2021/08/04(水)Vol.427
2021/08/04(水) | |
2021年08月04日号 | |
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オペラリッカルド・ムーティ |
Photo: 田口道子
7月末、ナポリで開催されたリッカルド・ムーティの誕生日祝賀会の模様が田口道子さんより届きました。
7月28日に80歳の誕生日を迎えたマエストロをお祝いする会が30日にナポリのコンセルヴァトーリオで開かれた。この音楽院こそ若きマエストロが本格的に音楽の勉強をし、指揮の才能を見出された、マエストロの音楽人生にとって大変重要な場所である。
式典は「ここからすべてが始まった」と題する写真展の開会式、マエストロの新しい本(ハイドン作曲の『十字架上のキリストの七つの言葉』についての哲学者カッチャーリ氏との対話)の紹介とコメント、記念品の贈呈に続いてマエストロと共演した歌手たちや演奏家など、世界中のアーティストから届けられた25の心温まるビデオメッセージがスクリーンに映し出され、マエストロは感無量の表情だった。ビデオメッセージにはシカゴ響、ウィーン・フィル、パリ管、ケルビーニ管に加えて、日本の東京春祭オーケストラの一部のメンバーが演奏するモーツァルトとお祝いの言葉も含まれていた。
そして最後にナポリ音楽院バロックオーケストラによってナポリ楽派の作品が演奏された。盛りだくさんの素晴らしい祝賀会は18時から21時30分まで続き、マエストロがお祝いのケーキにナイフを入れ、舞台上の音楽家たちと分け合って閉会となった。
この前日、マエストロは開催中のサミットG20のために大統領府の中庭で行われたコンサートに出演し、ドヴォルザークの『新世界より』をケルビーニ管と演奏。マエストロはテレビのインタビューに答えて「タイトルは『新世界より』だけれど、私はCOVID19(コロナ禍)後の新世界に向けてという気持ちで演奏します」と語った。そして演奏後にマッタレッラ大統領にこの作品を指揮した指揮棒をプレゼントした。
80歳とは思えないほど元気で若々しいマエストロは、1970年から勉強を始めたというベートーヴェンの『荘厳ミサ』をいよいよこの8月にザルツブルクで演奏することになり、最後の準備にかかっている。「この作品はあまりにも超自然的で自分にはまだ早いと思いながら50年が経ってしまった」と語るマエストロ。「この作品の難しさは技術的なものではありません。自分の解釈が間違っていないか、もっと深く知るべきではないかと、なかなか自信が持てなかったのです」と本心を明かした。
コロナウイルスの感染が収まってきて制限が緩んだイタリアでは、屋外ではマスクの使用が義務ではなくなり、レストランも遅くまで営業している。マエストロは9月9日から1年半ぶりでシカゴ響との演奏を再開する予定だ。そして11月にはウィーン・フィルと来日することを心待ちにしているという。どうか来日が実現されますようにと、祈らずにはいられない。
取材・文 田口道子
80歳とは思えないほど若々しいマエストロ
Photo: 田口道子
Youtubeでは、この催しの様子の一部が紹介されています
https://youtu.be/gV-8JnXAI14