NBS News Web Magazine
毎月第1水曜日と第3水曜日更新
NBS日本舞台芸術振興会
毎月第1水曜日と第3水曜日更新
Photo: Beutenmüller <br>Photos:  Stuttgart Ballet

2022/02/02(水)Vol.439

精鋭たちが披露するミラクルの伝統
〈シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたち〉
2022/02/02(水)
2022年02月02日号
TOPニュース
バレエ

Photo: Beutenmüller
Photos: Stuttgart Ballet

精鋭たちが披露するミラクルの伝統
〈シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたち〉

「シュツットガルト・バレエ・ミラクル(シュツットガルト・バレエ団の奇跡)」という言葉をご存じでしょうか。
1961年に振付家ジョン・クランコのもとで新たに出発したシュツットガルト・バレエ団が、わずか8年で世界有数のカンパニーにのし上がった伝説的なサクセス・ストーリー。3月の〈シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたち〉で披露されるのは、芸術監督のタマシュ・デートリッヒが日本の観客のために練りあげた、そのバレエ団の伝統と現在を伝える特別なプログラムです。

英国ロイヤル・バレエ団の気鋭振付家だったクランコは、シュツットガルトで新たなバレエ団を発足させるため世界中から優秀なダンサーを集め、彼らのために精力的な創造活動を展開しました。シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を、それまでの金字塔だったロシアのラヴロフスキー版とは打って変わって生き生きと現代的に描き、「オネーギン」ではチャイコフスキーの同名のオペラに匹敵する感動的な全幕バレエを創作。また「じゃじゃ馬馴らし」では大胆なイマジネーションと雄弁な語彙で登場人物たちの会話までをダンスで再現。シュツットガルト・バレエ団はそうした大作を携えて1969年に初のニューヨーク・ツアーを3週間にわたって行い、新聞で"ミラクル"と称えられる歴史的な成功を収めたのです。

クランコの物語バレエは20世紀に新たな全幕バレエの伝統を拓きました。今回のガラではそのクランコの傑作「ロミオとジュリエット」「オネーギン」の名場面と、いっぽうで彼の音楽的な才能を証明する小品として、北欧の作曲家グリーグの流麗な「ホルベアの時代より」を使った同名のパ・ド・ドゥも披露されます。

「ロミオとジュリエット」
ロシオ・アレマン、マルティ・フェルナンデス・パイシャ
Photo: Beutenmüller

クランコは1973年に45歳という早すぎる死を迎えましたが、創造的な気風に満ちていたシュツットガルトでは若手振付家の育成の場が設けられ、彼が築いた創造の精神が受け継がれます。そこから育っていったのがジョン・ノイマイヤー、イリ・キリアン、ウィリアム・フォーサイス、そしてウヴェ・ショルツといった次世代の大物振付家たち。彼らはやがて、バレエの新たな潮流を生み出していくことになります。

たとえばクランコの物語バレエの後継者と言えるノイマイヤーの人気作「椿姫」は、シュツットガルト・バレエ団が初演しました。今回のガラで上演される、第2幕の通称"白のパ・ド・ドゥ"は、ショパンのピアノ・ソナタにのせて薄幸の生涯をいきた高級娼婦マルグリットが唯一幸せだったアルマンとの恋の時を描く美しいデュエット。
革新的な創作で一世を風靡したフォーサイスの2016年の作品「ブレイク・ワークス1」は、ロンドンのシンガーソングライター、ジェイムズ・ブレイクの曲にのせた小粋な作品。クラシック・バレエのテクニックを凝縮しながら最高にポップでスリリングな瞬間を紡いでいきます。
シュツットガルトの常任振付家を務めたショルツは、シンフォニックなバレエで新たな世界を拓きます。その代表作の一つとされるのがヨーゼフ・ハイドンの壮大なオラトリオ「天地創造」に振付けた同名作。今回踊られるのはその中の第24曲「威厳と気高さを身につけ」にのせた祝祭的なソロです。

「天地創造」
ガブリエル・フィゲレド
Photo: Stuttgart Ballet

いっぽうクランコのミューズとして"ミラクル"を担ったのがプリマ・バレリーナだったマリシア・ハイデ。彼女はクランコの死後に芸術監督に就任するとクランコのレパートリーを守ると同時に、自らも振付・演出を手掛けました。その中でもっとも成功した新演出の「眠れる森の美女」を、今回はマッケンジー・ブラウンとガブリエル・フィゲレドという期待の若手たちが披露します。

「眠れる森の美女」
マッケンジー・ブラウン、ガブリエル・フィゲレド
Photo: Stuttgart Ballet

芸術監督がリード・アンダーソンの時代になってからも、シュツットガルト・バレエ団の意欲的な創造は続きます。2005年から18年まで常任振付家の任を担ったのは独特の精密な動きを繰り広げるマルコ・ゲッケ(ジャズ・シンガーのニーナ・シモンの「スペル・オン・ユー」にのせた同名作品を上演)。ルーマニア出身のエドワード・クルグに委嘱した「Ssss...」よりソロ、そして現役のバレエ団員であるロマン・ノヴィツキーが創った男性3人の愛らしくコミカルな「アー・ユー・アズ・ビッグ・アズ・ミー?」、フリーデマン・フォーゲルが元団員のトーマス・レンペルツと共に創作し自演する、コロナ禍の下でのアーティストの葛藤を描く「ノット・イン・マイ・ハンズ」まで。3日間の日替わりプログラムに詰められた、現在進行形も含めた多くの‟ミラクル"をぜひ堪能してください。

「Ssss...」
マルティ・フェルナンデス・パイシャ
Photo: Stuttgart Ballet

公式サイトへ チケット購入

シュツットガルト・バレエ団
〈シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたち〉

公演日

2022年
3月19日(土)18:00
3月20日(日)15:00
3月21日(月・祝)15:00

会場:東京文化会館(上野)

予定される出演者

【プリンシパル】
ロシオ・アレマン
エリサ・バデネス
アグネス・スー
デヴィッド・ムーア
マルティ・フェルナンデス・パイシャ
フリーデマン・フォーゲル

【ドゥミ・ソリスト】
マッケンジー・ブラウン
ヘンリック・エリクソン
ガブリエル・フィゲレド
クリーメンス・フルーリッヒ
アレッサンドロ・ジャクイント
マッテオ・ミッチーニ

共演:東京バレエ団(「ボレロ」)

入場料[税込]

S=¥17,000 A=¥15,000 B=¥13,000
C=¥10,000 D=¥8,000 E=¥6,000
U25シート=¥3,000

*ペア割引あり[S,A,B席]
*親子割引あり[S,A,B席]