、東京バレエ団が開催した公演〈HOPE JAPAN〉。あれから10年、震災とコロナ禍からの復興を願い、今年は〈HOPE JAPAN 2021〉が全国を回る。かつてギエムが踊った『ボレロ』*に挑む柄本弾に、作品への思いや本ツアーに懸ける意気込みを聞いた。

*東京バレエ団の『ボレロ』はモーリス・ベジャール振付によるもの。同作品の主役は、モーリス・ベジャール・バレエ団の認可を受けたダンサーのみ踊ることが許されている。

「『ボレロ』は終わると必ず「ブラボー」と言いたくなる作品、今回は声に代えて大きな拍手をいただけたら嬉しいです!」

――柄本さんは、メロディ*を踊ることを許されている現在唯一の日本人男性ダンサーです。まずは改めて、ジル・ロマンさんから許可が出た時のことをお聞かせいただけますか?

*メロディ:ベジャール振付『ボレロ』で赤い円卓の上で踊るソリスト

柄本弾:飯田宗孝芸術監督(2015年当時、現団長)と高橋事務局長(2015年当時、現専務理事)から練習しておくように言われたのは、2015年の春のこと。高岸直樹さんに東京でご指導いただいてから、6月に『第九交響曲』のツアーでローザンヌに行った時、ジル(・ロマン:ベジャール・バレエ団芸術監督)さんとエリザベット・ロスさんに1週間ほどリハーサルをみてもらって許可をいただきました。その後、ジルさんが〈世界バレエフェスティバル〉のために来日された夏にも、マンツーマンでみていただいて。今思うと、すごい経験をしているなと思います。ジルさんは人の名前を覚えるのが苦手らしいので、「Dan」と呼んでいただけるだけでも光栄です(笑)

Photo: Kiyonori Hasegawa

――ジルさんの中で、許可を出す・出さないの基準は何なのでしょう?

柄本:それは僕にも分からないですね(笑)。聞いてみたこともないのですが、自分の内面を120パーセント出すようなところを評価していただけたのかな、とは思っています。ベジャールさんの作品は『ボレロ』に限らず、ダンサーが内面を出しやすい振付に元々なっていることが多いのですが、僕は特に出すというか、"出ちゃう"タイプなんです(笑)

――メロディ役デビューとなった、2015年の〈横浜ベイサイドバレエ〉の思い出をお聞かせください。

柄本:小雨が降る中での野外公演で、転ばないようにするだけで精一杯。全く思うように踊れず、ほろ苦いデビューになりました。でもリズム*の皆が助けてくれたおかげでなんとか踊り切ることができ、舞台はみんなで創るものなんだ、と気づけたのがあの公演。それもあって、2回目以降は毎回"周りを鼓舞するメロディ"というイメージで踊っています。

*リズム:メロディが踊る円卓を囲むダンサーたち

――自分の中で、"リベンジできた"という手応えがあったのは?

柄本:正直、まだないですね。今まででいちばん良かった気がするのは、マチネとソワレの両方を踊った、2018年の〈20世紀の傑作バレエ2〉のソワレ。1日に2回メロディを踊ったのは世界でも僕くらいだと思うんですが(笑)、マチネで力を使い果たしていたおかげで、無駄な力が抜けたクリーンなパフォーマンスができた感じがあるんです。本番を重ねることで気づくことって多いので、今回たくさん踊らせていただけるのは本当にありがたいですね。

Photo: Kiyonori Hasegawa

――今回のツアーでは、同じベジャール振付の『ギリシャの踊り』も踊られます。

柄本:東京ではデビューになりますが、地方や海外では何度か踊っている作品。爽やかでクールな印象があるかもしれませんが、終盤になるにつれてやっぱり......(内面の熱さが)出ちゃいますね(笑)。『ボレロ』も『ギリシャの踊り』も『春の祭典』も『ザ・カブキ』も、途中までは「今日けっこう体力残ってるかも?」と思っても、最後には必ず「......しんど!」ってなるんです(笑)。僕たちがエネルギーを出し切ることで、お客さんも白熱するのがベジャール作品。ですからこういう機会は、本当に最高だと思います。

――現在、『ボレロ』『ギリシャの踊り』と並行して、延期になった『カルメン』のリハーサルもされていると聞いています。もしかして、ものすごく大変なのでは......?

柄本:そうですね(笑)。ベジャール作品に必要な身体と、『カルメン』に必要な身体は別物なので、厳しいものがあるのは確かです。でもダンサーにとって、本番が多いというのはやっぱり何より嬉しいこと。スケジュールは"密"になりましたが(笑)、中止ではなく延期になったこと、こんな状況下でも舞台に出られることを、すごくありがたく感じています。

Photo: Ayano Tomozawa

――最後に改めて、公演を楽しみにしていらっしゃる全国の皆さんにメッセージをお願いします!

柄本:僕にとって思い入れの深い作品である『ボレロ』を、3年ぶりに踊らせていただくことになりました。期待してくださっているお客さまを裏切らないよう、ダンサー一同しっかりリハーサルをして臨みますので、皆さんもコロナ対策をしっかりなさった上で楽しんでいただけたらと。『ボレロ』は終わると必ず「ブラボー」と言いたくなる作品なので、声を出せないのはつらいかもしれませんが(笑)、そのぶん大きな拍手をいただけたら嬉しいです!

インタビュー・文 町田麻子 フリーライター

東京バレエ団全国ツアー HOPE JAPAN 2021 -柄本弾『ボレロ』-
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HOPE JAPAN2021
東日本大震災10年
コロナ禍 復興プロジェクト

公演日

7月3日(土)14:00
7月4日(日)14:00

会場:東京文化会館

*東京公演以外の全国公演については公式サイトをご覧ください

予定される演目&配役

「ボレロ」
主演:上野 水香(7/3)/柄本 弾(7/4)

「ギリシャの踊り」
ソロ:柄本 弾(7/3)/樋口 祐輝(7/4)

「舞楽」(1988年初演版)

「ロミオとジュリエット」(パ・ド・ドゥ)

*音楽は特別録音による音源を使用します。

入場料[税込]

S=¥13,000 A=¥11,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥1,500
※ペア割引あり(S、A、B席)
※親子割引あり(S、A、B席)