ジョン・クランコ振付「ロミオとジュリエット」(全3幕)が〈上野の森バレエホリデイ2022〉で上演されます。ドラマティック・バレエの名作の東京バレエ団初演に期待が高まります。初日にロミオ役を踊るのは柄本弾。バレエ団の顔として八面六臂の活躍を見せている柄本にリハーサルの手ごたえや意気込みを語ってもらいました。
――「ロミオとジュリエット」といえば、柄本さんは2014年、ジョン・ノイマイヤー版の東京バレエ団初演でも主演しています。今回挑むクランコ版の印象は?
柄本:ヴァージョンによって魅せたいシーンが違います。クランコ版は、ロミオが広場で他のダンサーと踊る場面がノイマイヤー版よりも多いと感じます。ジュリエットとのパ・ド・ドゥに関しては、クランコ版の方が派手さはない分難しいですね。シンプルだからこそ微妙なブレが目立ってしまうんです。そこをゼロに持っていけるように詰めています。
――ジュリエットはノイマイヤー版の時と同じく沖香菜子さんです。パートナーシップをどのように築いていますか?
柄本:ノイマイヤー版の時、僕たちはまだ舞台経験が少なく、しかもほぼ初めて組んで踊ったので手探りでした。昨年『ジゼル』で久々に一緒に踊りましたが、僕は以前アルブレヒトを踊っていたので、ジゼルが初役の香菜は僕に合わせることが多かったと思います。今回はお互いに初めての作品なので、よい感じに話し合いながら創っていこうとしています。
――二人で「ここはこうしようね!」と決めたりしている部分はありますか?
柄本:最初の出会いのシーンでいえば視線です。最初にロミオが近寄っていきますが、その後の目の外し方とかを決めています。ジュリエットのヴァリエーション(ソロ)が始まるシーンであれば、ロミオが彼女に引き寄せられていくので、彼女にどのタイミングで、どのくらいの距離まで来てほしいのかを細かく決めていますね。これから通し稽古に入ると、前のシーンの感情が残っているはずなので、その時に「こうしてほしい」というのが出てくると思います。その意味では、まだまだ決まっていない部分が多いです。
「ロミオとジュリエット」リハーサルより
左から 柄本弾(ロミオ)、大塚卓(パリス)、沖香菜子(ジュリエット)
Photo: Yumiko Inoue
――柄本さんがロミオを踊る初日(4月29日)のマキューシオは宮川新大さん、ベンヴォーリオは樋口祐輝さんです。3人で踊る場面には、空中での連続回転のような難しい振付もあります。リハーサルはどのように進んでいますか?
柄本:パ・ド・トロワ(3人の踊り)に関しては、テクニック的なことはもちろん体力的にもハードです。リハーサル後に皆でそこのシーンだけを踊るのが日課状態です。この3人でいえば僕が一番年長者なので、しっかりとコミュニケーションを取るようにしています。
――剣闘も見どころです。難しいですか?
柄本:細かく決まっていて大変です。音楽が入って感情がのってくると曲からずれてしまったり、自分の気持ちが先行し過ぎると相手の剣と合わなくなったりします。かといって剣を何回打つかとか考え過ぎると、マキューシオが死んでしまった後にティボルトと戦うシーンが冷静過ぎて変になってしまう。その辺りの配分が難しいですね。気持ちをのせつつ、心のどこか端っこに冷静さを保ちながらタイミングを合わせなければいけません。
「ロミオとジュリエット」リハーサルより
左から 樋口祐輝(ベンヴォーリオ)、宮川新大(マキューシオ)、柄本弾(ロミオ)
Photo: Shoko Matsuhashi
――振付指導のジェーン・ボーンさんの指導に接して感じることは?
柄本:一から振りを教えていただいています。音もそうですし、立ち回り方、感情の出し方も本当に細かく教えてくださいます。先生は明るい方なので元気をもらっています。海外の有名作品のバレエ団初演だと緊張して萎縮しがちになることもあります。でも先生はジョークを飛ばしたり、失敗しても笑いに変えたりするので、僕たちは助かっています。
――ボーンさんから役を演じ生きていく上で何か助言をもらっていますか?
柄本:この音で目を合わせる、歩み寄っていく、手を取る。そういった最低限決まっている箇所はあるんですが、それ以外はフリー、好きなようにしていいポイントもあります。そこはそれぞれの組に合わせてくれます。そして、「今のはよかったよ!」と教えてくださいます。それから、芸術監督の(斎藤)友佳理さんからも「あなたたちはこの方がいいんじゃない?」と言ってもらえますし、テクニック面も細かく見てくださいます。
――同じ作品でも演じる人、ペアリングによって受ける印象は少しずつ異なってきます。他の2組(足立真里亜&秋元康臣、秋山瑛&池本祥真)との競演に刺激を受けていますか?
柄本:もちろんです。パ・ド・ドゥなどで上手くいかない点を他の組ができていると、負けず嫌いなので次までにできるようにしてやろうと思います。お互いに「ここ、どうしている?」と気軽に聞ける仲なので、ライバル意識を持ちながら助け合っています。切磋琢磨するいい関係です。皆で一つの作品を創れるようにがんばります。
沖 香菜子、柄本 弾
Photo: Yumiko Inoue
――最後にあらためて本番に向けて抱負をお聞かせください。
柄本:ドラマティックな作品なので、ストーリーをしっかりと出せるようにしたいです。香菜とはノイマイヤー版で組ませてもらっている分、他の組よりも円熟したというか、濃いものを出せるようにやっていきたいです。楽しみにしていてください。
取材・文:高橋森彦(舞台評論家)
2022年
4月29日(金・祝)16:00
4月30日(土)14:00
5月1日(日)14:00
会場:東京文化会館
ジュリエット: | 沖香菜子(4/29) 足立真里亜(4/30) 秋山瑛(5/1) |
ロミオ: | 柄本弾(4/29) 秋元康臣(4/30) 池本祥真(5/1) |
指揮:ベンジャミン・ポープ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
S=¥13,000 A=¥11,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥1,500
※ホリデイファミリーシート(S、A、B、C席)
※ペア割引あり(S、A、B席)