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Photo: Teatro alla Scala / Brescia – Amisano

2021/12/15(水)Vol.436

ミラノ・スカラ座 シーズン開幕
2021/12/15(水)
2021年12月15日号
TOPニュース
オペラ

Photo: Teatro alla Scala / Brescia – Amisano

ミラノ・スカラ座 シーズン開幕

11月下旬に発見された新型コロナウイルスの新しい変異株の出現が、またも世界に不安をもたらすなか、オペラ・ファンのなかにはスカラ座の開幕は大丈夫か!? と心配になった方も少なくないかも。ミラノから、2年ぶりに華やかに迎えた開幕の様子を、田口道子さんに伝えていただきました。

華やかに、2年ぶりのオープニング実現

12月7日、今年は期待通りミラノ・スカラ座のオペラシーズンが開幕した。
昨年はコロナ禍でオペラ公演はできずに無観客でのコンサートを実施、その後も今年5月まで劇場封鎖が続き、9月になってやっと100%客席を埋めることが出来るようになったものの、客足は遠のいたままだった。
しかしながら、今日のオープニングは華やかだった。パルコ席は1万本のバラと3千本の蘭の花で飾られた。これはスカラ座の賛助会員であるジョルジオ・アルマーニ氏からの贈り物だ。オレンジ色を基調とした花のアレンジが51のパルコ席の外側を埋め尽くした。
来年には任期満了となる大統領マッタレッラ氏が中央パルコ席に姿を見せると満場の客席からの拍手が5分間も続いた。音楽監督のリッカルド・シャイーの指揮で国歌が演奏されると多くの観客が歌詞を口ずさんだ。

マッタレッラ大統領を迎えての様子と国歌演奏はミラノ・スカラ座のFacebookで紹介されています。
https://fb.watch/9MDX_7Ewfu/

2年ぶりのオープニングがこれほど懐かしく感じられるとは予想以上だった。通常の公演は午後8時開演だが、オープニングは午後6時からで、国営放送RAI1は5時45分に劇場からの実況中継を開始、映画館や刑務所、空港、慈善施設などミラノとその郊外の町の34か所で無料公開された。
幕間のインタビューに答えて、ドミニク・マイヤー総裁は「観客が劇場にいることがこれほどのエネルギーを与えてくれるとはと改めて感じている」と感無量の様子で語った。総裁としては任期一年目にしてのオープニング中止、劇場封鎖を強いられての苦しい一年だったのだろう。

Photos: Teatro alla Scala / Brescia - Amisano

演目はヴェルディの『マクベス』。この作品がスカラ座のシーズンオープニングの演目となるのは4回目だが、ダヴィデ・リヴェルモアの演出は現代を超えて未来都市を舞台にしたような斬新さだ。高層ビル、車、エレベーター等々舞台機構や映像を存分に使っての演出はオペラの世界の概念を変えてしまうのではないか。

Photos: Teatro alla Scala / Brescia - Amisano

歌手たちは素晴らしかった。マクベス役のルカ・サルシは「オペラ歌手になって、夢に見ていたスカラ座でのタイトルロールを歌えて最高に幸せ」と目を輝かせていた。マクベス夫人役のアンナ・ネトレプコは、高所恐怖症では絶対に無理なほどの高いブリッジ上で夢遊病の場面のアリアを堂々と歌い上げた。バンクォーにイルダール・アブドラザコフ、マクダフにフランチェスコ・メーリと現時点で最高の歌手が揃った公演のチケットはすべて完売だそうだ。

Photos: Teatro alla Scala / Brescia - Amisano

劇場入口ではグリーンパスの提示、体温測定、マスク着用の指示など、感染防止対策が行われている。指揮をするマエストロ・シャイーも管楽器以外のオーケストラ奏者も最初から最後までマスク着用での演奏だった。

Photo: Teatro alla Scala / Brescia - Amisano

文:田口道子(演出家)2021年12月7日ミラノにて