〈旬の名歌手シリーズ〉第3弾でルカ・サルシとともに「華麗なるオペラ・デュオ・コンサート」で日本デビューを飾るリセット・オロペサが、メール・インタビューに応えてくれました。自身の声について、歌うことへの真摯な思いが素直な言葉から伝わってきます。
――日本デビューとなるコンサートの2つのプログラムについてお聞かせください。共演するバリトンのルカ・サルシさんとはどのようなお話をされましたか?
オロペサ:日本の皆さまに、イタリア・オペラのアリアとデュエットのプログラムをお届けできることを心から楽しみにしています! ヴェルディとベルカントをたっぷりと、そして1曲だけですが、プッチーニが彩りを添えます。今回私たちが組んだプログラムは、日本の聴衆の皆さまにきっと気に入っていただけると思います。
ルカ(・サルシ)とは、ヴェルディのオペラで何度か共演したことがありますので、2人で歌うことは今から楽しみですし、ルカは私にとって信頼する大切な歌手仲間です。『ランメルモールのルチア』と『清教徒』の「狂乱の場」は、私の十八番でもあり、観客の皆さまもお聴きになればとても喜んでくださることを知っています。オペラの場面として重要ですが、私は音楽としてもこよなく愛しており、コンサートで歌っても、これらのシーンがどれほど美しいか、ご堪能いただけることと思います。
ルカ・サルシ Photo: Marco Borrelli
リセット・オロペサ Photo: Stefano Guindani.
――ルチア役はあなたが数多く歌っているレパートリーの一つです。今年4月にはウィーン国立歌劇場で、6月にはチューリッヒ歌劇場で歌われ、8月にはザルツブルク音楽祭で歌うご予定ですね。スカラ座の2020年シーズン開幕では、1958年のマリア・カラスのスカラ座出演以来、62年ぶりに米国人として、開幕でのタイトルロール出演が予定されていましたが、コロナ感染症拡大のため残念ながら中止となってしまいました。
オロペサ:はい、ルチアは何度も歌ってきましたし、来シーズン、スカラ座で歌えること、その後もそのほかの劇場で歌っていく予定があることを嬉しく思っています。パンデミックの間に、2回ルチアを歌う機会を失い、しかもそのうち一つはスカラ座のシーズン開幕公演だったことは残念でした。
――素晴らしいコロラトゥーラでいらっしゃいますが、ご自身の声にはどのような特徴があるとお感じですか?
オロペサ:ありがとうございます。私の声は、本当はリリック・コロラトゥーラなのだろうと思います。コロラトゥーラ(『魔笛』の"夜の女王"タイプの声)とリリコ(『ボエーム』の"ミミ"タイプの声)のちょうど中間の声のように感じています。私の声の強みは、コロラトゥーラを、抒情的なレガートラインの中で、アジリタをもって歌えることだと思います。トリルやフィオリトゥーラには、よくお褒めの言葉をいただきます。私自身、ルチアや『清教徒』のエルヴィーラなど、ベルカント・オペラの役が好きなのは、そういった技術が多用されるからです。ヴィオレッタ役で、舞台の上で死ぬのも好きですけれど!
――役を選ぶうえで大事なことは何ですか?
オロペサ:何より大事なのは、上演する劇場でその役が私の声に合うかどうかです。役によっては、もっと小さな劇場ならうまくいっても、大きな劇場では無理というものもあり、そのことはいつも念頭に置いています。それから、ストーリーの中でのその役の内面的な変化を読み取って、どこに難しさがあるのかを判断します。例えば、一晩の間にその役の精神は、上向くのか沈むのか。登場場面が多いのか、アンサンブルの歌が多いのか? あるいは、ほとんどアリアなのか? 長い重要な場面があるのか、あるとすれば、それは作品中のどこに登場し、どのくらいの重要度なのか? 新しいお仕事をお受けする前には、こういった疑問を自問自答します。
――今後、歌いたい役は?
オロペサ:はい、グノーの『ロミオとジュリエット』のジュリエットは、ふさわしい劇場で歌ってみたいですね。もうずいぶん長いこと、ジュリエットを歌いたいと思ってきました! 歌う機会はもうすぐ訪れると思います。ほかには 『夢遊病の女』のアミーナをようやく歌えるのもとても待ち遠しいです。これも何年もの間、夢見てきた役で、数年先にはなりますが歌う予定があります。
――子どものころのことを教えてください。ご家庭は音楽的な環境だったのでしょうか。また、ご自身の音楽への想いや、プロの歌手になりたいと思われたのはいつごろだったのでしょう?
オロペサ:子どものころから音楽が大好きでしたし、音楽一家で育ちました。母は歌手でピアニスト、家族もみな歌い、楽器を弾きました。家族みんなで音楽をやることを楽しんでいたので、私も幼いころから音楽好きになりました。初めはフルートをやりたくて何年も勉強しましたが、大学入学の際には、声楽とフルートの両方で受けました。そして1年間は両方を学びましたが、歌の勉強にすっかり夢中になり、歌を選ぶこととなりました。
――プライベートでは何をするのがお好きですか?
オロペサ:夫と私は走るのとハイキングが好きで......私たちはとにかくアウトドアが大好きなんです。2人で仕事で色々なところへ旅ができるのはとてもラッキーだと思っています。ほかには料理をするのとワインと、そして人生が楽しくなることならなんでも好きです。2人で多くの時間をともに過ごし、世界中を旅できるのは本当に恵まれています。
リセット・オロペサ
Photo: Jason Homa
――9月の日本デビューに向けて一言お願いします。
オロペサ:日本に行くことを心から楽しみにしています。特に夫にとって日本行きはティーンエイジャーのころからの夢でした! とりわけ日本文化には、直接触れて色々と知りたいと思っています。夫と二人で、素晴らしい日本に伺うことが待ちきれません。
2022年
9月23日(金・祝) 15:00
9月25日(日) 15:00
会場:東京文化会館(上野)
S=¥19,000 A=¥17,000 B=¥15,000
C=¥13,000 D=¥10,000
U25シート=¥3,500
*ペア割引あり[S,A,B席]
9月23日
ヴェルディ: | 歌劇『シチリア島の夕べの祈り』 ありがとう、愛する友よ [オロペサ] |
ヴェルディ: | 歌劇『リゴレット』 悪魔め、鬼め [サルシ] リゴレットとジルダの二重唱“いつも日曜日に教会で” [オロペサ&サルシ] |
ヴェルディ: | 歌劇『椿姫』 ああ、そはかの人か〜花から花へ [オロペサ] プロヴァンスの海と陸 [サルシ] |
ドニゼッティ: | 歌劇『ランメルモールのルチア』 ルチア 狂乱の場 [オロペサ] |
ヴェルディ: | 歌劇『ドン・カルロ』 ロドリーゴの死“終わりの日がきた” [サルシ] |
ドニゼッティ: | 歌劇『愛の妙薬』 アディーナとドゥルカマーラの二重唱“何という愛情〜やさしい流し目” [オロペサ&サルシ] |
9月25日
ヴェルディ: | 歌劇『マクベス』 慈悲、敬愛、愛 [サルシ] |
ヴェルディ: | 歌劇『椿姫』 ああ、そはかの人か〜花から花へ [オロペサ] |
ヴェルディ: | 歌劇『仮面舞踏会』 お前こそ心を汚す者 [サルシ] |
ヴェルディ: | 歌劇『椿姫』 ヴィオレッタとジェルモンの二重唱“ヴァレリー嬢ですか〜お伝えください、清らかなお嬢さんに”[オロペサ&サルシ] |
ドニゼッティ: | 歌劇『ランメルモールのルチア』 ルチアとエンリーコの二重唱“ルチア、こちらに来なさい〜私は涙にくれ” [オロペサ&サルシ] |
ジョルダーノ: | 歌劇『アンドレア・シェニエ』 国を裏切る者 [サルシ] |
ベッリーニ: | 歌劇『清教徒』 エルヴィーラの狂乱の場“あの方の優しい声が” [オロペサ] |
ヴェルディ: | 歌劇『リゴレット』 悪魔め、鬼め [サルシ] |
ロッシーニ: | 歌劇『セビリアの理髪師』 ロジーナとフィガロの二重唱“まあ、それじゃ私じゃないの” [オロペサ&サルシ] |
(順不同)ほかオーケストラ曲
指揮:フランチェスコ・ランツィロッタ
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団