2021/08/25(水)Vol.428
2021/08/25(水) | |
2021年08月25日号 | |
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オペラリッカルド・ムーティ |
Photo: © SF / Marco Borrelli
今年のザルツブルク音楽祭でのリッカルド・ムーティの活躍ぶりはすでにお伝えした通りですが、自宅に戻ったマエストロに取材した田口道子さんが、嬉しいサプライズ・ニュースを報せてくれました。オリンピック閉幕とパラリンピック開催の間の出来事です。
ザルツブルク音楽祭で8月13日、15日、16日と三回のベートーヴェン『荘厳ミサ』を終えて17日にラヴェンナへ戻ったマエストロ。早速18日にお話を伺うことができた。
「オーストリアから最高位の金メダル勲章(オーストリア共和国功績勲章)をもらったんだ」ととても嬉しそうにその時の様子を話してくれた。8月15日は11時からの公演だったので、演奏終了後にマエストロお祝いのレセプションが開かれた。今年はマエストロの80歳、ウィーン・フィルとの50周年、ザルツブルク音楽祭初登場からも50年と記念すべき年で、出演者全員で乾杯したところで、ザルツブルクのハスラウアー知事が大統領の代理でマエストロに勲章を授与するというサプライズが起こったのだ。事前に知らせなかったという粋な計らいに、マエストロは大変驚いたそうだ。
「このサプライズは本当に嬉しかった。ベートーヴェンの『荘厳ミサ』は本当に複雑で何十年も取り組んでは中断して、自分にはまだ早いと思って、なかなか実現できなかった。今回も勉強に勉強を重ねて、迷いも乗り越えての演奏が大成功に終わって、大仕事をやり切ったところでの思いがけない叙勲というご褒美だったので一層嬉しかった」と大きな笑みを浮かべた。
この50年の間にマエストロのザルツブルク音楽祭での演奏は270回に及ぶ。コンサート、オペラの公演で50年の間毎年参加してきた(一回だけ演出の意図が合わずにキャンセルしたことがあった)。昨年、ベートーヴェンの交響曲第九番で成功を収めて、今年の『荘厳ミサ』が決まったという。
「『荘厳ミサ』はシカゴ響でデビューするつもりだったのに、パンデミックでシカゴに行けなくなってしまった。去年はコンサートが次々にキャンセルになったので、ゆっくり時間をかけて勉強することができた。でも最後まで本当に苦労の連続だった」と語る。
ホッと一息ついてリラックスモードのマエストロは、孫たちに囲まれて夏休みだそうだ。本当にお疲れ様でした。
取材・文 田口道子
リッカルド・ムーティの公式サイトにも掲載されています。
https://www.riccardomuti.com/en/2021/08/18/austrian-highest-decoration/