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Photo: Nobuhiko Hikiji

2022/06/01(水)Vol.447

秋元康臣インタビュー
「ドン・キホーテ」バジル役で魅せる"遊び心"
2022/06/01(水)
2022年06月01日号
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バレエ
東京バレエ団

Photo: Nobuhiko Hikiji

秋元康臣インタビュー
「ドン・キホーテ」バジル役で魅せる"遊び心"

東京バレエ団の十八番であるウラジーミル・ワシーリエフ振付「ドン・キホーテ」(全2幕)が2022年6月23日(木)~26日(日)に上演されます。活気あふれる人気作品の主役バジルを踊る秋元康臣(6月24日に主演)に作品の魅力や意気込みを聞きました。

お客さまに楽しんでいただき、笑顔になってもらえるような舞台に

――先日、ジョン・クランコ振付「ロミオとジュリエット」東京バレエ団初演でロミオ役を務めました。舞台を終えての実感は?

秋元:初めてなので不安もありましたが、無我夢中で踊り切って達成感があります。リハーサルでは気持ちの部分で重たく感じて難しい作品だなと思いましたけれど、本番では自然に楽しめました。踊りよりも演技が難しいですね。パ(ステップ)云々というよりも、演技でストーリーを見せていく面が濃く出ていると終わってからあらためて思います。

――次は「ドン・キホーテ」のバジル役です。入団直後の2015年10月に闘牛士エスパーダを踊った後、2020年9月にバジルを踊りました。ワシーリエフ版の印象は?

秋元:踊りがたっぷり詰まっている印象で、演じる部分も多く充実しています。ワシーリエフさんならではのこだわりもあります。第1幕でバジルがキトリの友人2人と、3人で踊るヴァリエーションの振付にこだわりが詰まっていたり、キトリとのパ・ド・ドゥにもリフトがふんだんに入っていたりします。第1幕の活気ある感じは特に好きですね。舞台の隅々まで誰かが何かしら演じていて、そこにもストーリーがあるのを感じます。

――ダンスール・ノーブルとして定評がありますがバジルは理髪師です。「ドン・キホーテ」というバレエをどう捉えていますか?

秋元:明るい作品なので素直に楽しめます。自然に音楽を聴いて踊り始めたらなじみやすく、踊りやすいですね。狂言自殺の場面でふざけたりする演技の部分も楽しめます。

バジルを踊る秋元康臣
Photo: Kiyonori Hasegawa

――憧れだったバジル役は?

秋元:映像で観た中ではミハイル・バリシニコフさんです。なんともいえない哀愁のただよい方に渋みがありますよね。ただ元気で活発というだけではない部分が好きです。あとはレオニード・サラファーノフさんのバジルをカッコいいと思っていました。

――バジルを踊り演じる上で気をつけている点は?

秋元:動きの部分でいうとポーズですね。出来上がりの形のポーズや着地した時のポーズを意識するようにしています。一瞬魅せるポーズとか、背中の使い方とか、腕のちょっとした荒っぽさとかにも気をつけています。

――「絵になる」という言葉もありますね。バレエには躍動的なイメージがありますが、間(ま)が大事だったりもします。間がいいと動きにも緩急が生まれますよね。

秋元:間は大事です。止まった後、次に動き出すまでの微妙な間とかです。だから、すべてのパをかっちり完璧にやろうというよりも、タイミングとかをその時の音に合わせて遊びながらやることを大事にしています。

バジルを踊る秋元康臣
Photo: Kiyonori Hasegawa

――キトリ役の涌田美紀さんとは今回初めて組みます。リハーサル時の印象は?

秋元:テクニック面でもマイムとか演技の部分でもやりやすいです。ピルエットの回し方ひとつについても話し合っています。美紀ちゃんは瞬発力があるから早取りだったりするのですが、自分は今までのテンポでやるので、どちらがいいのかなと。そういうところを徐々に合わせていっています。気持ちの面でもお互いに出し合えるようにしたいです。

――演技面で楽しみにしている点は?

秋元:リハーサル中、自分の演技に対して相手から返される場面で、毎回ちょっとずつ反応が違ってきます。そこが楽しいですし、この作品の良さなので大事にしていきたいです。

「ドン・キホーテ」2020年の公演より(相手役は秋山 瑛)
Photo: Kiyonori Hasegawa

――ちなみにワシーリエフ版「ドン・キホーテ」でバジルとエスパーダ以外にやってみたい役は?

秋元:メルセデス(エスパーダの恋人で踊り子)かな。自分が女性だったらやってみたい。キトリよりもやってみたいかもしれません(笑)。カッコいい役ですね!

――去る5月7日、東京バレエ団団長の飯田宗孝さんが亡くなられました。昨秋、金森穣氏の「かぐや姫」第1幕で翁を演じ、主演の道児の秋元さんと共演されました。飯田さんが亡くなった後、初めての公演を迎えます。その辺りのお気持ちを聞かせください。

秋元:飯田先生のことは正直信じられないです。スタジオの端とかにまだいらっしゃるような気がします。"いない"ということをあえて考えないと、そう認識できない感じがあります。少し前まで舞台に立たれていましたし、僕らと一緒にレッスンを受けたり、ご指導されたりする姿の印象が強くて、"いない"ということがまだ信じられません。
飯田先生は優しい方だったので、僕らを見守ってくださっているでしょう。先生のためにも頑張らなければいけないのですが、僕たちが自然に踊っていることを望まれると思うので、「ドン・キホーテ」ではひたすら楽しい舞台を創り上げたいです。お客さまに楽しんでいただき、自然に笑顔になってもらえるような舞台になればと願っています。

インタビュー・文:高橋 森彦(舞台評論家)

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東京バレエ団
「ドン・キホーテ」全2幕

公演日

2022年
6月23日(木) 19:00
6月24日(金) 19:00
6月25日(土) 14:00
6月26日(日) 14:00

会場:東京文化会館(上野)

予定される出演者

キトリ: 上野 水香(6/23、6/26)
涌田 美紀(6/24)
秋山 瑛(6/25)
バジル: 柄本 弾(6/23、6/26)
秋元 康臣(6/24)
宮川 新大(6/25)

指揮:井田 勝大
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

入場料[税込]

S=¥13,000 A=¥11,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥1,500
*ペア割引あり[S,A,B席]
*親子割引あり[S,A,B席]