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英国ロイヤル・バレエ団「ロミオとジュリエット」<br>2015年公演より<br><small> Photo: Alice Pennefather</small>

2022/12/07(水)Vol.459

英国ロイヤル・バレエ団2023年日本公演
「ロミオとジュリエット」華麗なる競演
2022/12/07(水)
2022年12月07日号
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バレエ

英国ロイヤル・バレエ団「ロミオとジュリエット」
2015年公演より
Photo: Alice Pennefather

英国ロイヤル・バレエ団2023年日本公演
「ロミオとジュリエット」華麗なる競演

このほど英国ロイヤル・バレエ団の来夏の日本公演の概要が発表され、バレエファンはざわめきだっているのでは。とくにロイヤルが誇るドラマティック・バレエの名作「ロミオとジュリエット」の東京・大阪全8公演は、綺羅星の如きプリンシパルたちのまさに豪華競演。ロンドン在住の舞踊ライター、實川絢子さんに、それぞれの主役カップルの魅力、見どころを紹介していただきます。

劇場に足を運ぶたび、一期一会の『ロミオとジュリエット』に出会う

ケネス・マクミランの代表作のひとつ『ロミオとジュリエット』。多くのダンサーがタイトルロールを踊ることを夢見、1965年の初演以来世界中のバレエファンを虜にしてきたドラマティック・バレエの傑作だ。ダイナミックで美しいリフトや迫力ある決闘場面など、数多くの見どころが詰まった作品だが、多くの人を惹きつけてやまない理由のひとつをあえて挙げるなら、それは場面やステップが明確に決められているにもかかわらず、ダンサー一人ひとりに、それぞれの解釈で役を〈生きる〉自由があることだろう。私たち観客は、劇場に足を運ぶたび、一期一会の『ロミオとジュリエット』に出会うことになる。

英国ロイヤル・バレエ団を代表するプリンシパルが日替わりで出演する今回の日本公演は、まさにそれを実感することのできる豪華な配役だ。

アキレス腱再建という大手術を経て、2021/22シーズンの『ロミオとジュリエット』で奇跡の復活を果たしたスティーヴン・マックレーは、再びベテラン・プリンシパルのサラ・ラムと組み、同役に再挑戦。ストイックなリハビリを経て、身体的にも精神的にも大きく進化したマックレーと、年々静かに、確実に表現の深みを増していくラムによる至芸をしっかりと目に焼き付けたい。

サラ・ラム&スティーヴン・マックレー
英国ロイヤル・バレエ団『ロミオとジュリエット』2015年公演より
Photo: Alice Pennefather

ヤスミン・ナグディマシュー・ボール組は、共に英国出身でロイヤル・バレエ学校生え抜きのプリンシパル。まだ20代前半だった2015年に『ロミオとジュリエット』のタイトルロールに抜擢され、その後瞬く間に最高位まで昇進したふたりだが、プリンシパルとしての貫禄が加わった今なお、その瑞々しさを失うことがない。知的な解釈と完璧な身体のコントロールが可能にする自然な踊りが魅力のナグディ、若くして円熟した演技力で評価されるボール。ロイヤル・スタイルが骨の髄まで染み込んだふたりが、どんな進化を見せてくれるか楽しみだ。

ヤスミン・ナグディ&マシュー・ボール
英国ロイヤル・バレエ団『ロミオとジュリエット』2015年公演より
Photo: Alice Pennefather

マクミラン作品を踊るたび、リスクを恐れない大胆な表現で観客を感嘆させるのがナターリヤ・オシポワだ。新プリンシパルのリース・クラークとは近年ペアを組むことが増えているが、魂に突き動かされるようにして踊るオシポワと、長身を活かしたスケールの大きな踊りと優美なラインを持ち味とするクラークの、火と水のような組み合わせが面白い。今この瞬間を生きる恋人同士の刹那を、ダイナミックに表現してくれることだろう。

『ロミオとジュリエット』での共演がきっかけで恋に落ち、今やバレエ界のパワーカップルとして知られるフランチェスカ・ヘイワードセザール・コラレス組は、とにかく情熱的。バレエ団きっての演技派ダンサーであるヘイワードの踊りは、ステップや表情の一つひとつが自然でニュアンスがあり、生きたジュリエットそのもの。卓越した技術と切れ味鋭い踊りで知られるコラレスも、それらがすべて本物の恋を知った若者の情熱ゆえの表現なのだと思わせてしまう説得力がある。

フランチェスカ・ヘイワード&セザール・コラレス
英国ロイヤル・バレエ団『ロミオとジュリエット』2019年公演より
Photo: Alice Pennefather

歌うように踊る類い稀な音楽性、完璧なポワントワークで期待を決して裏切らないマリアネラ・ヌニェスが組むのは、新プリンシパルのウィリアム・ブレイスウェル。映画版『ロミオとジュリエット』でも主演したブレイスウェルは、ロミオ役そのもののような容姿と、精緻かつ伸びやかで人間味のある踊りが魅力。バレエ界の至宝ヌニェスの新たな側面を引き出してくれることだろう。

アナ=ローズ・オサリヴァンマルセリーノ・サンベ組による『ロミオとジュリエット』は、どこまでもフレッシュ。ロイヤル・バレエ学校の同級生で、気の置けない友人同士というふたりが長年築き上げてきたパートナーシップからは、お互いへの信頼と尊敬が伝わってくる。ずば抜けた身体能力が可能にするエネルギッシュな踊りで知られるサンべは、今季『マイヤリンク(うたかたの恋)』で鮮烈な主演デビューを果たし新境地を開拓。初々しい少女そのもののようなオサリヴァンが、大人の女性への階段を一気に駆け上がるドラマティックな変化も必見だ。

可憐でありながら強さを秘めた役柄がぴたりとはまる高田茜のジュリエットには、磐石のパートナリング技術とリアルで複雑な人間心理の表現で定評がある平野亮一が相手役を務める。ステップやジェスチャーの一つひとつが雄弁で説得力がある平野は、今季『マイヤリンク』の初日に主役を踊り、英国の批評家たちに絶賛されたばかり。マクミラン作品に欠かせない高田もまた、昨今クリスタル・パイトをはじめとする多彩な作品に挑戦し、ますますその演技の幅を広げている。今や英国バレエ界屈指のドラマティック・ダンサーとなった日本人プリンシパルふたりの共演に注目したい。

金子扶生ワディム・ムンタギロフ組は、本拠地ロンドンの観客が未見の注目の組み合わせ。先シーズンに、長い四肢で丁寧に描かれるラインの美しさと華やかな存在感で鮮烈なジュリエットデビューを果たした金子と、今季『マイヤリンク』で、古典バレエの王子様のイメージを覆すドラマティックで激しい演技を見せ観客を驚嘆させたムンタギロフの間に、どんなケミストリーが生まれるのかが見ものだ。

英国ロイヤル・バレエ団『ロミオとジュリエット』2021年公演より
Photo: Bill Cooper

主役のふたりに限らず、舞台上の個性豊かなダンサーたちがひとり残らず全力で役を生き抜き、それぞれの物語を紡ぐことで初めて完成する『ロミオとジュリエット』。ロイヤル・バレエを観る醍醐味を存分に堪能できることだろう。

實川 絢子(在ロンドン、舞踊ライター)

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英国ロイヤル・バレエ団2023年日本公演

公演日 [東京公演]

〈ロイヤル・セレブレーション〉
2023年
6月24日(土)13:00
6月24日(土)18:00
6月25日(日)13:00

【上演予定作品】
「ジュエルズ」より"ダイヤモンド" [全編](ジョージ・バランシン振付)
「田園の出来事」(フレデリック・アシュトン振付)
「FOR FOUR」(クリストファー・ウィールドン振付)
「プリマ」(新作)(ヴァレンティノ・ズケッティ振付)

ケネス・マクミラン振付「ロミオとジュリエット」
【公演日時と予定される主な配役】
2023年
6月28日(水)18:30
 ジュリエット:サラ・ラム
 ロミオ:スティーヴン・マックレー
6月29日(木)13:30
 ジュリエット:ヤスミン・ナグディ
 ロミオ:マシュー・ボール
6月29日(木)18:30
 ジュリエット:フランチェスカ・ヘイワード
 ロミオ:セザール・コラレス
6月30日(金)18:30
 ジュリエット:ナターリヤ・オシポワ
 ロミオ:リース・クラーク
7月1日(土)13:00
 ジュリエット:アナ・ローズ・オサリヴァン
 ロミオ:マルセリーノ・サンベ
7月1日(土)18:00
 ジュリエット:マリアネラ・ヌニェス
 ロミオ:ウィリアム・ブレイスウェル
7月2日(日)13:00
 ジュリエット:高田 茜
 ロミオ:平野 亮一

会場:東京文化会館(上野)

入場料 [東京公演](税込)

S=¥26,000 A=¥23,000 B=¥20,000
C=¥16,000 D=¥12,000 E=¥9,000
U25シート=¥5,000
*2演目セット券[S,A,B席]あり
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり

[大阪公演]

「ロミオとジュリエット」
7月5日(水)18:30 
 ジュリエット:金子扶生
 ロミオ:ワディム・ムンタギロフ

会場:フェスティバルホール

[姫路公演]

〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉
7月8日(土) 14:00

会場:アクリエひめじ 大ホール