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Photo:  Kishin Shinoyama

2021/07/07(水)Vol.425

金森穣、新作『かぐや姫』を語る (前編)
2021/07/07(水)
2021年07月07日号
TOPニュース
インタビュー
東京バレエ団

Photo: Kishin Shinoyama

金森穣、新作『かぐや姫』を語る (前編)

日本を代表する振付家、金森穣と東京バレエ団のコラボレーションにより、11月の世界初演に向けて始動中の新作『かぐや姫』。「導かれるようにさまざまなことが決まった」と語るプロジェクトと創作のコンセプトを、舞踊評論家の岡見さえさんのナビゲーションで振付家自身が解き明かします。

バレエの形式と技法を自分の中に取り込み、咀嚼(そしゃく)して、ハイブリッドな表現を探求します。

――なぜ『かぐや姫』というテーマに惹かれたのですか?

金森穣:「日本が世界に発信し得るバレエを」というお話を東京バレエ団からいただいたとき、抽象的なものよりグランド・バレエ的な作品を作れないかと考え、そのモチーフには日本の物語が相応しいと思いました。「かぐや姫」が候補に上がり、あらためてあらゆる資料を読み込んだところ、非常にシンプルで普遍性があるけれど多義的でさまざまな謎もある。ぜひやりたい、と直感しました。また、バレエになじみの薄い物語ということも大事な点でした。もちろん、海外では私の恩師であるイリ・キリアンが『輝夜姫』を創作していますが、抽象度が高く、物語舞踊という感じではありませんし。

――『かぐや姫』の物語は諸版ありますが、今回の台本はオリジナルと伺っています。

金森:日本で最も古い物語と言われるだけあって懐が深く、多様な解釈が可能です。すでに多くのバージョンが存在することからもわかるように、さまざまなことを取り込んでも破綻しない。この題材で、自分が今考えていること、今まで考えてきたことが表現できるのも重要でした。現代を生きる芸術家、ひとりの人間として日々社会や人間に対して感じていること、欲望とは、自己とは何かという問いを表現できる道筋が、「かぐや姫」に取り組む中で、どんどん見えてきたのです。

リハーサルより
左から 道児役の柄本弾、金森穣、かぐや姫役の秋山瑛
Photo: Shoko Matsuhashi

――今回上演されるのは、『かぐや姫』全3幕の構想の第1幕と伺っています。主要人物について教えていただけますか?

金森:かぐや姫、翁、道児(どうじ)です。道児はストリートチルドレンで、かぐや姫の初恋の相手。第1幕は翁が竹藪で見つけたかぐや姫が、道児を初めとする童たちと楽しい幼少期を山村で過ごし、成長し、都に出るところまで。14、5歳までのお話です。原作では掌に乗るくらい小さな姫が3カ月程でみるみる成長して少女になるのですが、本作ではそれを数秒で表現する演出を考えています。キャストは、自分が抱いていたイメージにぴったりなダンサーを選びました。

――金森さんは演劇とコラボレートする「劇的舞踊」を創作し、舞踊における新たな物語表現を開拓してきました。『かぐや姫』で、それはどのように行われるのでしょうか。

金森:『ホフマン物語』(2010)以降、『カルメン』(2014)、『ラ・バヤデール―幻の国』(2016)、『ROMEO&JULIETS』(2018)と続く劇的舞踊シリーズでは、俳優も舞台に立ち、舞踊に言葉が介在しました。劇的舞踊の重要な点は、ある物語を表現する上で異なる二つの身体表現を共存、拮抗させることです。そうして生まれる新たなドラマ、すなわち劇性を追及することにあります。今回は言葉はありません。金森穣が構築する世界に、俳優ではなく「バレエ」という要素、形式が加わる。その意味で、自分の中で『かぐや姫』も劇的舞踊の系譜にあります。ポワントを履いた舞踊家への振付は、Noismでは1回だけで、それも立つためではなく、落ちることを表現するために使いましたから、バレエの文脈でポワントを使うのは初めてです。バレエの形式、バレエの技法を自分の中に取り込み、咀嚼して、ハイブリッドな表現を探求します。

リハーサルより
左は道児役の秋元康臣と演出助手の井関佐和子、
右は金森穣とかぐや姫役の足立真里亜
Photo: Shoko Matsuhashi

――異種の組み合わせから新たな表現を創造する金森さんの仕事が、『かぐや姫』で新たな段階に進むのですね。

金森:そうですね。これまでで最もバレエと向き合っています。そこには東京バレエ団の存在が非常に大きいです。女性の群舞によるポワントの振付、Noismにはない大勢の男性の群舞も作りたいと刺激され、冒頭で女性群舞、第2幕のここで男性群舞というようにイメージがクリアに見えてきた。そこから詳細を詰めていくプロセスも、とても自然でした。作品の題材も無理に探したのではなく、「これしかない」という実感があり、音楽も同様でした。創作をしていると時折、創造されるべくすべてが準備されていた、と感じることがあるのですが、『かぐや姫』でも導かれるようにさまざまなことが決まっていきました。

リハーサルより
2組の主演キャストと金森穣。
秋元康臣と足立真里亜(左)と柄本弾、金森穣、秋山瑛(右)
Photo: Shoko Matsuhashi

インタビュー・文 岡見さえ(舞踊評論家)

金森 穣(かなもり じょう)


演出振付家、舞踊家。りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館舞踊部門芸術監督、Noism Company Niigata芸術監督。17歳で単身渡欧、モーリス・ベジャール等に師事。ルードラ・ベジャール・ローザンヌ在学中から創作を始め、NDT2在籍中に20歳で演出振付家デビュー。10年間欧州の舞踊団で舞踊家、演出振付家として活躍したのち帰国。'03年、初のセルフ・プロデュース公演『no・mad・icproject ~ 7 fragments in memory』で朝日舞台芸術賞を受賞し、一躍注目を集める。'04年4月、りゅーとぴあ舞踊部門芸術監督に就任し、日本初となる公共劇場専属舞踊団Noismを立ち上げる。海外での豊富な経験を活かし次々に打ち出す作品と革新的な創造性に満ちたカンパニー活動は高い評価を得ており、近年ではサイトウ・キネン・フェスティバル松本での小澤征爾指揮によるオペラの演出振付を行う等、幅広く活動している。平成19年度芸術選奨文部科学大臣賞、平成20年度新潟日報文化賞、第60回毎日芸術賞、第15回日本ダンスフォーラム大賞ほか受賞歴多数。

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東京バレエ団11月公演
金森穣
「かぐや姫」第1幕 世界初演
モーリス・ベジャール
「中国の不思議な役人」
イリ・キリアン
「ドリーム・タイム」

公演日

11月6日(土)14:00
11月7日(日)14:00

会場:東京文化会館

予定される演目&配役

「かぐや姫」
かぐや姫:秋山瑛(11/6)、足立真里亜(11/7)
童児:柄本弾(11/6)、秋元康臣(11/7)
翁:飯田宗孝(11/6、11/7)

「中国の不思議な役人」
中国の役人:大塚卓(11/6、11/7)
シェフ:鳥海創(11/6)、柄本弾(11/7)
娘:宮川新大(11/6)、池本祥真(11/7)
ジークフリート:ブラウリオ・アルバレス(11/6)、生方隆之介(11/7)
若い男:伝田陽美(11/6)、二瓶加奈子(11/7)

「ドリーム・タイム」
沖香菜子、三雲友里加、金子仁美、宮川新大、岡崎隼也

入場料[税込]

S=¥13,000 A=¥11,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥1,500
※ペア割引あり(S、A、B席)
※親子割引あり(S、A、B席)

【新潟公演】
「かぐや姫」第1幕、「ドリーム・タイム」
11月20日(土)13:00/17:00
りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館

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