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Photo: Ayano Tomozawa

2021/10/20(水)Vol.432

東京バレエ団「中国の不思議な役人」
大塚卓インタビュー
2021/10/20(水)
2021年10月20日号
バレエ
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インタビュー

Photo: Ayano Tomozawa

東京バレエ団「中国の不思議な役人」
大塚卓インタビュー

大塚卓は海外でキャリアを積んだのち、2020年4月、東京バレエ団に入団。以後、数々の作品にソリスト役で出演し、わずか2年で主役に抜擢された注目のダンサーです。今回、ベジャールの名作「中国の不思議な役人」のタイトルロールに挑戦する心境を聞きました。

「ベジャール作品は、一つひとつのポイントをしっかり押さえて踊ることが表現になり、作品になる。これはすごいことだと感じます」

――昨年4月に東京バレエ団入団後、次々と新たなレパートリーに挑戦してこられましたが、今年7月の公演〈HOPE JAPAN〉ではベジャールの『ギリシャの踊り』のパ・ド・ドゥ(裸足のパ・ド・ドゥ)と、38年ぶりの復活上演となった『ロミオとジュリエット』のパ・ド・ドゥを踊り、強い印象を残しました。

大塚 卓:『ロミオとジュリエット』についてはベジャール作品の中でもクラシックの要素が強いのですが、ベジャールさんの動き、かつパートナーと二人の雰囲気を作り出す──。とても勉強になりました。『ギリシャの踊り』はベジャールさん特有の動きがより強く表れる作品。同時にこの2つの作品に取り組むことができたのは大きな経験でしたし、自分はベジャール作品に合っているかもしれないと感じました。

『ロミオとジュリエット』のパ・ド・ドゥを踊る秋山瑛と大塚卓
(2021年7月、〈HOPE JAPAN 2021〉東京公演より)
Photo: Kiyonori Hasegawa

――ベジャールの振付にはどんな印象を持たれましたか。

大塚:ハンブルク・バレエ学校に留学した当初、とにかく僕は脚よりも上体の使い方を注意されることが多く、より大きく、解放的に動くことが求められました。「こんなに自由でいいんだ!」という印象でしたが、ベジャールさんのバレエには、当時感じたのと同じような解放感、自由さを感じます。
『ギリシャの踊り』では吉岡美佳さん(元東京バレエ団プリンシパル)にご指導いただきましたが、「ベジャールさんの作品は、音通りにしっかり振付をこなせば自然と作品になる」と言われたことが強く残っています。クラシックでは、自分からアピールし、プラスの何かを出していかなければ伝わりにくいものですが、ベジャール作品は自分でああしようこうしようとするのではなく、一つひとつのポイントをしっかり押さえて踊ることが表現になり、作品になる。これはすごいことだと感じます。

『中国の不思議な役人』
(2017年の公演より、役人を演じる木村和夫と娘役の宮川新大)
Photo: Kiyonori Hasegawa

――11月には『中国の不思議な役人』の役人を演じます。

大塚:実際の舞台に触れたことはないのですが、ジル・ロマンさん(現モーリス・ベジャール・バレエ団芸術監督)、今回ご指導いただいている元モーリス・ベジャール・バレエ団の小林十市さん、それから木村和夫さん(東京バレエ団バレエ・スタッフ)が主演した舞台の映像を見ました。ベジャール作品の見せ方というのは本当にすごいですね。前もってもとのストーリーを読みましたが、あの陰鬱な世界を大人数の迫力あるバレエに創り上げていて、思わず「上手いなあ!」と(笑)。主要人物たちが皆全く別の動きをしているのに彼らの関係性がはっきりわかる点も、面白いと思いました。

――小林十市さんが指導をされているそうですね。

大塚:まずは動きのニュアンスを教えていただきましたが、細かいことは今後のリハーサルでつめていくと思います。役人は娘に対して異常に強い執着心を持っているわけですが、それをどう表現するかというのではなく、ベジャールさんの振りをしっかりやる、ということが重要だと感じます。ただ、最初の登場場面では「無」でいなければいけないと言われています。その後音楽が激しくなるにつれて、どうやって感情を見せていくべきなのか──。難しいなと思います。

――バルトークの音楽にはあまり馴染みがないのではないでしょうか。

大塚:そうですね。何度も聴き込まないとわからない音もある。僕はカウントをとって踊るタイプではなく、そらで歌えるまで曲を身体に入れてから踊りますが、今回に関してはまだまだ。「踊り込んでいけば慣れていく」と十市さんには言われています。この役については十市さん、木村さんの名演を覚えているという人が多い。プレッシャーはありますが、皆さんに納得していただける舞台ができるよう、稽古を重ねたいと思います。

取材・文:加藤智子(フリーライター)

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東京バレエ団11月公演
金森穣
「かぐや姫」第1幕 世界初演
モーリス・ベジャール
「中国の不思議な役人」
イリ・キリアン
「ドリーム・タイム」

公演日

11月6日(土)14:00
11月7日(日)14:00

会場:東京文化会館

予定される演目&配役

「かぐや姫」
かぐや姫:秋山瑛(11/6)、足立真里亜(11/7)
道児:柄本弾(11/6)、秋元康臣(11/7)
翁:飯田宗孝(11/6、11/7)

「中国の不思議な役人」
中国の役人:大塚卓(11/6、11/7)
無頼漢の首領:鳥海創(11/6)、柄本弾(11/7)
第二の無頼漢ー娘:宮川新大(11/6)、池本祥真(11/7)
ジークフリート:ブラウリオ・アルバレス(11/6)、生方隆之介(11/7)
若い男:伝田陽美(11/6)、二瓶加奈子(11/7)

「ドリーム・タイム」
沖香菜子、三雲友里加、金子仁美、宮川新大、岡崎隼也

入場料[税込]

S=¥13,000 A=¥11,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥1,500
※ペア割引あり(S、A、B席)
※親子割引あり(S、A、B席)


【新潟公演】
「かぐや姫」第1幕、
「ドリーム・タイム」
11月20日(土)13:00/17:00
りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館