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「眠れる森の美女」<br>Photo:  Stuttgart Ballet

2022/02/16(水)Vol.440

シュツットガルトの秘蔵っ子たち
〈シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたち〉
2022/02/16(水)
2022年02月16日号
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バレエ

「眠れる森の美女」
Photo: Stuttgart Ballet

シュツットガルトの秘蔵っ子たち
〈シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたち〉

3月の〈シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたち〉には、近年ユース・アメリカ・グランプリやローザンヌ国際バレエコンクールなど有名コンクールで活躍した期待の若手、ガブリエル・フィゲレドとマッケンジー・ブラウンが出演します。取材の現場から彼らに注目してきたダンスマガジン編集部の浜野文雄さんが語る、シュツットガルトの秘蔵っ子たちの魅力とは。

「マラーホフの再来!」──2013年、12歳のガブリエル・フィゲレドをユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)で見たとき、驚きとともに頭に浮かんだのがその言葉だった。胴が短く際立って手脚が長いバレエダンサーに理想的な体型、驚異的な柔軟性、軽やかな跳躍、伸びやかな音楽性.....いずれも稀代の天才ダンサーの少年時代を彷彿とさせるものだった。ブラジル出身のフィゲレドはこのときジュニア部門のユース・グランプリを獲得し、シュツットガルトのジョン・クランコ・スクールで学ぶことになった。しばらくしてシュツットガルト・バレエ団のスタッフにフィゲレドのことを訊ねると、「ガブリエルはマラーホフのいいところと、フォーゲルのいいところをすべて兼ね備えている」とうれしそうに答えたのが忘れられない。シュツットガルト・バレエ団の次代のスターとして大切に育てられていることが伝わってきた。

その「シュツットガルトの秘蔵っ子」がふたたび世界の人々の前に姿を見せたのが、2019年のローザンヌ・コンクールとYAGPだった。18歳となったフィゲレドは恵まれた体型と驚異的な柔軟性はそのままに、183センチの長身の美しいダンサーに成長していた。『ライモンダ』でそっと持ち上げたつま先の比類ない美しさ。まさにクラシック・バレエを踊るために生まれてきた才能だ。その踊りは一曲の間でも刻々と表情を変え、ときに柔らかく繊細、ときに男性的で力強い。その多面性は彼にしかない魅力だ。ショルツの『天地創造』やマクレガーの『クローマ』では、身体の優美さと豊かな音楽性が際立つ。フィゲレドは、ローザンヌではスカラシップ賞2位、YAGPではグランプリに輝き、同年、シュツットガルト・バレエ団に入団した。その直後世界がパンデミックに見舞われ、入団まもない若いダンサーにとって厳しい日々が続いたが、頻繁に更新されるインスタグラムを見る限り、コンディションを理想的に保っているようだ。今シーズンよりドゥミ・ソリストに昇進し、昨年11月にははやくも『オネーギン』のレンスキー役デビューを果たしている。

ガブリエル・フィゲレド
Photo: Roman Novitzky
マッケンジー・ブラウン
Photo: Roman Novitzky

2019年のローザンヌ・コンクールで、そのフィゲレドを押さえてスカラシップ賞1位を獲得したバレリーナが、マッケンジー・ブラウンだ。このときまだ16歳。アメリカ・ヴァージニア州出身で、2016年のYAGPでスカラシップを得てモナコのプリンセス・グレース・アカデミーに留学した。ローザンヌでは、基礎の美しさが光る強靭なテクニックと大人顔負けの表現力に誰もが驚いた。そして、コンテンポラリーでの卓越した踊り。同年YAGP主催の「国際バレエ学校フェスティバル」にブラウンはプリンセス・グレース・アカデミーを代表して出演し、マイヨー振付『月はどこに』とゲッケ振付『黒鳥のパ・ド・ドゥ』を踊ったが、それぞれの振付家のスタイルをよく咀嚼し、マイヨー作品ではそこはかとない官能性を、ゲッケ作品ではグロテスクなユーモアを見事に表出していたことには舌を巻いた。このときは母国アメリカのバレエ団への入団を希望していたが、モナコでさらに1年学んだ後、最終的にシュツットガルト・バレエ団への入団を決めた。クラシックとコンテンポラリーの両方で卓越した技量を持つブラウンの可能性を十全に開花させるには、シュツットガルト・バレエ団はもっともふさわしい場所だろう。

すでに『オネーギン』のオリガを踊っているほか、コンテンポラリーでも大きな活躍を見せている。昨夏の世界バレエフェスティバルでフリーデマン・フォーゲルとエリサ・バデネスが踊って話題を呼んだゲッケ振付『悪夢』も、ブラウンが初演した作品だ。彼女の踊りからはバデネスとはまた異なる乾いたハードボイルドな肌触りが立ち上がっていた。

〈シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたち〉でフィゲレドとブラウンの2人は『眠れる森の美女』よりグラン・パ・ド・ドゥを披露する。昨年12月に初めて踊ったばかり。コンクール時代からさらに優美さと瑞々しさが増したその踊りはとても魅力的だ。3月の公演は、シュツットガルト・バレエ団のみならず、世界のバレエの未来を背負っていくだろう才能あふれる2人の、いましか味わえない「時分の花」を堪能するまたとない機会だ。

浜野文雄(新書館「ダンスマガジン」編集委員)

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シュツットガルト・バレエ団
〈シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたち〉

公演日

2022年
3月19日(土)18:00
3月20日(日)15:00
3月21日(月・祝)15:00

会場:東京文化会館(上野)

予定される出演者

【プリンシパル】
ロシオ・アレマン
エリサ・バデネス
アグネス・スー
デヴィッド・ムーア
マルティ・フェルナンデス・パイシャ
フリーデマン・フォーゲル

【ドゥミ・ソリスト】
マッケンジー・ブラウン
ヘンリック・エリクソン
ガブリエル・フィゲレド
クリーメンス・フルーリッヒ
アレッサンドロ・ジャクイント
マッテオ・ミッチーニ

共演:東京バレエ団(「ボレロ」)

入場料[税込]

S=¥17,000 A=¥15,000 B=¥13,000
C=¥10,000 D=¥8,000 E=¥6,000
U25シート=¥3,000

*ペア割引あり[S,A,B席]
*親子割引あり[S,A,B席]