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2022/02/16(水)Vol.440

東京バレエ団〈THE TOKYO BALLET Choreographic Project
(コレオグラフィック・プロジェクト)〉
2022/02/16(水)
2022年02月16日号
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バレエ

東京バレエ団〈THE TOKYO BALLET Choreographic Project
(コレオグラフィック・プロジェクト)〉

東京バレエ団のダンサーたちが創作に取り組む〈THE TOKYO BALLET Choreographic Project (コレオグラフィック・プロジェクト)〉が、今年もいよいよ動き出しました。目指すは、東京文化会館大ホールでは初となる単独公演。このプロジェクトに出演者として参加を重ねているプリンシパルの柄本弾のインタビューを通じて、舞台裏での試行錯誤をうかがい見ながら、この2月に行われた試演会で決定された上演作品をご紹介します。

ダンサーたちがともに創作、発表する機会に
意外な一面、隠れた魅力が発揮される

本プロジェクトは、斎藤友佳理芸術監督の発案により2017年にスタート、創作活動に意欲を見せるダンサーたちが自ら手を挙げ、仲間のダンサーたちとともに創作、発表する機会を作ってきた。選抜作品を〈上野の森バレエホリデイ〉や〈めぐろバレエ祭り〉などのイベントで上演したり、〈スタジオ・パフォーマンス〉を開催したり、さまざまな形で作品発表の場をもうけている。

コロナ禍の2020年9月、東京バレエ団が約半年ぶりに再開した最初の公演が、めぐろパーシモンホールにおける〈コレオグラフィック・プロジェクト〉だった。入場者数50%という制限のもとで7作品を上演。客席からは熱い拍手が送られ何度もカーテンコールが繰り返された
Photo: Shoko Matsuhashi

いずれも、通常の公演では見ることのできないダンサーたちの意外な一面、隠れた魅力が発揮されるまたとない機会となっている。プリンシパルの柄本弾も、いつもの公演とは違った手応えを感じているようだ。柄本に過去の参加作品について尋ねると、「カズさん(木村和夫)の『RISE』(2020年)と『ピアノ レッスン』(2021年、再演)、岡崎隼也の『運命』抜粋版(2020年)、それからブラウ(ブラウリオ・アルバレス)の『いい湯だな』(2020年)に参加していますが、どれもとても面白い経験でした」と話す。「リハーサルの過程、作品の世界観は三者三様。カズさんは振付をほぼ全部作った状態でリハーサルにのぞむタイプですが、隼也はその場でダンサーと一緒に創っていく。ブラウの創作は、僕が参加した時はコメディタッチな作品で、僕の"おふざけキャラ"の部分が出てインパクト大(笑)。〈Choreographic Project〉では振付者が仲間だから、リハーサルで『僕はこのほうがやりやすい』『こうしたらダメかな?』と素直に何でも言うことができるのがいいですね。振付ける側はダンサーそれぞれの強みも弱点もよく把握しているから、気軽に話し合いながら創作できるんです」。だからこそ〈Choreographic Project〉の舞台は、ダンサーたち自身のリアルな思いが伝わる、よりユニークでスペシャルな場となる。

[これまでの作品より]

木村和夫振付「ピアノ レッスン」(2021)
Photo: Kiyonori Hasegawa
ブラウリオ・アルバレス振付「アダージエット」(2018)
Photo: Kiyonori Hasegawa
ブラウリオ・アルバレス振付「いい湯だな」(2020)
スタジオパフォーマンスより
Photo: Shoko Matsuhashi
岡崎隼也振付「運命」抜粋版 (2020)
Photo: Shoko Matsuhashi

その創作は、バレエ団の公演のためのリハーサルの合間の空き時間を利用して進められるが、東京バレエ団の場合、いくつもの作品を同時進行で稽古することが多く、柄本も「まず、出演者全員の空き時間を調整するのが難しい。バレエ団のレッスンやリハーサルの合間の10分、15分の隙間を利用して振りを確認することも」と明かす。今年もそんなふうにして創られた作品が、2月上旬の試演会で披露され、その結果、全8作品が、3月13日、東京文化会館の舞台で上演されることに。

岡崎隼也振付「理由」(2018) 試演会より
Photo: Shoko Matsuhashi

試演会では、常連の岡崎隼也、ブラウリオ・アルバレスも登場、思い入れたっぷりのコメントを述べていた。岡崎の出品作『【   】』は、ランタンを用いた男女5人の作品。「ランタンを買った時にひらめきました。今回使っている音楽と光がすごくリンクしているように感じたんです。光ありきの作品です」。柄本弾は今回、この岡崎作品でソロを踊る予定だ。岡崎のもう1つの作品は『somewhere but not here.』。ある楽曲を聴いて感じていたこと、その思いを込めて創った男女4人の作品だ。いっぽうのアルバレスは、マーラーの交響曲第2番「復活」の第4楽章に振付けた『Urlicht(原光)』、続く第5楽章の前半に振付けた『Auferstehung(復活)』第一部を上演。「音楽からインスピレーションを受けました。マーラーの音楽は、生と死、宇宙の見方を表現している。いつか全部の楽章を振付けたい!」と意欲を見せた。

バレエ・スタッフの木村和夫も常連の一人。今回は男性をメインに据えた"現代版"『バラの精』を披露。そのほか、紅一点の金子仁美によるパ・ド・ドゥ、『The sun rises』、井福俊太郎・玉川貴博の共作『After Show』、安井悠馬による男性群舞作品『嚇灼~kakushaku~』と多彩な作品が揃う。

本番までの数週間、東京文化会館での本番に向けて、皆でアイデアを出し合い、悩みながらのクリエーションが続く。本番当日には、振付者、出演者たちが参加するアフタートークも開催。その成果の舞台をしかと見届けるとともに、彼らの生の声にも、耳を傾けたい。

加藤智子 フリーライター

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東京バレエ団
〈The Tokyo Ballet Choreographic Project
(コレオグラフィック・プロジェクト)〉

公演日

2022年
3月13日(日)14:00

会場:東京文化会館(大ホール)
※公演終演後には振付家・出演者によるアフタートークの開催を予定しております。

予定される演目と出演者

「バラの精」
振付: 木村 和夫
出演: 池本 祥真、加藤 くるみ、足立 真里亜、平木 菜子、中島 映理子

「【    】」
振付:岡崎 隼也
出演:秋山 瑛、伝田 陽美、柄本 弾、池本 祥真、岡崎 隼也

「somewhere but not here.」
振付: 岡崎 隼也
出演: 工 桃子、富田 翔子、鳥海 創、昂師 吏功

「Urlicht (原光)」
振付: ブラウリオ・アルバレス
出演: 瓜生 遥花、岡﨑 司

「Auferstehung (復活)」 第一部
振付:ブラウリオ・アルバレス
出演:瓜生 遥花、岡崎 司、伝田 陽美、二瓶 加奈子、三雲 友里加、髙浦 由美子、長谷川 琴音、大坪 優花、松永 千里、大塚 卓、生方 隆之介、和田 康佑、玉川 貴博、後藤 健太朗、山下 湧吾

「The sun rises」
振付: 金子 仁美
出演: 工 桃子、樋口 祐輝

「After Show」
振付: 井福 俊太郎、玉川 貴博
出演: 井福 俊太郎、玉川 貴博、中沢 恵理子、中嶋 智哉

「嚇灼 ~kakushaku~」
振付:安井 悠馬
出演:秋山 瑛、井福 俊太郎、山田 眞央、海田 一成、岡﨑 司、後藤 健太朗、中嶋 智哉、芹澤 創、星野 司佐、加古 貴也、小泉 陽大、高橋 知希、宮村 啓斗、山中 翔太朗、堀江 千陽、山仁 尚

入場料[税込]

¥4,000