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Photos: Kiyonori Hasegawa<br>Photo: Kentaro Minami

2022/03/16(水)Vol.442

上野水香 令和3年度(第72回)芸術選奨 文部科学大臣賞を受賞
2022/03/16(水)
2022年03月16日号
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バレエ

Photos: Kiyonori Hasegawa
Photo: Kentaro Minami

上野水香 令和3年度(第72回)芸術選奨 文部科学大臣賞を受賞

東京バレエ団プリンシパルの上野水香が、令和3年度(第72回)芸術選奨舞踊部門において文部科学大臣賞を受賞しました。 芸術選奨は、「芸術各分野において、優れた業績を挙げた者、又はその業績によってそれぞれの部門に新生面を開いた者を選奨し、芸術選奨文部科学大臣賞及び同新人賞を贈ることによって芸術活動の奨励と振興に資する」というもの。文化庁主催の芸術家の顕彰制度として1950年度に発足しました(現在の名称は1956年より)。演劇、映画、音楽、舞踊、文学、美術、放送、大衆芸能、芸術振興、評論等、メディア芸術の11部門にて実施されています。

上野水香の受賞理由は、「類いまれなプロポーションと柔軟性、個性的な面差しの上野水香氏は、牧阿佐美バレヱ団においてのデビュー当初から東京バレエ団プリンシパルである現在に至るまで、常に第一線で活躍している。令和3年は、長年踊ってきたベジャール振付「ボレロ」で新境地を拓き、アロンソ振付「カルメン」の表題役をより深い表現力で演じ、「海賊」のメドーラ役では華やかな存在感で全幕のドラマを牽引。トップ・プリマの圧倒的な輝きを放ち続けた。」 と発表されました。また、同賞については選考過程も公表されており、舞踊部門では、選考審査員及び推薦委員から文部科学大臣賞候補者として17名、文部科学大臣新人賞候補者として16名の推薦があり、第一次選考審査会の結果、文部科学大臣賞は4名、文部科学大臣新人賞は5名に候補者が絞り込まれ、第二次選考審査会の審議では、文部科学大臣賞にふさわしい候補者の中で推薦の多かった上野水香が満場一致で文部科学大臣賞の1名として決まったとのことです。

「ボレロ」
Photo: Kiyonori Hasegawa

受賞理由にも挙げられている「ボレロ」について、かつてこのNBS Newsのインタビューで上野自身が語った印象的な言葉のいくつかをご紹介してみます。
「ボレロ」との衝撃の出会い、「私も踊りたい!」と強く意識したのはシルヴィ・ギエムが踊っているのを観たことからだったとのこと。「録画した断片的な映像を自分で組み合わせて、見よう見真似で踊っていました。当時から、この作品のコアな部分に関しては誰よりも理解しているつもりだった。実際に踊るようになってからは、当時の型は全く正しくなかったことを理解しましたが、コアな部分への認識は今も変わっていません」
東京バレエ団で「ボレロ」を踊るようになって15年以上を経たなかで「ようやく"自分の『ボレロ』になったと思ったのは、ここ2〜3年のこと」という言葉には、上野が常に作品と向き合い、追究し続けてきたことがうかがわれます。「最初はあの円卓の上に立つことが非常に怖くて、閉塞感に襲われそうな気持ちで踊っていました。でもその円卓がいつしか、怖いものからとても神聖なものに変わり、やがてとてつもなく自由なものになっていって。今では、ほかの誰も立ち入ることができない、誰も脅かすことができない、限りなく自由な自分だけの王国のように思えています」

「たった15分の作品なのに、まるで一つの人生を生きているような気になる特別な作品。だからこそ、観ている方も毎回さまざまなストーリーを思い浮かべられるのだと思います」 トップ・プリマとなってもさらに、一回一回をそのときだけのものとして挑む、上野のこの意識が今回の受賞へと結びついたといえるでしょう。

3月15日、都内で行われた贈呈式
Photos: Toru Hasumi

2022年6月23日(木)、26日(日)に上野が主演する
「ドン・キホーテ」は受賞記念公演として上演いたします。

公演の詳細はこちらをご覧ください
https://www.nbs.or.jp/stages/2022/donquixote/