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2021/12/01(水)Vol.435

池本祥真インタビュー
「くるみ割り人形」に向けて
2021/12/01(水)
2021年12月01日号
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バレエ

池本祥真インタビュー
「くるみ割り人形」に向けて

「『くるみ割り人形』は"王道"をゆくヴァージョンの一つ。いっぽうで東京バレエ団ならではのオリジナリティも魅力です」

東京バレエ団ファースト・ソリストの池本祥真が、新たな役柄への挑戦を重ねている。2020年秋には、モーリス・ベジャール『M』で三島の分身の一人であるシーIV(死)を演じて強烈な印象を残したが、今年になってからは『舞楽』、『中国の不思議な役人』で続け様に初役を踊り、その存在感を強く印象付けている。

――昨年の『M』以来、ベジャール作品での活躍が注目されています。これらの役は全て、元モーリス・ベジャール・バレエ団の小林十市さんの指導を受けられたのですか。

池本祥真:そうですね。今年は、Dance Dance Dance @ YOKOHAMAの一環で開催された〈International Choreography × Japanese Dancers ~舞踊の情熱~〉で踊ったソロ作品『M』と、11月に上演した『中国の不思議な役人』の"第二の無頼漢─娘"役も指導していただきました。

――娘役の手応えはいかがでしたか。

池本:難しかった、ですね。舞台に出てみたら、リハーサルで創り上げてきたものが、「少し違ったかもしれない」という感覚があったんです。結果的にはそれでよかったのかな、とも思っているのですが。というのも、衣裳を着てメイクをしたら、何かこう、少し、気持ち悪さを感じ......。もしかしたら、もっと男っぽくしたほうがグロテスクでよかったのかなと思うことも──。ベジャール作品の難しさを実感しました。どんなにリハーサルを重ねても、舞台に出てみないとわからないことがある。古典作品のほうが、お客さまに与える印象はより明確なのかなとは思います。

「中国の不思議な役人」
Photo: Kiyonori Hasegawa

舞台が終わった後も役柄に向き合い、自身の演技を振り返る。2018年に東京バレエ団に入団後、数々の舞台にソリスト役で登場、その伸びやかで力強い踊りで存在感を強く印象付けてきたが、昨年12月の『くるみ割り人形』では、主人公マーシャを夢の旅へと誘う王子を演じ、爽やかな印象を残した。

――『くるみ割り人形』の王子役はどのように捉えて演じていましたか。

池本:この王子はとてもピュアでシンプル。主人公の少女・マーシャが思い描く理想の王子さまですから。たとえば第1幕、くるみ割り人形が王子の姿に変わる場面の踊りは、彼が人間の姿になった喜びのパ・ド・ドゥでもあり、音楽の美しさと相まって、大きな見どころの一つとなります。

――今回の『くるみ割り人形』の全国ツアーでは、故郷の広島県の公演で王子役を踊るそうですね。出身は大崎上島町だそうですが、バレエはそこで始められたのですか。

池本:大崎上島町は瀬戸内海の島で、バレエを始めたのは、船に乗って30分くらいの、大きな港のある町のスタジオです。そこで妹がバレエを習うようになって、送り迎えに付いて行っているうちに、「僕もやりたい」と言ったそうです。それが5歳の時。全く覚えていないけれど(笑)。その後小学校4、5年生くらいになって三原にあるスタジオに通うようになりました。男の子がいるからもっと楽しくなるだろうということからでしたが、港のある町からさらにバスと電車を乗り継いで、週3回通っていました。

――いつ頃からプロを目指すように?

池本:15歳でロシアに留学してからです。もちろん、それ以前も漠然とプロを目指すのかなと思ってはいました。小さい頃から長く続けられたものはバレエしかなかったし、身体を動かすことが好きでした。でも、実家は島ですから、学校に通いながらバレエを続けることは難しく、いろんな方に相談した結果、ボリショイ・バレエ学校に留学することにしました。

――バレエ団の公演で広島の舞台で踊るのは今回が初めてだそうですね。

池本:福山のリーデンローズは、子どもの頃に発表会で踊ったことがあるので、東京バレエ団の一員として再びあの舞台に立てるのは本当に嬉しいこと。地元の舞台で踊ることで、お世話になった皆さんに恩返しできたらという気持ちもあります。
『くるみ割り人形』は世界中で愛されているバレエです。2019年に新制作した東京バレエ団の演出は、古典作品のよいところをしっかりと受け継いだ、"王道"をゆくヴァージョンの一つ。いっぽうでダンサーたちの個性に合わせて振りを創った部分もあり、東京バレエ団ならではのオリジナリティも魅力です。子どもも大人も存分に楽しめるバレエですから、ぜひご家族でクリスマスの雰囲気を味わっていただきたいと思います! 

「くるみ割り人形」
Photo: Kiyonori Hasegawa

取材・文:加藤智子(フリーライター)

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「くるみ割り人形」全2幕

公演日

【東京公演】
12月10日(金)19:00
12月11日(土)14:00
12月12日(日)14:00

会場:東京文化会館

【全国公演】
【横須賀公演】
12月15日(水)18:30
会場:よこすか芸術劇場・大劇場

【鹿児島公演】
12月18日(土)14:00
会場:川商ホール(鹿児島市民文化ホール)第1

【大分公演】
12月19日(日)16:00
会場:iichiko総合文化センター・iichikoグランシアタ

【福山公演】
12月21日(火)18:30
会場:ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ 大ホール

【高松公演】
12月22日(水)18:30
会場:香川県県民ホール・レクザムホール

【西宮公演】
12月24日(金)18:30
会場:兵庫県立芸術文化センター・KOBELCO 大ホール

【鳥取公演】
12月26日(日)15:00
会場:とりぎん文化会館(鳥取県立県民文化会館)・梨花ホール

【浜松公演】
12月27日(月)18:30
会場:アクトシティ浜松・大ホール

予定される演目&配役

【東京公演】
マーシャ:沖香菜子(12/10)、秋山瑛(12/11)、金子仁美(12/12)
くるみ割り王子:秋元康臣(12/10)、宮川新大(12/11)、池本祥真(12/12)

【全国公演】
【横須賀公演】
マーシャ:秋山瑛、くるみ割り王子:宮川新大

【鹿児島公演】
マーシャ:足立真里亜、くるみ割り王子:大塚卓

【大分公演】
マーシャ:沖香菜子、くるみ割り王子:秋元康臣

【福山公演】
マーシャ:金子仁美、くるみ割り王子:池本祥真

【高松公演】
マーシャ:足立真里亜、くるみ割り王子:大塚卓

【西宮公演】
マーシャ:秋山瑛、くるみ割り王子:宮川新大

【鳥取公演】
マーシャ:金子仁美、くるみ割り王子:池本祥真

【浜松公演】
マーシャ:沖香菜子、くるみ割り王子:秋元康臣

入場料[税込] ※東京公演

S=¥13,000 A=¥11,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥1,500
※ペア割引あり(S、A、B席)
※親子割引あり(S、A、B席)