NBS News Web Magazine
毎月第1水曜日と第3水曜日更新
NBS日本舞台芸術振興会
毎月第1水曜日と第3水曜日更新
Photo: Kiyonori Hasegawa

2021/12/15(水)Vol.436

上野水香インタビュー
ブルメイステル版「白鳥の湖」に向けて
2021/12/15(水)
2021年12月15日号
TOPニュース
バレエ

Photo: Kiyonori Hasegawa

上野水香インタビュー
ブルメイステル版「白鳥の湖」に向けて

2021年を残すところわずか。東京バレエ団ではすでに2022年公演の準備が進んでいます。2月の「白鳥の湖」に向けて、上野水香に聞きました。

――まずは、初めて「白鳥の湖」を踊られた時のことを教えてください。

上野水香:初めて全幕で踊ったのは、19歳か20歳の時だったと思います。子どもの頃から一番踊りたかった作品で、留学していたモナコの学校を卒業してモンテカルロ・バレエ団に誘っていただいた時も、行かなかったのは古典の『白鳥の湖』が踊りたかったから。ですから踊れることになった時は本当に嬉しくて、毎日のように全幕を練習していましたが、本番では難しいテクニックを踊り切ることに精一杯でしたね。
私、若い頃は"黒鳥屋さん"だったと言っていいくらい(笑)、ガラ公演などで黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥを踊らせていただく機会がすごく多かったんです。でも全幕で踊るとなると、白鳥と黒鳥とをきちっと演じ分けなければいけない。オデットは悲しみを背負っているけれど、ただ儚いだけではなくみんなを引っ張っていく強さを持っていて、そしてオディールには、男性を騙すことに楽しさを覚えていくような小悪魔チックなところがあって......。自分なりの演じ分けができるようになるには、やはり時間が必要でした。

――水香さんなりの演じ分けは、どのように確立していかれたのでしょう?

上野:ありがたいことに、私はウラジーミル・マラーホフさん、ジョゼ・マルティネスさん、マチュー・ガニオさんといった素晴らしいゲストの方々と『白鳥』を踊る機会に恵まれました。"演じる"ことへの意識が大きく変わったのは、マラーホフさんと組んだ時。それまでは"きれいに見せよう"という思いで踊っていたのですが、サポートしてくださるマラーホフさんから呼吸が伝わってきて、アダージオって二人の呼吸なんだ!と学んだんです。"きれい"を通り越して、役柄を自由に表現するマラーホフさんは本物のアーティスト。私も彼のように唯一無二のダンサーでありたいと、それ以来強く思うようになりました。
私はフランス派のバレエで育っているので、パリ・オペラ座の方とは、理想がカチッと合う感じがしています。マルティネスさんと踊った時は最初から何のストレスもなく、すごく調子が出ましたね(笑)。マチューとも、特に相談しなくてもお互いが理想とするところに持っていける感覚があって、また組みたいとずっと思っているパートナー。色々な方と踊らせていただく中で、少しずつ自分の『白鳥』が磨かれていったのだと思います。

Photos: Yumiko Inoue

――そして2016年から、東京バレエ団ではブルメイステル版を踊られています。

上野:実は中学生の時、パリ・オペラ座でシルヴィ・ギエムさんとローラン・イレールさんが主演されたブルメイステル版を生で観ているのですが、それが本当にすごかったんです......! 第1幕からすごい踊りばかりで、この人たちを差し置いて主役を踊るのはどんな人なんだろう?と思っていたらギエムさんが現れて。私、ギエムさんの脚のラインが大好きで、授業中にずっと描いていたくらいなので(笑)、5階席からでもこの脚は彼女だ!ってすぐに分かりました。衝撃を受けた舞台だったので、上演が決まった時からすごく楽しみでしたね。
ほかのヴァージョンとの一番の違いは、オディールが登場する第3幕。舞踏会の場にいる全員がロットバルトの配下で、全員で押し寄せるように王子に迫っていく設定になっています。私の役作りも少し違って、ほかのヴァージョンではロットバルトと二人で王子を騙さなくてはいけないから、色々な駆け引きの表現をするのですが、ブルメイステル版はみんなが味方だから、私は凛と立っているだけでいいんです。音楽も振付も全然違っていて、ワイルドでダイナミックな魅力があるのがブルメイステル版。バレエ団で4回目の上演ということで、今回は装置が新しくなりますので、そこも見どころとして楽しんでいただきたいですね。

――東京バレエ団での"最後"の「白鳥の湖」に向けて、改めて意気込みをお聞かせください。

上野:私は若い時からずっと、どんな舞台にも毎公演毎公演、これが最後になってもいいという気持ちで取り組んできました。現行のバレエ団の定年制度だと、私が定年を迎えるまでに『白鳥』を上演するのは今回が"最後"ということでそう銘打たれていますが、私自身の気持ちは今までと全く変わらないですね。いつもと同じように目の前の公演にすべてを懸け、全身全霊を注いで、後悔のないように踊るだけだと思っています。

Photos: Kiyonori Hasegawa

取材・文:町田麻子(フリーライター)

公式サイトへ チケット購入

ブルメイステル版
「白鳥の湖」全4幕

公演日

2022年
2月18日(金) 18:30 
2月19日(土) 14:00 
2月20日(日) 14:00 

会場:東京文化会館(上野)

予定される配役

オデット/オディール: 上野 水香(2/18、2/20)
沖 香菜子(2/19)
ジークフリート王子: 柄本 弾(2/18、2/20)
秋元 康臣(2/19)

指揮:磯部省吾
演奏:シアターオーケストラトーキョー

入場料[税込]

S=¥13,000 A=¥11,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥1,500
※ペア割引あり(S、A、B席)
※親子割引あり(S、A、B席)