いよいよクリスマス・シーズン到来。東京バレエ団では今年も『くるみ割り人形』を上演、全国ツアーを展開します。昨年のツアーで古典全幕初主演を果たした足立真里亜と大塚卓のカップルは、今年はついに東京公演でマーシャとくるみ割り王子として登場、新潟公演にも主演する予定です。そんな二人が、昨年のデビューの手応えや作品への思いを語ります。
――昨年、お二人が『くるみ割り人形』の主役デビューを果たされたのは鹿児島公演でのことでした。
足立 真里亜:鹿児島公演と数日後の高松公演で主役を踊らせてもらったのですが、舞台をお客さまに観ていただいて成長させてもらった感覚があります。
大塚 卓:バレエ団の公演でクラシックのグラン・パ・ド・ドゥを踊り通すなんて、昨年8月に真里亜さんと組んで主演させてもらった子どものためのバレエ『ねむれる森の美女』が全くの初めての経験でした。それ以前にも、『白鳥の湖』のパ・ド・カトル、『ジゼル』のパ・ド・ユイットなどで組んではいたけれど、一緒に踊って少し持ち上げて、という程度でした。
足立:でも、二人で組む経験を積んでいたことは、パートナリングの感覚を掴むのに大いに役立ちました。
「くるみ割り人形」で主演を踊る足立真里亜と大塚卓
Photo: Shoko Matsuhashi
――昨年から今年にかけて、それぞれにさまざまな役柄に挑戦しました。大塚さんはたとえば、昨年11月に『中国の不思議な役人』の役人、今年7月には『火の鳥』のタイトルロールを踊るなど、ベジャール作品での活躍が注目されています。
大塚:『火の鳥』は本当にハードでした。単純に、身体は強くなったと思います。同時に、体力的なしんどさを無理して演じるのではなく、逆に利用して、身体をその流れに委ねて表現することを学びました。昨年の『くるみ割り人形』はデビューだったこともあって、最初の登場時からずっと無駄に力が入ってしまった。でも『火の鳥』を経験し、全てを全力で、ではなく、より効率的に踊ることがいいパフォーマンスに繋がるということに気づきました。本番だからといって「やってやる!」といきがることもなくなりましたし、失敗に臆病になって縮こまるのではなく、普段通りに踊って感情をどんどん出していくほうが絶対にいい舞台になる。
足立:『火の鳥』を経験したからこその説得力ですよね。最初、卓くんは王子役が似合うノーブルなダンサーと思っていたけれど、こんな役も?そんな役も!?といろんな色を出してみせた。皆びっくりしています。
足立真里亜
Photo: NBS
――足立さんも、金森穣振付による世界初演作品『かぐや姫』第1幕のかぐや姫、クランコ版『ロミオとジュリエット』バレエ団初演でのジュリエットといった大役を経験されました。
足立:その後ずっとリハーサルと舞台が立て込んでいたので、余韻に浸る時間はほとんどなく、すでに記憶の彼方です(笑)。
大塚:でも、演技面に関してはたくさん得るものがあったそうですね
足立:ベジャールの『ロミオとジュリエット』のパ・ド・ドゥも踊らせてもらっていますから、この1、2年、そうした役柄に恵まれたといえますね。演技については自分の中で、少しアプローチの仕方が明確になったかもしれません。たとえばマイムで何かを伝えるとき──「あなたが好き」だったら、それが迷いのある「好き」なのか、それともひたすらにポジティブな「好き」なのか──。それをストレートに伝えるというより、役柄として揺るぎない感情を表現することを目指して、あとの解釈はお客さまに委ねられるようになりたい、と思うようになりました。
大塚 卓
Photo: NBS
――そんなお二人が主演する東京バレエ団の『くるみ割り人形』の魅力について、あらためて教えてください。
大塚:終幕のグラン・パ・ド・ドゥについては、近年は英国ロイヤル・バレエ団のヴァージョンの流れを汲む振付で踊られるケースが多いように思いますが、東京バレエ団はダイナミックなリフトがふんだんに散りばめられたロシアの伝統を受け継ぐ振付。抜群の見応えです。
足立:マーシャと王子がクリスマス・ツリーの中を上へ上へと旅していくというコンセプトも独創的。
大塚:僕らも他の3キャストに負けないくらいの、自分たちの『くるみ』の世界を作り上げたいですね。
足立:昨年デビューした二人が、ともに成長していく姿を見守っていただけたら嬉しいです。
「くるみ割り人形」で主演を踊る足立真里亜と大塚卓
Photo: Shoko Matsuhashi
インタビュー・文:加藤智子(フリーライター)
[東京公演]
12月16日(金)19:00
12月17日(土)12:30 *
12月17日(土)17:30
12月18日(日)14:00 *
会場:東京文化会館
*...12/17マチネ公演、12/18公演には3〜5階席の一部に学校団体が入ります。あらかじめご了承ください。
マーシャ: | 秋山 瑛(12/16) 涌田 美紀(12/17昼) 金子 仁美(12/17夜) 足立 真里亜(12/18) |
くるみ割り王子: | 宮川 新大(12/16) 秋元 康臣(12/17昼) 池本 祥真(12/17夜) 大塚 卓(12/18) |
指揮:フィリップ・エリス
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
児童合唱:NHK東京児童合唱団
S=¥13,000 A=¥11,000 B=¥9,000
C=¥7,000 D=¥5,000 E=¥3,000
U25シート=¥1,500
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり
【堺公演】12月21日(水)18:30 フェニーチェ堺(堺市民芸術文化ホール)大ホール
【西宮公演】12月23日(金)19:00 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
【新潟公演】12月25日(日)14:00 新潟県民会館
【長野公演】12月26日(月)18:30 長野市芸術館 メインホール
【岡谷公演】12月27日(火)18:30 カノラホール(岡谷市文化会館)大ホール
(堺、西宮公演のみ)
指揮:フィリップ・エリス
演奏:大阪フィルハーモニー交響楽団
※その他の公演では音楽は特別録音による音源を使用します。