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Photo: Shoko Matsuhashi

2022/04/06(水)Vol.443

宮川新大インタビュー
「ロミオとジュリエット」マキューシオ役に向けて語る
2022/04/06(水)
2022年04月06日号
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バレエ
東京バレエ団

Photo: Shoko Matsuhashi

宮川新大インタビュー
「ロミオとジュリエット」マキューシオ役に向けて語る

ジョン・クランコ振付「ロミオとジュリエット」(全3幕)が〈上野の森バレエホリデイ2022〉で上演されます。ドラマティック・バレエの名作の東京バレエ団初演に期待が高まります。物語の狂言回しであるマキューシオを演じるのは宮川新大。ジョン・クランコ・バレエ学校出身で本作を見て育ったという宮川に抱負を聞きました。

憧れのマキューシオは、物語を伝える重要な役柄

――12歳でドイツ・シュツットガルトのジョン・クランコ・バレエ学校に留学し、16~17歳の2年間、名教師ピョートル・ペストフに学び、2009年に卒業されました。留学時、シュツットガルト・バレエ団の公演を観る機会が度々あって、ジョン・クランコ振付『ロミオとジュリエット』もご覧になったそうですね。その際の印象は?

宮川:12歳くらいで初めて観ました。ロミオとマキューシオ、ベンヴォーリオが踊るパ・ド・トロワ(3人の踊り)に衝撃を受けました。それまで日本で男性が舞台で踊るのを観るのはコンクールくらいで、しかも『白鳥の湖』や『ドン・キホーテ』でした。若かりし頃のやんちゃ坊主にとっては衝撃的で脳裏に焼き付きました。

――今回はロミオの友人マキューシオ役を踊ります。近年『白鳥の湖』や『くるみ割り人形』で王子役を務め、昨秋ベジャール振付『中国の不思議な役人』の娘役とキリアン振付『ドリーム・タイム』が評価され文化庁芸術祭新人賞を受賞するなど役柄は幅広いですが、マキューシオもぜひやってみたかったとか?

宮川:主役はもちろんロミオですがマキューシオも重要だと思います。ストーリーテラーで、マキューシオの死によってロミオのジュリエットへの愛が強まります。演技要素が多くて、とくに第2幕、ティボルトに刺されてから死ぬまでの演技はやりがいがあります。僕が出る初回のロミオは(柄本)弾さんですが、今からどのように死のうか、どれだけ弾さんを悲しませることができるのかを考えながら(笑) 演技プランを練っています。昨年『ジゼル』のヒラリオンをやって、それまで以上に演技が楽しくなったので、マキューシオを演じるのはうれしいですね。振付指導の先生が来られましたが、マキューシオの演技に関してはフリーな部分が多いんです。そこを練っていくのが楽しみですね。

シュツットガルト・バレエ団公演「ロミオとジュリエット」より
Photo: Kiyonori Hasegawa

――おっしゃるように、マキューシオは物語に大きな影響を及ぼす大事な役どころですね。

宮川:クランコ版のマキューシオは、どちらかというとお調子者。最期のシーンはアクシデントというか、たぶんティボルトも刺すつもりはない感じなんですよね。ロミオに押された時に誤って刺さっちゃったみたいな。そこから死ぬまでの演技をしっかりしないと第3幕につなげられないので責任重大です。

シュツットガルト・バレエ団公演「ロミオとジュリエット」より
手前がマキューシオ
Photo: Roman Novitzky

――道化的な演技って決して簡単ではないですよね。

宮川:おちゃらけ過ぎてもいけないので、そこの境目が難しいんです。死んでしまう哀しみとか、死を受け入れなければならない自分とかを1秒、2秒で表現しないといけないので難しいですね。ましてや、マスクをしてリハーサルをしなければいけないので、表情が分かりません。細かな顔の表情は家の鏡で練習するしかない感じですね。全部感情任せにやるわけにもいかないので、自分で計算しなければいけない部分です。

――ロミオの柄本弾さん、ベンヴォーリオの樋口祐輝さんとどのようにコンビネーションを深めていますか?

宮川:振付指導の先生が来られる前ですが、樋口くんは〈シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたち〉の『ボレロ』に出ていたので、僕と弾さんで自習をしました。2人でしたがパ・ド・トロワから始めたんです。すると体力的に大変で途中までしか通せなくて......。やっと通せてもフラフラで立てない状態が3日くらい続きました。先生が来られてからもクラスを受けた後に毎日3人で必ず1回通しています。このパ・ド・トロワのシーンを踊るのが夢だったので、今回実現できてうれしいです。

「ロミオとジュリエット」リハーサルより
Photo: Shoko Matsuhashi

――振付指導のジェーン・ボーンさんによるリハーサルから受ける印象は?

宮川:マキューシオの演技の部分は別ですが、ほかは本当に細かいところまで振付が決まっているんです。とくに決闘のシーンはカウントが難しいんですよね。凄く細かく計算して創られているので覚えるのに時間がかかります。

「ロミオとジュリエット」リハーサルより
Photo: Shoko Matsuhashi

「ロミオとジュリエット」リハーサルより
Photo: Shoko Matsuhashi

――宮川さんがあらためて感じるクランコ版『ロミオとジュリエット』の魅力とは?

宮川:ストーリーが分かりやすいので飽きずに観ることができると思います。演技の部分が強いから分かりやすいのかもしれません。それからクランコ版はクラシック寄りで、基礎的なクラシック・バレエの要素が強いと個人的に思います。僕はそこが好きです。

――本番に向けて期する思いをお聞かせください。

宮川:踊りも大変ですが、それ以上に物語をどれだけ伝えられるかが大切です。マキューシオは舞台と観客の間にいる重要な役柄。いくら踊れていても演技とマッチしていなければいけないので、そこを煮詰めていきたいです。

取材・文:高橋森彦(舞台評論家)

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東京バレエ団初演
クランコ振付
「ロミオとジュリエット」

公演日

2022年
4月29日(金・祝)16:00
4月30日(土)14:00
5月1日(日)14:00

会場:東京文化会館

予定される演目&配役

ジュリエット: 沖香菜子(4/29)
足立真里亜(4/30)
秋山瑛(5/1)
ロミオ: 柄本弾(4/29)
秋元康臣(4/30)
池本祥真(5/1)

指揮:ベンジャミン・ポープ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

入場料[税込]

S=¥13,000 A=¥11,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥1,500
※ホリデイファミリーシート(S、A、B、C席)
※ペア割引あり(S、A、B席)