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Photos: Shoko Matsuhashi

2021/10/06(水)Vol.431

金森穣振付 世界初演「かぐや姫」を踊る 
秋山瑛、足立真里亜インタビュー
2021/10/06(水)
2021年10月06日号
バレエ
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インタビュー

Photos: Shoko Matsuhashi

金森穣振付 世界初演「かぐや姫」を踊る 
秋山瑛、足立真里亜インタビュー

新潟を拠点に国内外で活躍するNoism Company Niigata(Noism)を率いる金森穣氏が東京バレエ団に演出振付する『かぐや姫』。話題の新作の主役かぐや姫に選ばれた秋山瑛(あきら)と足立真里亜(ダブルキャスト)に、創作の模様や世界初演に向けての意気込みを聞きました。

同期入団、同年齢でも「踊りの質が結構違うんだね」と
金森穣氏が認めた二人
丁寧に楽しみながら挑戦!

――今年(2021年)3月、金森穣氏が来団して行われたリハーサルの初日に実施したオーディションを経て、かぐや姫に選ばれました。金森氏が準備された動きのフレーズを踊るという形で審査を受けたそうですが、配役を知った時の気持ちを教えてください。

秋山 瑛:うれしかったのですが、自分で大丈夫かなという気持ちはありました。

足立 真里亜:プレッシャーはありました。私はセカンドキャストですが、緊張感を持って稽古に参加していたので、配役されたんだなと自覚できたのは公式発表になった時です。

――金森氏は3月の記者会見時、かぐや姫像を問われ、「やんちゃ。でも凄く繊細。もの凄く美しくて、はかなくて、凄く芯が強い。矛盾するあらゆる要素を一身に含んでいるような女性」だと語りました。リハーサルを通して、どう感じましたか?

足立:日本の古い物語のプリンセスなので、仕草や佇まいがクラシック・バレエとは異なる部分があります。気品を表すにしても所作が違いますね。それに、かぐや姫はお転婆です(笑)。飛んだり、走ったり、投げられたり。やんちゃな子どもを演じるのは難しいですね。

秋山:かぐや姫は最初は幼いのですが、他の人と関わりながら成長していきます。お転婆だったかと思うとガラッと雰囲気が変わったりもします。

――8月に行われたリハーサルで今回上演される第1幕の振付が一通り終わったそうですね。振り返ってみて、どのような印象を持ちましたか?

足立:特に時間をかけているのが群舞です。

秋山:穣さんはポワントでの群舞を創るのは初めてとのことで、「トウシューズでこういうことはできる? 難しければこうしてみたらどうだろう?」というように色々試してみながら皆で創っていく感じです。

足立:穣さんは即興で振付するのではなく、ある程度構想を示してくださいます。

秋山:8月のリハーサル最終日に通し稽古をやったのですが、シーンとシーンのつなぎ目も丁寧に確認してから行いました。場面が進むごとにどんどん物語が展開していって本当におもしろいんです!

足立:シーンとシーンの繋がり方がもの凄く滑らかなんです。

秋山 瑛
足立 真里亜

Photos: Shoko Matsuhashi

――音楽は全曲クロード・ドビュッシーを用いると明かされています。

足立:穣さんとドビュッシーという、天才と天才の掛け合わせです!

秋山:このために創ってもらったんじゃないかなと思うくらいです!

――第1幕の終盤に道児(どうじ)とのパ・ド・ドゥがあるとうかがいました。かぐや姫は第1幕ではポワントを履かず、ここではバレエシューズで踊るそうですね。

足立:重要なパ・ド・ドゥです。ここでお互いの気持ちが育まれていきます。

秋山:それぞれの新しい一面や心の動きが見えて本当に素敵なシーンです。

――金森氏との創作に参加して、意識が変わったことなどはありますか?

足立:キーワードは「拮抗」です。Noismのメソッドは身体を360度どこから見ても弛緩した部分がないのが特徴です。(演出助手でNoism副芸術監督の)井関佐和子さんからも「舞台の上は日常じゃなくて非日常の世界だから、日常の身体でいてほしくない」というお話がありました。その通りだなと思うし、クラシック・バレエの動きにも通じると感じました。

秋山:穣さんや佐和子さんの動きをよく見て、どん欲に吸収する気持ちでいます。手の動き、たとえば泣くようなシーンでも、手先ではなく肘から使うと見え方が違ってきます。

金森穣(中央)、斎藤友佳理東京バレエ団芸術監督(右)、
振付助手の井関佐和子(左)
Photo: Shoko Matsuhashi

――道児もダブルキャストで、秋山さんは柄本弾さん、足立さんは秋元康臣さんと組みます。それぞれのパートナーに対する印象を教えてください。

秋山:弾さんは物語を紡いでいくのが凄く上手な方。組みもののサポートはもちろん、心の動きや感情の出し方でもリードしてくださいます。

足立:秋元さんは佇まい、テクニック、表情などすべて一流で説得力があります。私がどうやっても助けてくださるので頼もしいです。

――翁を演じるのは団長の飯田宗孝先生です。久々の舞台出演ですね。

秋山:いつも飯田先生は団長として私たちの舞台を見守ってくださっているのですが、今回はかぐやと翁として同じ舞台に立てるので本当にうれしいです、翁のソロは本当にいいので、ぜひご覧ください!

足立:飯田先生は、そこにいるだけで翁です(笑)。ご本人も役を作り込むというよりも、そこに存在するようにされているのではないでしょうか。ぴったりの役です!

――かぐや姫役を分け合う者同士、お互いの存在をどう思っていますか?

秋山:真里亜ちゃんの身体の使い方のなめらかさや感情表現の豊かさは、一緒にリハーサルをしていると本当に勉強になります。同じ役でもダンサーによって表現やキャラクターが変わってみえるのも踊りの楽しさだと思うので、まだまだ模索中ですが助け合いながらそれぞれのかぐや姫ができればと願っています。

足立:瑛ちゃんと私は入団が同期で年齢も同じです。団員から見た目を間違われるくらい似ていると言われますが、踊りは全く違うと思います。穣さんも「踊りの質が結構違うんだね」とおっしゃいました。小さな気付きを相談し合ったりできればいいですね。

――10月からの追い込みリハーサル&11月の本番に向けて、今の心境をお聞かせください。

秋山:いま私たちが見ているラフスケッチ――穣さんがおっしゃった言葉ですが――からすると、素晴らしい作品になるんだろうなというときめきがあります。観に来てくださった方の心に残る舞台にできるように練習を頑張ります。

足立:あとは私たちが食らい付いていくだけですね。時間をかけて一つひとつをクリアにして、本番を一番いい状態にもっていきたいです。

Photo: Shoko Matsuhashi

インタビュー・文 高橋森彦(舞台評論家)

「かぐや姫」プロモーションビデオ
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東京バレエ団11月公演
金森穣
「かぐや姫」第1幕 世界初演
モーリス・ベジャール
「中国の不思議な役人」
イリ・キリアン
「ドリーム・タイム」

公演日

11月6日(土)14:00
11月7日(日)14:00

会場:東京文化会館

予定される演目&配役

「かぐや姫」
かぐや姫:秋山瑛(11/6)、足立真里亜(11/7)
道児:柄本弾(11/6)、秋元康臣(11/7)
翁:飯田宗孝(11/6、11/7)

「中国の不思議な役人」
中国の役人:大塚卓(11/6、11/7)
無頼漢の首領:鳥海創(11/6)、柄本弾(11/7)
第二の無頼漢ー娘:宮川新大(11/6)、池本祥真(11/7)
ジークフリート:ブラウリオ・アルバレス(11/6)、生方隆之介(11/7)
若い男:伝田陽美(11/6)、二瓶加奈子(11/7)

「ドリーム・タイム」
沖香菜子、三雲友里加、金子仁美、宮川新大、岡崎隼也

入場料[税込]

S=¥13,000 A=¥11,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥1,500
※ペア割引あり(S、A、B席)
※親子割引あり(S、A、B席)


【新潟公演】
「かぐや姫」第1幕、
「ドリーム・タイム」
11月20日(土)13:00/17:00
りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館

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