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2022/11/02(水)Vol.457

東京バレエ団「かぐや姫」
第2幕公開リハーサル・レポート
2022/11/02(水)
2022年11月02日号
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バレエ

東京バレエ団「かぐや姫」
第2幕公開リハーサル・レポート

昨年11月、東京バレエ団が世界初演した「かぐや姫」第1幕。Noism Company Niigataを率いる振付家、金森穣氏への委嘱作品は、2023年春に第2幕の上演、秋には第3幕を加えての全幕上演を控えた、3年にわたる大プロジェクトとなります。そのクリエーションが重ねられていた東京バレエ団のスタジオで、10月28日、批評家、ジャーナリストを招いて第2幕のリハーサルが公開されました。その後行われた金森氏の囲み取材の模様とともに、レポートをお届けします。

第2幕、ドラマが大きく動き出す

金森氏と演出助手の井関佐和子氏による「かぐや姫」第2幕のリハーサルは、2月末から3月にかけての2週間、また10月中旬からの2週間に実施され、公開されたのはその最終日に行われた通し稽古。第1幕では、かぐや姫の誕生とその成長、道児との恋と別れが描かれ、侍女・秋見の先導でかぐや姫が翁とともに宮廷へと向かう場面で幕を閉じました。続く第2幕も、音楽は第1幕と同じくドビュッシー。宮廷でのかぐや姫を中心に、帝やその側室、大臣たちなど、新たなキャラクターが次々と登場し、ドラマが大きく動き出します。

帝や大臣たちをはじめとする宮廷の人々は、かぐや姫を好奇の眼差しで迎え入れます。この日かぐや姫を演じた秋山瑛は、彼らに翻弄される中で、慣れない宮廷での暮らしに戸惑う少女の表情を見せます。

Photo: Shoko Matsuhashi

金森氏が「東京バレエ団からの委嘱が決まったとき、男性の群舞は絶対にやりたい要素の一つだった」と明かすパワフルな男性のコール・ドは、ベジャール作品を踊り継いできた東京バレエ団ならではの迫力。「かぐや姫はあらゆるものを引っ張ったり押したりする。月の力は潮の満ち引きに、また人間の血流にも影響を及ぼす。かぐや姫という存在に生理的に惹かれてしまう、そんな血流みなぎる群舞であってほしい」と金森氏。さらに、4人の側室による雅な舞、侍女たちの群舞が登場すると、バレエらしい華やかさが場を明るくします。

Photo: Shoko Matsuhashi

また、第2幕の物語の鍵と捉えられるのは、帝の正室の影姫と新たに側室に迎えられたかぐや姫との関係。正室ながら"影"というほの暗い印象の名前について、金森氏は「かぐや姫は"この世にもたらされた光"というのが私の解釈。彼女が光れば光るほど、影姫の影は濃くなる」と述べていました。

Photo: Shoko Matsuhashi

強く印象に残るのは、ピエール・ルイスの詩のための付随音楽としてドビュッシーが作曲した「ビリティスの歌」、その詩の一部を朗読する声が響く中、かぐや姫が独り本を読む場面。
「一人の女性が砂の上に自分の思いを書いていると、そこに雨が降り、消されてしまう。すべては儚く、誰も私のことなど覚えていない、というちょっと悲しげな詩です。いまの私の設定では、その本を影姫も愛読していて、孤独な二人の魂がそこに見つめ合う──」と金森氏。テキストをフランス語とするか、日本語に訳されたものにするのかはまだ決められていないといいますが、ぐっと心に響く、美しいシーンが期待されます。

この日はさらに、装置・衣裳のコンセプトが一新されることも発表され、昨年の第1幕上演時から雰囲気を変え、抽象的なデザインに変更されるとのこと。日本から世界に発信する独創的なグランド・バレエを目指す、その物語の中核となる第2幕のクリエーションは、来年の春に再開、2023年4月下旬の〈上野の森バレエホリデイ〉開催期間中に、ほか2作品とともに上演される予定。詳細は12月中旬に発表されます。