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Photos: Shoko Matsuhashi

2021/09/01(水)Vol.429

東京バレエ団「海賊」
秋元康臣、宮川新大 ロング・インタビュー
2021/09/01(水)
2021年09月01日号
バレエ
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インタビュー
東京バレエ団

Photos: Shoko Matsuhashi

東京バレエ団「海賊」
秋元康臣、宮川新大 ロング・インタビュー

地中海を舞台に、壮大な愛と冒険の物語が繰り広げられる「海賊」。
東京バレエ団ではロシアのセルゲイエフ版を基にしたアンナ=マリー・ホームズ版を2019年に初演しました。この秋、新たなキャストも加わった再演の舞台の幕があきます。
海賊の首領コンラッドをつとめる秋元康臣と宮川新大に、舞台への意気込みを聞きました。

ビデオがすり切れるほど見て、憧れた
壮大なるグランド・バレエ「海賊」

――お二人にとって「海賊」はどんな演目ですか?

秋元 康臣
男性キャラクターそれぞれに個性も見どころもある演目ですね。特にABT(アメリカン・バレエ・シアター)のヴァージョンは、男でバレエをやっていたら誰もが憧れるのではないでしょうか。
宮川 新大
僕も初めて見た時に「かっけー!」と衝撃を受けました。ビデオテープを何度も巻き戻して見返したことを覚えています。

――そんな憧れの演目が新制作として東京バレエ団で上演された2019年の時のことをお聞かせください。

秋元
振付のアンナ=マリー・ホームズさんが来日され、みっちりリハーサルが行われました。アンナ先生のお稽古はとにかくエネルギッシュ。「Up!Up!」とテンションをあげることを要求され、勢いに乗せられてやらざるを得ない気持ちになるんです。
宮川
稽古場では4カ国語が飛び交っていましたね。康臣さんたちのキャストはスタッフに"チーム・ボリショイ"と呼ばれていて、康臣さんも、沖香菜子さんも、池本祥真くんもロシアでの経験があるので、みんなロシア語で会話していました。僕はアンナ先生とは英語、上野水香さんと先生はフランス語で。アンナ先生は終盤には日本語も結構理解されていました。
秋元
踊りの細かいニュアンスは、通訳さんを介した丁寧な日本語で言われてもピンとこないのに、ロシア語で叫ばれると瞬時に理解して直せる(笑)。ダイレクトに身体が反応するんです。考えてみれば振付をしたご本人から直接リハーサルしていただけるというのも貴重な経験でした。
宮川
今回も本当は来日されるはずでしたが、コロナ禍ということで、オンラインでリハーサルを受けているところです。

コンラッドを踊る秋元康臣(2019年公演より)
Photo: Kiyonori Hasegawa

海賊の首領コンラッドは
リーダー不在の時代に光るヒーロー

――2019年には秋元さんはコンラッド、宮川さんはアリとランケデムの2役でした。

宮川
「海賊」の登場人物はどれも憧れの役だったので嬉しかったですが、緊張もしました。初演の演目で主要キャストを踊るのも初めてでしたし、上野水香さんと組むのも初めてでしたし。
秋元
アリは急に見せ場がくるからね。
宮川
アリは第1幕では全然踊らず、いきなり第2幕でパ・ド・トロワですからね。
秋元
コンラッドの場合は、逆にとにかく動きっぱなしです。第1幕から、出てきては跳んで、出てきては回って、パ・ド・ドゥやったと思ったらまた跳んで......。映像でABTのイーサン・スティーフェルのコンラッドをさんざん観てきたので、こんなにキレッキレに動けるだろうか? と最初ちょっと不安でした。今回も本番に向けてとにかく動いて、身体を慣らしていくしかないとリハーサルを重ねています。

――古典バレエでプリンシパルがつとめる主役は、そのほとんどがナイーブでエレガントな王子様。「海賊」のコンラッドのような男らしいキャラクターは、むしろ稀有な役どころです。愛するメドーラを救うため自ら策を練り、闘い、勝利するコンラッドの"俺について来い!"的な姿は、先の見えない今の時代、観客をスカッとさせてくれる理想のリーダー像ともいえます。

秋元
まっすぐな男ですよね。素の自分は実は割とへなちょこなのですが(笑)、役としてのコンラッドはカッコいいので、舞台だからこそのエネルギーをもらって、スイッチを入れて演じます。バレエをはじめたばかりの男の子たちにもワクワクしたり、憧れてもらえたら嬉しい役ですね。
宮川
僕も流れに身を任せるタイプなので、私生活ではコンラッドのリーダーシップにはほど遠いですね。リハーサルを重ねていく中で役の心を掴めたらと思っています。逆に前回もつとめたアリは、水香さん、弾さんに仕える役なので僕には演じやすいのですが、これが10歳以上も年下のキャストに跪くとなると、それはそれでモヤモヤするのかもしれません(笑)。今回はコンラッドとアリの二役なので、真逆のキャラクターの違いを踊り分けていかなければと思っています。

アリを踊る宮川新大とメドーラ役の上野水香(2019年公演より)
Photo: Kiyonori Hasegawa

舞台に立つことのできる喜びを
感謝に変えて、踊る

――お二人は2015年8月3日、同じ日に東京バレエ団に入団されたそうですね? お互いの印象は?

宮川
オーディションから一緒でしたよね? 秋元さんはとにかくバレエが上手いです。テクニックは完璧ですが、それに加えてトップに立つべきオーラというか、舞台を支配する存在感も、見ていて勉強になります。
秋元
宮川くんはとにかく貪欲で、色々なことを考えて踊る人。気配りは僕なんかの100倍。自分にない部分なので尊敬しています。
宮川
気を使いすぎて疲れるネガティブ思考です(笑)
秋元
そういう部分もわかっているつもり(笑)。本番直前に緊張している姿を見ると、今は触れて欲しくないんだろうな、自分で世界を作り上げているところなのだろうな、と思ってそっとしておくようにしています。

――昨年からのコロナ禍では、舞台を取り巻く環境が大きく変わりました。

秋元
舞台が全く上演できなくなった時期には、自分たちは世の中に必要とされているのだろうか? と本気で自問自答したこともありました。感染対策に気をつけながら少しずつ劇場が再開してからは、できる舞台がある以上、より全力を注いでいこう、と思うようになりましたね。オーバーに言うなら怪我を怖れて明日のためにセーブするよりも、明日はないかもしれないから今すべてを出し切ろう、そんな気持ちが強くなりました。
宮川
僕は特にリハーサルでストレスを溜めてしまうタイプで、今までは本番の舞台でそれを達成感に変えていたので、目的を持てずにレッスンだけを繰り返す日々は正直、しんどかったです。今は舞台に立てること、こんな中でもお客様が劇場にいらしてくださることが決して当たり前のことではなかったんだ、と実感し、感謝しています。

――最後に「海賊」の見どころを教えてください。

秋元
どの場面も面白くて飽きるところのない、全幕バレエならではの変化を楽しんでいただけると思います。そしてコンラッドはとにかく動きます! ジャンプします! 王子の役って大抵、優雅に佇んでいる場面で少し落ち着けたりするのですが、コンラッドにはそれがありません(笑)
宮川
途中でバテないように頑張ります(笑)。男性のプリンシパル同士が舞台上で一緒に踊る古典演目はそう多くないので、それぞれの絡みにも注目してほしいですね。あと、特に船の場面は圧巻です。結構揺れるので初演の時は落ちそうになりましたが(笑)、美術や衣裳にも助けられながら世界観を作っていきたいと思っています。
秋元康臣&宮川新大への7つの質問

Q1)バレエダンサーでなかったら何になりたかった?

秋元:バレエダンサーにならなくても何か舞台上で表現したり、身体を使う事をしたかったと思う。

宮川:小さい頃はお笑い芸人になりたかった記憶がある。


Q2)女性に生まれ変わったら踊ってみたい役は?

秋元:「ドン・キホーテ」のメルセデスや「眠れる森の美女」のリラの精など、主役というより少し強めな女性を演じてみたい。

宮川:ブルメイステル版「白鳥の湖」のスペインのソリストを踊ってみたい!


Q3)最近のマイブームは?

秋元:一日終わりの水風呂!

宮川:仕事帰りにマックシェイクを飲むこと。


Q4)よく聴く音楽は?

秋元:クラシックでもJ-POPでも洋楽でも、その時の気分に合わせて色々な音楽を聴く。

宮川:最近はiTunesなどで昔のヒット曲(邦楽も洋楽も)をランダムに聴いている。


Q5)おすすめの映画は?

秋元:もともと車好きなので「ワイルド・スピード」は欠かさず見ている。好き嫌いあるかと思うが、おすすめ!ちなみにまだ最新作は見られていない。

宮川:僕もまだ見られていないが「ワイルド・スピード」! 絶対面白いはず!


Q6)おすすめの本は?

秋元:伊坂幸太郎さん。

宮川:最近は忙しくて本は全然読めていないが、いいメンタル強化の本を探している。オススメあったら教えて!


Q7)もし海賊船を手に入れたら、誰とどこに旅したいですか?

秋元:危険も伴いそうなので大切な人はさておき、男だけであてもなく航海してみたい。愛猫は連れて行く。

宮川:一人でモルディブあたりに行きたい!

取材・文:清水井朋子(ライター)

公式サイトへ チケット購入

東京バレエ団
「海賊」全3幕

公演日

9月23日(木・祝)14:00
9月24日(金)19:00
9月25日(土)14:00

会場:東京文化会館

予定される配役

メドーラ
沖 香菜子(9/23)、上野 水香(9/24)、秋山 瑛(9/25)

コンラッド
秋元 康臣(9/23)、柄本 弾(9/24)、宮川 新大(9/25)

アリ
池本 祥真(9/23)、宮川 新大(9/24)、生方 隆之介(9/25)

ギュルナーラ
伝田 陽美(9/23)、三雲 友里加(9/24)、中川 美雪(9/25)

指揮:冨田 実里
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

入場料[税込]

S=¥13,000 A=¥11,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥1,500

*ペア割引あり[S,A,B席]
*親子割引あり[S,A,B席]

公式サイトへ チケット購入

東京バレエ団 舞台の魅力体験事業
「海賊」全3幕

公演日

9月26日(日)14:00

会場:東京文化会館

舞台の魅力体験
①プレ・トーク開催!
②舞台装置のヒミツを特別公開!
*詳細は公式サイトをご覧ください。

予定される配役

メドーラ:上野 水香
コンラッド:柄本 弾
アリ:宮川 新大

ギュルナーラ:三雲 友里加
指揮:冨田 実里
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

入場料[税込]

S=¥13,000 A=¥11,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥1,500

*ペア割引あり[S,A,B席]
*親子割引あり[S,A,B席]