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「田園の出来事」 <br>「ダイヤモンド」 <br>「FOR FOUR」 <br>「プリマ」<br><small> Photos: Andrej Uspenski</small>

2022/12/21(水)Vol.460

英国ロイヤル・バレエ団2023年日本公演
〈ロイヤル・セレブレーション〉
2022/12/21(水)
2022年12月21日号
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バレエ

「田園の出来事」
「ダイヤモンド」
「FOR FOUR」
「プリマ」
Photos: Andrej Uspenski

英国ロイヤル・バレエ団2023年日本公演
〈ロイヤル・セレブレーション〉

創設振付家アシュトンの傑作から先月初演されたばかりの最新作まで。英国ロイヤル・バレエ団の特色と、複数スターの演技を楽しめるのが〈ロイヤル・セレブレーション〉。前回につづいてロンドン在住の舞踊ライターの實川絢子さんにプログラムの見どころを紹介いただきました。

伝統誇る傑作から最新作までが並ぶ祝祭に相応しい華やかさ

2023年夏に予定されている英国ロイヤル・バレエ団によるガラ公演〈ロイヤル・セレブレーション〉。伝統的なレパートリーから最新作まで、ロイヤル・バレエ団のダンサーたちの多彩な側面を一度に堪能できる、祝祭に相応しい華やかなプログラムだ。

バレエ団の創設振付家であるフレデリック・アシュトンの最後の傑作といわれているのが、ロシアの文豪ツルゲーネフの戯曲を原作とする『田園の出来事』(1976年初演)。バレエ化の構想を約40年間も温めていたというアシュトンは、全5幕からなる戯曲を40分間のバレエ作品に凝縮。裕福な地主の妻ナターリヤ、彼女の息子コーリャの家庭教師としてやってきた魅力的な青年ベリャーエフ、彼に夢中になるナターリヤの義娘ヴェーラとメイドのカーチャ、ナターリヤを崇拝する同居人のラキーチンといった個性豊かなキャラクターと、彼らの〈報われない愛〉の構図が、ショパンの調べとともに雄弁なソロとパ・ド・ドゥで鮮やかに描き出される。

とくに、衝動を抑えきれなかったベリャーエフに手を握られ、ナターリヤが葛藤しつつも思わずその陶酔の中に身を任せてしまう場面は、アシュトン作品の中でもっともセンシュアルで美しいパ・ド・ドゥのひとつ。リン・シーモアに始まり、シルヴィ・ギエムやアリーナ・コジョカルなど錚々たるプリマに踊り継がれてきたナターリヤ役。彼女の繊細な心の揺れ動きを、バレエ団の名花3人がどう表現するかに注目したい。

「田園の出来事」より
フランチェスカ・ヘイワード(ヴェーラ)、ギャリー・エイヴィス(ラキーチン)、マリアネラ・ヌニェス(ナターリヤ)
Photo: Tristram Kenton

初の全幕抽象バレエとして知られるジョージ・バランシンの『ジュエルズ』(1967年初演)は、英国ロイヤル・バレエ団のレパートリーとなった2007年以降、ロンドンで繰り返し上演されてきた人気演目。とくにチャイコフスキーの「交響曲第3番」に振り付けられた第3幕の「ダイヤモンド」は、プティパが確立したロシアのクラシック・バレエの様式美を讃える絢爛豪華な舞台が魅力だ。

女王の風格を放つプリマの研ぎ澄まされたソロ、所々で『白鳥の湖』を彷彿とさせる抒情的なパ・ド・ドゥはもちろん、全員が出演するコーダも圧巻。目まぐるしく変わるフォーメーションの美しさ、ダンサーたちが放つ眩いエネルギー、そして音楽の盛り上がりが一体となって、〈音楽の視覚化〉と呼ばれるバランシンのネオ・クラシック・バレエの醍醐味を存分に味わえる。プリンシパルはもちろん、ソリスト、コール・ド・バレエに至るまで、ダンサー一人ひとりの個性が宝石のように煌めくロイヤルならではの「ダイヤモンド」を堪能できるはずだ。

「ダイヤモンド」より
Photo: Andrej Uspenski

アシュトンとバランシンに多大な影響を受け、クラシック・バレエのステップをベースにした現代的な物語バレエと洗練された抽象バレエで知られるのが、英国ロイヤル・バレエ団のアーティスティック・アソシエイトを務めるクリストファー・ウィールドンだ。シューベルトの弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」に振付られた『FOR FOUR』は、2006年にニューヨークで行われた4人の男性トップダンサーの夢の競演〈Kings of Dance〉で初演された抽象バレエ作品。イーサン・スティーフェル、ヨハン・コボー、ニコライ・ツィスカリーゼ、アンヘル・コレーラという、出身もスタイルも異なる4人のスターために創作された作品が、ロイヤル・バレエ団の新世代の注目ダンサーたちによって踊り継がれる。

力強さ、俊敏さ、優雅さ、爆発的なエネルギー......それぞれの魅力を存分に発揮しながら、時に超絶技巧を競うようにして、同志でもありライバルでもある4人が奏でる四重奏がどこまでもエキサイティングだ。

『FOR FOUR』より
Photo: Andrej Uspenski

ロイヤル・バレエ団のファースト・ソリスト、ヴァレンティノ・ズケッティによる『プリマ』は、そんな『FOR FOUR』と対をなすような、女性プリンシパル4人に振付けられた新作。チュチュを着た典型的なバレリーナのイメージを覆す、パワフルで個性豊かな21世紀のプリマのあり方を表現する作品は、ロマンティック・バレエ時代の4人のプリマが姸を競い注目を集めた『パ・ド・カトル』(ペロー振付、1845年初演)を現代にアップデートしたかのよう。

11月の初演キャストに選ばれたヤスミン・ナグディ、マヤラ・マグリ、金子扶生、フランチェスカ・ヘイワードの4人は、卓越した技術と演技力、そのカリスマ性で魅了する今をときめくプリンシパル。アシュトン作品さながらのスピーディーで複雑に入り組んだ振付をやすやすと踊りこなし、プリンシパルの貫禄を見せつけた。さらに、もうひとりの主役と言えるのが、ロンドンを拠点とするブランドRoksandaのデザイナー、ロクサンダ・イリンチックによるインパクトのある衣裳。ランウェイからそのまま飛び出してきたようなドレスは、裾が表情豊かに波うって、それを纏うダンサーと一緒に踊っているような印象を残す。音楽とファッション、バレエが一体となった、総合芸術としてのバレエの可能性に挑む意欲作となっている。

「プリマ」より
Photo: Andrej Uspenski

實川 絢子(在ロンドン、舞踊ライター)

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英国ロイヤル・バレエ団2023年日本公演

公演日 [東京公演]

〈ロイヤル・セレブレーション〉
2023年
6月24日(土)13:00
6月24日(土)18:00
6月25日(日)13:00

【上演予定作品】
「ジュエルズ」より"ダイヤモンド" [全編](ジョージ・バランシン振付)
「田園の出来事」(フレデリック・アシュトン振付)
「FOR FOUR」(クリストファー・ウィールドン振付)
「プリマ」(新作)(ヴァレンティノ・ズケッティ振付)

ケネス・マクミラン振付「ロミオとジュリエット」
【公演日時と予定される主な配役】
2023年
6月28日(水)18:30
 ジュリエット:サラ・ラム
 ロミオ:スティーヴン・マックレー
6月29日(木)13:30
 ジュリエット:ヤスミン・ナグディ
 ロミオ:マシュー・ボール
6月29日(木)18:30
 ジュリエット:フランチェスカ・ヘイワード
 ロミオ:セザール・コラレス
6月30日(金)18:30
 ジュリエット:ナターリヤ・オシポワ
 ロミオ:リース・クラーク
7月1日(土)13:00
 ジュリエット:アナ・ローズ・オサリヴァン
 ロミオ:マルセリーノ・サンベ
7月1日(土)18:00
 ジュリエット:マリアネラ・ヌニェス
 ロミオ:ウィリアム・ブレイスウェル
7月2日(日)13:00
 ジュリエット:高田 茜
 ロミオ:平野 亮一

会場:東京文化会館(上野)

入場料 [東京公演](税込)

S=¥26,000 A=¥23,000 B=¥20,000
C=¥16,000 D=¥12,000 E=¥9,000
U25シート=¥5,000
*2演目セット券[S,A,B席]あり
*ペア割引[S,A,B席]あり
*親子割引[S,A,B席]あり

[大阪公演]

「ロミオとジュリエット」
7月5日(水)18:30 
 ジュリエット:金子扶生
 ロミオ:ワディム・ムンタギロフ

会場:フェスティバルホール

[姫路公演]

〈ロイヤル・バレエ・ガラ〉
7月8日(土) 14:00

会場:アクリエひめじ 大ホール